第22話 リン、打ち明け話

 結局のところ、お祭りには全領民が来たのではないかというぐらいの、盛況になった。

 ミク、アル、マミといったブドウ摘みの少女たちもやって来て、モモに習ってお握り作りを手伝ってくれている。

「リン様がお方様だったなんて、びっくりです」

「ごめんね黙ってて」

「いいえ、そんなえらい方が私たちとお話してくださるなんて」

「偉くなんてないよ、私なんてリゲル様と結婚しただけだもの」

「そのリゲル様も、ほら」


 リゲルは、ベテルとともに酔っ払いの男たちと、酒を酌み交わしている。

 バッカスは、最初渋ったがリゲルが城の酒を放出したことと、ジェネに甘い声でせがまれたことで大判振る舞いをしてくれた。

 しかし、ジェネの甘えた声、リンには想像ができない。


「でもリゲル様に選ばれるってやっぱり私たちとは」

 マミがぽつりという。

「何言ってるの私もあなたたちと一緒よ」

「そうなんですか、リン様はお金持ちのお嬢様なんじゃ」

「ちがうよ、そうかぁ、聞きたい? 私の星のこととか子供の時のこととか」


「聞きたいです、湖で釣った魚、焼けましたからみんなで食べながら」

 シロイチとモモが串に刺した魚を配ってくれた。

「私もききたいなあ」

「え、リゲル様もご存じないんですか」

「ああ、神のお告げで逆らうわけには」

「え、お告げじゃなければ、私は選ばれなかったんですか、ショック」


「そんなことはない、リンでよかったと思ってるよ」

「リン様、まっかだ」

 ミクだ。

「リン様をからかうとは不届きもの」

 クルムが笑いながら叱った。


「私たちも、一緒にお聞かせいただけますか」

「ジェネにベテル、バッカスまで、みんなそんなに暇なの」

「せっかくの機会ですから」

 リンはため息をついた。


「私の星は、ここから見えてるのかなあ、よく分からないや。宇宙から見ると碧くきれいな星なんだ。多分、今私やみんながいるこの星と似ていると思う」

「リゲル様はご覧になったことあるんですか」

「あるよ、鏡に毎晩写してた、奇麗な星だよ」

 彼の答えにリンが驚いた。


「初めて聞きました、そんなことができるんですか」

「君が、ホームシックになるかと思って言わなかった」

「それは、多分大丈夫です、それじゃいずれ秋の収穫のお祭りの時にでもみんなにも」

「そうだね、それはいいかもしれない」


「リン様はそこでどんな暮らしをなさっていたんですか」

「公務員って言って、国や民のために働いてたの、農業、作物の出来とかどうやったらたくさん採れるかとか考えたりしてた」

「それって今と変わらないんじゃ」

 シロイチが言う。

「あれ、そういえば、確かに」


 リンの答えに、みんなが笑った。そうなんだけど、こんなに楽しくなかったんだよ、やりたいこともできなかったし、暗い日々だったなあ。

「皆さん本当にありがとうございます。私ここに来られて幸せです」

「それって私のお手柄ですよね、ご褒美に魚をもう一匹」

 猫のタムが言ったので、みんながまた笑った。


「リン様のお母様とお父様は」

 アルが尋ねた。そうか、その話があった。

「すみません、つい調子に乗っていらぬことを、お許しください」

 リンの一瞬の逡巡を敏感に察したのだろう、アルが椅子から降りて膝をつき詫びた。唇を噛んでいる、いい子だなあとうれしくなった。


「いいのよ、アル、椅子にお座りなさい」

 リンはアルの手を取って立たせた。

「そうですね、私のこと皆さんにもお話しておきますね。と言ってもあまりたいしたことじゃありませんが」




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