3σの境界線に

水無月主水

3σの境界線に

3σの境界線に生きてきて恋なき里の雁たる我は


自己紹介できない訳は多々あって人に云えない鼻があるとか


今日もまた朝日がのぼり我もまた無敵さんへと一歩近づく


頼っては生きてゆけぬが頼らずに生きてゆかれぬ 今日も天気だ


この丘にルリカラクサの咲くという誰もその名で呼ばないけれど


はみだして生きられぬのでせめてもと四人の子らの物語を読む


数篇の詩といくつかの歌と句とあらば足る 吾は何を何故書く


コンビニをコンヴィニエンスストアだと呼ばずにおられないという孤独


生きるため殺す相手はあいつではなくておそらく自分であろう


もう少し窒素濃度の濃い方が息のしやすい体質のはず


あの人でありたかったと羨むとき「あの人」は三十人ほどいる


人生は舞台私はアクターだ演じなければ足元に死が


香立ての外にこぼれ落ちる灰のいとわしきこといとおしきこと


人間の永久なんて知れている永久凍土が溶けるのだもの


誰もみな自分と違うものだとはわかっていても受け身が取れない


人ごみが苦手と云い訳してしまう嫌いと云えない花火大会


健康にいいと云われる食べ物を食べ過ぎて死ぬ運命だった


情熱に欠ける人生だったねと死後の自分に云われてしまう


酒壺になったら灘の生一本V.V.S.O.Pなどを染み込ませたい


この上のない行き先とこの上のない休息を選ぶ幸せ

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3σの境界線に 水無月主水 @JuniMond

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