第4話
今日は〇ガテン5をやって寝ようと思っていた私を強制連行し、部室前まで移動した正子。
「新人連れて来たわよ!」
「あくまで教育係でしょうが」
私のツッコミを無視して、仲間の所へ行く正子。
「はぁ……」
そこで冷静になる。
何で引き受けてしまったのだろう。
もう競技なんてしないし、誰かと関わる事も極力しないと決めていた筈なのに、気付いたら私は部室に来ている。
完全にこの女のペースに巻き込まれていた。
「やったな正子! でも結構掛かったな」
「まあね優(ゆう)……だって中々振り向いて貰えない上に飛び降りまでされちゃうんだもん」
「マジで!? そんなだったのによく捕まえたな」
「飛び降りしてたとこを助けてから口説いたのよ。凄いでしょ」
「な、なるほどな……」
正子が金髪緑眼にジャージ姿の子……優と話している。
この言い方だと、私が飛び降り自殺したとこを助けられたみたいに聞こえて腹が立つ。
アクロバットさえ失敗しなきゃこんな事にはならなかったのに……。
絶対次逃げる時までに出来るように戻ってやる。
あんな言われようじゃ私のプライドが許さない。
「ニヤリ……」
あ、しかも笑いやがったあいつ。
……殺すぞ?
「あ、あの……」
「あ?」
「ひいっ!」
私に誰かが話しかけ、そして聞き返したら怯えられた。
銀っぽい黒髪のロングヘア、それに黒縁眼鏡の青い瞳の少女。
「そ、その……あの……」
「いやそんな震えられてても何なのか分かんないから、ちゃんとして貰える?」
「すすすすすみません……」
「いやすみませんじゃなくてさ」
「あのえっと……」
相手はガクガク震えるだけだ。
かなり人見知りっぽいというか、コミュ障……いやコミュ障に関しては私も人の事言えないけど。
これは酷い。
「あら、どうしたんですか? 道女(みちめ)さん」
眼鏡の怯える少女を道女(みちめ)と呼びながら、眼鏡の少女の隣に立つ黒髪ポニーテールの大和撫子。
かなり大人びた雰囲気に、私を含めてもかなりグラマラスな体型をしている、上履きの色も私や他三人と違うのを見るに、彼女は三年生だろう。
何というか、皆のお姉さん的な雰囲気も感じる。
ちょっとおっとりしてるのも中々良い。
「こ、琴実(ことみ)先輩……こ、怖いです……」
「大丈夫ですよ道女さん。ただ道女さんの事をちゃんと見ているだけで、何にも怖い事はしてませんよ」
フォローの仕方が大人だ。
というか私ってそんな怖いか……?
「あの……すみませんね。道女さんは人見知りで、あまり知らない人と話すのに慣れていなくて、多めに見てあげてください……」
「あ、その……なんか、こっちこそすんません」
ポニーテールの琴実と呼ばれた少女が深く頭を下げてるのを見て、私も思わず軽く会釈程度に頭を下げた。
「ほら道女さん、その……杉谷さんも謝ってくれましたし、顔を見てあげてください」
「うう……はい」
道女は琴実のお腹に埋めていた顔を私に向ける。
「あ、あの……」
「何?」
「ひいっ!」
「いやしつこいわ」
話が進まないだろうが。
「あ……えっと……その……ね、す、杉谷さん、正子ちゃんに迷惑掛けられてないかと思っててて……そそそのししししんぱぱいで……」
「うん、正直死ぬ程迷惑だった」
「ひどっ!」
遠くから正子がツッコミを入れる。
「あ、あのね……正子ちゃんは、色々一生懸命なだけで、悪気がああああったわけじじゃななないから、ゆゆゆ許してあげて……ね」
「え、まあうん」
「あ、ありがとう……」
照れながらお礼を言い、また琴実の後ろに隠れてしまう。
てか……一応道女もアイドルなんだよな?
こんなんで大丈夫なのか?
「私からももう一度謝罪しますね……」
琴実までもう一度頭を下げる。
正子確か部長って言ってたっけ。
出来の悪い上司を持つと大変だな。
「や、やめてよ二人とも。なんか私凄い悪い人みたいじゃん」
アンタが無自覚なだけで凄く悪い人だよ。
「正子さん?」
「な、なーに琴ちゃん」
正子が少し怯えた顔で問う。
琴実は穏やかながらもやや怖い、いつもは優しい人が笑顔で怒ってる時のような表情でゆっくりと近付いていく。
「まさかとは思いますが、乱暴な事は一切してませんよね?」
「すすすするわけないでしょ?」
「嘘おっしゃい。私が連れてきた新人さんの乳を揉んで退部に追い込んだり、初対面の時も私の胸を揉んだり……誰が貴女のセクハラしてません発言を聞くと思ってるんですか?」
うわマジかよ正子最低だな。
「琴ちゃんが悪いんでしょ? あんな良い乳の子連れて来るから!」
いやどういう理屈?
「寿奈さん?」
「はい」
「正子さんに何か変な事はされてませんか?」
「あーそうっすねぇ……まず屋上まで追い詰められて、入部しないと胸揉むわよって脅された上に、キャッチされてから顔面に唾吐きかけて欲しいって強要してきたから仕方なく吐いて、入部しないんならこうしてやるって言われてあんなことやそんなことされて……私……もうお嫁に行けません……このクソアマに私の純潔は奪われました」
「……」
琴実の表情がもう凄い事になっている。
「こ、琴実さん?」
正子が目を見開いていた。
「これは、少し手荒いおしおきが必要ですね」
「ちょっ、その……嘘よ! 話せばわかる!」
「言い訳無用です!」
そう叫ぶ琴実の手から、何かが放たれ。
「アアアアッ!!」
正子は部室の壁に叩きつけられた。
何というか……気功波みたいな奴で吹き飛ばされたように見えたが。
「あちゃー……相変わらずそれ痛そうだよな……喰らった事あるから分かるけどさ」
「ててて……」
「少しは懲りましたか?」
ホントに気功波だった。
てか、え……何で使えんのそんなもん。
「あ、驚かせてしまいましたか? これでも私、武道の心得がありますので」
亀仙流でも教わってたの?
または……サイ〇人?
「あ、一応言うけど琴実さん」
「はい?」
「さっきの話純潔奪われたのは嘘です」
「あら、そうだったんですか。ごめんなさい正子さん」
「だから言ったのに……」
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