第24話 私って浅はか?

「皆さんはどんなことが幸せですか、お館に私宛のポストを作ります、ちゃんとお名前を書いてくだされば、どんなこと書いてもらっても構いません。だから皆さんの望むこと書いてください、読ませてもらって、できることはリゲル様にお願いします。

 できなくても少しでもいい方向にします、お願いします」

 歴史で習った目安箱だけど、どうなるかなあ。リゲルを見れば彼はちゃんと頷いてくれた。


「最初だけは皆さん全員にお聞きします。お金持ちになるのがいいか、それよりも別の生き方がいいか、教えてください。ゆっくりでいいですよ」

 リンはシロイチにメガホンを返した、意外と魔力は便利だと思った。

 もしかして神の力もいろいろ便利なものがあるのかも、違うな神様の力はそんな風に使ってはいけないに決まっている。


 お祭りは盛況のうちに終わった。遠くからきてくれたものもいる、ありがたいことだった。

 国の端っこの方からなら、一日のお祭りのために一週間ほどがつぶれたものもいたはずだ。

 田植えや収穫に全領民を動員するとなると、それは大変なことに思えてきた。


「そういえば、この国って税金はあるの? 私ここにきて、お金というものを見ていないような気がする」

 夜二人っきりになった時に、リンはリゲルに尋ねた。

「税金はないし、貨幣もない」

「じゃあお館で必要なものは、どうしてるの? 私達が食べている食事とか服とかはどうして手に入れてるの」


 クルムの給料などもいるはずだ、職人の手間賃は?

「ごめん言い方が悪かった、金と銀と銅で払っている」

 なんだそのメダルみたいな言い方は。

「この世界が作られたときに、この領内で金と銀と銅も生まれた。それを新しい国ができるたびに、分けあたえて行って、この星中で流通している」


「この領内で? ほかの国には?」

「最初はほかの国なんかなかったらしい」

「ということは、ここがこの星の始まりなの?」

「そう、私の一番の仕事は神をまつること、そして金、銀、銅を管理すること」

 じゃ貧乏なわけではないじゃないか、この星の銀行なんだから。

「無駄遣いと私欲にかられたとたん金は鉛に変わる」


「それは伝説?」

「と思って何回かやったご先祖がいたそうだ、ちなみにここに攻め込んで、奪っていったものもいるそうだが、見事に鉛になった」


「税金は?」

「この国の作物はすべて私が買い取る、その代金を払う。その作物を売って金を回収する」

「じゃあ、お米を民にばらまいたら、その基本が崩れることになるんですか」

「大丈夫でしょ、その分手間賃を払わないから、田植えと収穫に関しては」

 自分の思いつきが、国の根本をひっくり返してしまうことにならないだろうか。


「だめならば、もう神がストップをかけておられると思う」

「みんなはどうなんでしょうか、学校を作って、他国にものを売って民が豊かになればと思ったのですが、喜ばれるのでしょうか」


「正直分からない、君の星と違ってこの星では科学の進歩ということはない、最初から今の世界で始まり、この先もずっとこのままだ。そうなると、金持ちになってもやれることは変わらない」

「リゲルは地球のことを知っているの?」

「うん、見たことはある」

「鏡で? どう思った、楽しそうとか、あこがれるとか」


「私は、ここで君と神に祈って、作物を作って、魔王と闘う、そんな世界がどちらかというと好きだな」

 確かに、それが自然の姿かとも思う。民はどうなのだろう、リンは自分の考えが独りよがりなものだったかなという気になった。


「落ち込まなくていいよ、神にゆだねてみようよ」

 リゲルはリンを抱きしめると、頭をなでてくれた、子供みたいだが、リンにはうれしかった。







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