限界オタク“いのりつ"について考える
“いのりつ"は明確に恋愛感情が描写されている二人ではない。オタクによっては二人のことを“百合"と表現するなという人もいる。
だが、私は百合というものは恋愛感情の有無で定義するものではないと思っている。その二人にしか生まれない特別な感情が見受けられれば、それはもう百合なのである。
二人は現在、高校二年生。全日本吹奏楽コンクールの全国大会出場に向けて、まずは都大会を勝ち進むために誠心誠意練習中だ。
ゲームとしてはリリースから一周年を迎え、メインシナリオは第五章まで進んでいる。第三章は“いのりつ"のための章といっても過言ではないほどの激エモ展開であった。
一年時、二人は共にアルトサックスを担当していた。どちらも高校入学から始め、互いに切磋琢磨しながら演奏技術を上げていった。だが、徐々に祈が頭角を現し、1stやソロを任されるようになっていく。律は劣等感を覚えるようになり、今まで通り祈に接することができなくなる。
二年に進級し、吹奏楽部には新しい顧問(プレイヤーの私)が就任し、律にはバリトンサックスが合うと転向を勧める。
主旋律やソロパートを任されることが多いアルトサックスと違い、バリトンサックスは低音を生かして全体を土台として支えるのが得意である。
最初は難色を示す律だったが、バリトンサックスの奥深さ、全体を支える役割に自分らしさ見出す。
二人の仲も元通りとまではいかないが、また違った角度で深まったのではないかと解釈している。今までは二人でいる事が当たり前で、二人でいることについて特別視していなかった。だが、音楽により一度隔たりが生まれたことによって、二人でいることの意味を互いに意識するようになったのではないだろうか。
律の布団の中でウッディな香りに包まれながら、考察してしまった。贅沢すぎるなと目を閉じ、眠りに落ちるのを待つ。
朝が来たら、元の身体に戻っていますように。
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