下道!
「まずったな……」
「トラック、多すぎ!」
貨物トラック、しかもでっかい十屯トラックがバンバン走ってる。
法定速度順守の優良企業さんたちが走行車線を走り。
法定速度、何それ? な不良企業さんたちが追い越し車線を爆走。
おかげで追い越し車線に出るタイミングがなかなかつかめない。
前を走る
時速八十キロで優良トラックさんの後ろをトロトロ走るしかない。
「前の子もイライラしてるだろうなぁ……」
もちろん、わたしもイライラ。
まあ、でも、ここで無茶無理は無駄。
流れに乗る。
「あれ? 左?」
前の子が、一瞬、左のウィンカーを点滅させた。
「高速を降りよう、ってーの?」
次の高速出口で高速を降りようって事か。
「一般道で勝負、って事ね……」
高速道路で制限速度順守した状態だと、何のテクニックも無く、クルマの性能の勝負にもならないしねぇ。
一般道なら……あまり無茶な事は出来ないとは言え、高速道路よりはテクニカルな操作が必要になる。
「なるほど、ね」
「こちとら、バリバリ、若葉マークなんだけど……」
「まあ、どうにかなるでしょ! たぶん!」
高速の出口が見えて来た。
左ウィンカーを出して、側道へ入って減速。
料金所は、一箇所。
先に前のクルマが料金を支払う。
窓から出した手が……
「女性!?」
ちらっと見えたその手の感じ、どうも女性っぽい。
「女性かぁ……ちょっと意外」
「てっきり、やんちゃなお兄さんかと思ったけど」
まあ、女のわたしが言うのもおかしいかもだけど。
わたしも料金の支払い。
お釣りと領収書をダッシュボードに突っ込んで、いざ。
前のクルマは少し左に寄って停車。
わたしが支払いを終えて走り出すのを確認して発進。
この場合、あらかじめコースを決めた訳じゃないから
高速降り口前の信号で一時停止して、左ウィンカー。
二人の鼓動がハーモニーを奏でる。
よく聞くと、少し音が違っている。
おそらく、マフラーが違ってるんだろうな。
「あっちのが少し重低音、かな」
そして、この勝負。
よく知った道なら、
初めての道だったら、
いずれにしても、わたしは
「あと、勇んで追突しないように注意しないとね」
中古とは言え、事故はしていないキレイなクルマ。
多少の擦り傷跡はあるけど、キレイに直してあるし。
適度な距離を保ちつつ、置いて行かれないように。
交差車線の信号が黄色に変わる。
サイドブレーキを降ろして、クラッチを踏み込んで、一速シフト。
いつでも発進オーケー。
交差車線の信号が赤に変わる。
正面の信号が青に変わる。
左側方、後方を確認しつつ、ハンドルを左へ回す。
一速で角を曲がって少し加速したら、二速へ。
しばらく直線。制限速度は四十。
三速、四十ジャストで追走。
あたりはまだ暗い。
人や自転車、他の車の飛び出しが無いか、左右にも気を配りつつ。
ひし形のマーク。
前方に横断歩道有り。
少し減速して、横断歩道のに人が居ないかチェック。
前の車も同じように減速していて、タイミングはばっちり合ってる。
「なんか、本当に、わたしが運転してるみたい……」
バイクに乗っていた時代もそうだったけど。
わたしのように、横断歩道手前で減速する人は少ない。
いつだったか。
横断歩道に人が居たので、停止したら、停止したわたしの左側を、軽ワゴンが猛スピードで追い越して行った事があった。
あの時は、一瞬、何が起きたかわからなかったけど、気付いた後は猛烈な怒りが沸き上がって大変だったなぁ。
横断歩道の追い越し・追い抜きは禁止だよ!?
しかも、左側って……。
追いかけて行って、注意の一つでもしてやろうかと思ったけど。
対向車線の車が、横断歩道前で止まらない止まらない。
数えたら、十五台目でやっと止まってくれて、歩行者がやっと横断できた。
とか、思い出したら、なんかアドレナリンが……
「いいんだか、悪いんだか」
でも、前を走る
それでいて、メリハリのある、オンオフが効いた走り。
「左にしか曲がらない?」
さっきから、いくつかの交差点を曲がってはいるけど、右折はしない。すべて左折。
ぐるっと一周まわって、元の交差点に戻ってそこを直進。
「右折すれば早いのに……」
「右折……対向車があるか無いかでタイミングが変わるから、かな」
「左折なら、巻き込みと歩行者の確認だけで進める……か」
「なるほど」
いきあたりばったりの様にも思えるけど、明らかに、どこかに向かっている感じがする。
進行方向に、うっすらと夜闇にうかぶ、山が見えた。
「……峠?」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます