第32話 帰国

「ふう、疲れた」

「でもリン様、堂々としてられてびっくりしました」

「そうなんだ、見直そうかな」

 ジェネの言葉にシロイチが返した。


「あんたね、私をどんなにポンコツだと思ってたの」

「ポンコツなんて思ってませんよ、ただ、いつもおいらとか村の連中と気楽に話しているから」

「そっちが本当の私だもの、でも私がちゃんとしなきゃ、アンジェルが舐められちゃうし、リゲル様が恥をかくでしょ。だから必死なんだよ」


「ふうん、大変なんだね」

「だから、あんたと私も、しっかりリン様を支えなきゃね」

 どうも私の周りは、かかあ天下が多いようだ。


「大統領ご夫妻はどんな方でした」

「うん、人のよさそうな、やさしい人だった。まあ本当のところはわからないけどね。あと、奥様も普通の家庭の出身らしく、割と気があうかもしれない」


「しかし、お気を付けください。アンジェルは敬われてはいますが、国力としては侮られています。タルシアもミルンも、自分たちが物資を止めれば、と思っているところもあります」

「まあ、しかたがないですよね」

「どうも、タルシアはより彼方の国まで貿易を伸ばそうとしているようです」


「そうですか、まあアンジェルはアンジェルです。といいながらいろいろ悩むんですよね、小物だから」

「リン様がお好きなように、民はリン様がみんなのことを考えていることわかっていますよ」


「ありがとう、そう言ってもらえるだけで、うれしい」

 バタバタで予想外のこともあったけど、旅行は楽しかった。

「カスル、ポクルは楽しかった?」

「はいありがとうございます、服も買っていたできましたし、本も」

「それは、クルムにお礼を言って」

 出すと言ったのに断られてしまった。まあ、彼女の親の財力かもしれないが、ありがたかった。彼女はどう考えてもお金のために働いているのではなさそうだ。

「僕は、目標ができました。本当にありがとうございます」

「頑張ってね、応援する。でも農作業もしっかりね」

「はい」

「勉強もね」

「なんか大変だな」

「でも、うれしいです、僕なんて何の希望もなかったから」

 ほかにも、ポクルのように苦労している子供がいるかもしれない。自分は子供たちの希望を叶えることを目標にしたい、そんなことを思った。


 館が近づいてくると、やっぱりほっとする。ここが私の家なんだと本当に思えるようになっているのに気が付いた。

 門のところに、人がいる。リゲルだ。今日も持っていてくれた、嬉しくてリンはファルコンから飛び降りると走り出した。


 挨拶より先にリゲルの胸に飛び込んだ。暖かい。

「どうだった、楽しかったかい」

「あ、親書ありがとうございました」

 リゲルは笑っただけだった。


「さ、そろそろ稲も実ってきたから、しばらく大変になりそう。新しい人にも慣れてもらって」

「収穫祭をやらねばね」






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