2-1:お願い



 スキル獲得のため、ガルを狩ろうとあたりを見回すとすぐに見つけた。

 隠れるでもなく襲うわけでもなく、ただこちらをじっと見ている。


 ただ、ガルと対峙してみたけど、体が痛くて思うように動けそうにない。

 仕方ないので、体の痛みが取れるまでは1日2匹だけ狩ることを目標とすることにした。


 余った時間はフェアリーからこの世界についての詳細を聞けばいい。わからないことも知ることができ、よりこの世界に対応しやすくなると思う。

 というか、そうしないと余計な怪我を負いそうだ。

 僕はそれから数日間、前と同じようにガルを狩って、体の回復を待った。




 そしてようやく筋肉痛が消えた頃には、世界の状況やスキルなどのシステムについてある程度知ることができた。


 世界については、既に世界の3/5が魔国の領土となっているらしい。はっきり言ってかなりまずい状況だと思う。

 とはいえ、僕には何も出来そうにないのでスルーするしかない。最悪一人でも生きていけるように考えておく必要があるくらいだ。

 それにまだ滅ぼされると確定したわけじゃあない。勇者の神託が降りる、聖皇国というのもあるらしいし。勇者を待てばいいだけだと思う。


 スキルのほうは以前フェアリーに言われた通りだ。ゲームのようにポイントで修得したり、本や実践、経験で手に入れることが出来るそうだ。

 レアなスキルも存在するみたいだけど、それには危険が伴う場合がほとんどらしい。いくら珍しくても、危ないならあきらめるほかない。


 他には、特性についても話を聞くことが出来た。

 勇者と一部の特性以外のすべての特性は、教会で変更可能であり、お金は一律銀10枚だそうだ。

 フェアリーはお金がたまったら、他の特性に変えることを勧めたけど、今はまだこのままでいい。

 まぁ、この特性がだめだと思ったら変えると思う。

 

 他にも有用な話は聞けたけど、今最も知りたかったものといえばこの情報くらいだろう。

 現状は、狩りをしながら装備を整えるのがベストだと思う。


 というわけで装備など買いたいのだけど、ガル2匹分の金額は日々の生活費でちょうど消えてなくなる。所持金は依然として20銀貨と、装備なんか買う余裕もない。

 なので、筋肉痛が消えた今日からは、1日10匹を目標に狩りをすることにした。それなら装備を買うお金もたまるはずだ。


 ただ10匹ともなると一度にギルドに持っていけない。狩場とギルドを往復することで大分時間が掛かることになる。

 予想では昼飯を抜けば、夕方にはどうにか狩りを終えることができそうだけど……やってみるしかない。




 早朝、町を出て草原に行き、ガルを狩ってギルドに運ぶ。

 これを繰り返すこと数回。予定通り10匹狩り終える頃には、夜になっていた。

 あと少し遅かったら、あたり一面真っ暗な中狩ることになってたとこだ。昼を抜いて正解だった。




 最後に狩ったガルをギルドに持って行き、ようやく一日の仕事が終った。

 それでも今日だけで総額110銀。まぁ、金貨にすれば11金なんだけど。使いにくいからまだ銀にしてもらっている。

 手持ちともあわせると、合計130銀と、ようやく所持金に余裕ができてきた。



「ご主人! お金たまってきましたね!」

「そうだね! これでご飯を奮発できるよ!」

「それより盾の購入をお勧めしますよ!」

「……」


 せっかくおいしいものが食べられるだろうと喜んでるとこに、防具の話が出てきて意気消沈した。

 とはいえ言われた通り、上着はガルにかまれ続けたせいでボロボロになっていた。


 僕はフェアリーの言うことを聞いて、防具屋に連れて行ってもらうことにした。




 中へ入るといろんな鎧や盾が飾ってあった。

 ただ、盾でも一番安い鉄の盾で金10枚。さすがにこれは高すぎる。それに僕が今ほしいのは、あくまでガルに噛まれる防止としての機能だ。食いつかないといけないから盾では大きすぎる。


 店内をさらに見回ると、鉄の篭手が置いてあった。手首からひじまでをガードする防具だ。片手で金5枚と盾より安く、機能性もちょうどいいからこれを買うことにした。




 所持金残り銀80枚。

 まだぎりぎりご飯を奮発できる。と、思ったけど、今度はフェアリーに服の買い替えを提案した。

 これも言われてみれば確かにそうだ。というか、盾よりもボロボロになった服を買い換える方が優先な気がする。




 服屋に案内してもらい、銀30枚の安い上着を買った。

 所持金残り銀50枚……。



「……。はぁ。なかなかたまらない」

「大丈夫ですよ! 明日また10匹倒せばいいんです! 今のとこ、ガルの討伐数は合計21匹です! あと、39匹はスキルのために狩らないといけませんから、すぐにお金たまりますよ!」

「そっか。 スキルのためでもあるもんね」



 元気に応援してくれるフェアリーはいい子だなとほのぼのした。

 とりあえずスキルのこともあるし、明日からまたがんばることにして宿に泊まる。

 でも宿とご飯の支払いすると残金は40銀になってまた寂しくなった。




 それから4日間、ガルを同じように10匹ずつ狩った。

 食費と宿代を引いて残金は銀424枚。ようやくお金がたまってきた。さらに初めてのスキルポイントもゲット!




 ポイントが手に入ったその夜、宿の自室でフェアリーから、すぐにポイント交換しますか? と言われた。

 確かに早く修得したいという気持ちもあったけど、疲れがたまっているのですぐに寝ることにし、翌日にすることにした。

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