第11話 襲来

【第11話】襲来



 数年後。僕は18歳になった。

身体も大きくなり、今では魔物を村から守る戦士だ。


「構えなさい」

「はい!」


 戦士になった今でも鍛練は忘れない。

僕が相手している人は、カーラの祖父。この村の村長だ。最初聞いたときは驚いた。カーラを拾ったのが村長ということに。


「どうした! いつもより動きが鈍いぞ!」

「っく!」


 今では剣の師匠だ。それと、人生のいろはを教えてくれた人でもある。あの時、カーラを僕の家に送ったのはこの村長だ。

僕がここまで強くなれたのは村長のお陰だ。


「はいはい。そこまでそこまで。お茶入れたから休憩!」


 カーラも僕と同じ18歳だ。今は【結界師】という役職についている。【結界師】というのは、魔物を守るための結界を作り出すための存在だ。この村が安全なのは、その結界があるからだ。カーラは昔から魔法を覚えるのが早かった。僕とは正反対だ……

 その【結界師】を魔物から守るのも僕の仕事1つ。


「はい、お茶」

「ありがとう」


 冷たいお茶が、身体に染み渡る。いつだって、訓練の後のこれは美味い。


「あれ? なにそれ? ナイフ?」

「いいでしょ! 結界術の力を込めたナイフなんだ! これで私も魔物退治に……」

「やめとけやめとけ。お前の術は全部防御よりだ。それにお前、武器の扱いは初心者だろ……そんな小さなナイフ持ってても意味ないぞ」

「もう~おじいちゃんうるさい!」


 カーラは持っていたナイフを腰にしまうと、一緒にお茶を飲み始める。


「ところでお前達はいつになったらくっつくんだ?」

「ブゥーー!!」


 含んでいたお茶を吹き出しむせる。


「も、もう! おじいちゃん。なに言ってるの!」

「もうお前達もいい年なんだからいい加減に……」


 ズドーン!!


 安らぎを感じている時、何かが爆発したような音が村中に響き渡った。


「なに!?」

「わからない。まさか……結界が!」


 結界が破られたかもしれない。僕は嫌な予感がした。


「魔物が! 魔物が攻めてきたぞー!」


 僕の予想は当たった。魔物が村に攻めてきたんだ。

戦える者は武器を取り、応戦する。もちろん僕も、それに参加した。


「村長! 村の人達を早く!」

「分かってる! だが、お前は……」


 村中で悲鳴が聞こえてくる。僕は剣を握りしめる。


「僕が引き付けます。村長は村の奥の結界へ……」


 この村にはもしもの時のために、もう一ヶ所結界が存在する。その結界の範囲は狭いがその分、村全体を囲っているこの結界よりも強力だ。並の魔物じゃあ突破できない。


「馬鹿なことを! お前がその結界に行くんだ! 私が引き受ける」

「もし、そこの結界が破られたら守る人が必要です。僕には力不足だ……だから……」


 悔しいが剣術では、村長の方が何倍も上だ。だから僕は、村長に村の人達を任せることにした。それに皆、村長と居る方が安心できると思ったからだ。村長は不服そうな顔をしていたが了承してくれた。


「わかった……だが、これだけは約束してくれ。必ず生きて帰ると」


 僕はそれに頷いた。


「さぁ、カーラも早く行って。ここはもう危険だ」

「私も行く! イランを独りにもできない!」


 カーラは、自分も行きたいと言ってきた。だけど、カーラの魔法は全て防御よりだ。相手にダメージを与えられるような魔法は持っていない。

 連れていっても大した戦力にはならない。

それ以前に、僕が拒否をする。死んでほしくないからだ。


「村長。頼みます……」


 僕は、カーラを村長に任せると、魔物達の方へ走った。



ーーーーーーーーーーーーーーーー



 ザン! ザン!


「グギャアアア!!」


 ここで驚いたのは僕でも倒せるくらい、魔物達の戦力は弱かったことだ。ここで、疑問が生まれる。


(こんな奴らが結界を破れるとは………)


 結界は、魔物からの攻撃を無効化するために作られた術だ。

生半可な魔物じゃ壊すどこらか触れることすらままならない。


(いや、今はそんなことを考えてる場合じゃないな)


 魔物の数は、こっちの戦力の倍以上居る。倒しても倒してもキリがない。


(くそ! 何匹居るんだ! …………っ!?)


 魔物を倒している最中に、僕は目を疑った。


「母さん! 父さん!」


 僕をここまで育ててくれた養母父が魔物に捕らえられていたんだ。


「イラン! こっちに来ては駄目だ!」

「え?」


 ボゴッ!


 養父は僕に危険を知らせようと、声を出していた。

だけど、気づくのが遅かったんだ。後頭部をこん棒で殴られ、意識が朦朧とする。僕はその場で倒れた。



ーーーーーーーーーーーーーーーー



「おじいちゃん! やっぱり私も行く!」

「駄目だ! お前が行っても足手まといになるだけだ! それにイランの想いを無駄にする気か!」

「っう……」


 イランと離れて数分。カーラがイランの元へ行きたいと言い出した。だけど、村長がそれを止めようとする。


「私は行く! イランを独りにさせない!」

「待て! カーラ!」


 止めようとする村長の言葉を聞かず、カーラはイランの元へと向かった。


「っく! 馬鹿者め!」


 追おうとする村長。しかし、行けなかった。家の影から2匹の魔物が飛び出して来たからだ。


「っこの! どけ!」

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