色付箋

雀交

第1話

捨てられぬ写真一枚スキャナーに脳の底にはアナログの君



ふと香る信号待ちのシャンプーは昔の君がワンレン揺らす



テレビから僕と過ごした街の名を今聞くたびに君何思う



赤いシュシュ我を繋ぎし黒髪をりりしく括り妬ましきかな



逆光に洗濯仕舞う細い腰モノクロームの姿焼きつく



台所ドレスコードのエプロンは似合うと褒めて結び目きりり



助手席の窓に額を付けたまま失恋ソングハミングしてる



握った手崖から落ちぬ力込めさよならしない楽しかったと



後ろ髪払う仕草で振り返る唇震え手の甲を目に



狂気なきつまらぬ恋と理由述べ向けた背中に空手チョップだ



腕つかみ赤いマニキュア食い込ませ二人を繋ぐ綴じ穴作る



より深く理解するため君のこと齧ってみたら虚数の旨み



色付箋うつろう気持ち使い分けはみ出た部分くしゃくしゃだけど



涙する別れ話は幾たびも泣かない今日で臍の緒切れる



顎に手を口紅の色似合わぬと拭う親指授乳の記憶



諍いは定期点検声に出し御安全にと愛を確認



片手では閉じられぬ傘差し出され戸惑う「じゃあ」と挙げるはずの手



「死んでやる」神通力は何度でも僕を呼ぶのは光る唇



優しさは嘘をつきあう口喧嘩ワインのコルク箱に溢れる



指絡め手を繋ぐ癖やめたから縫い付けられたポケットほどく















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色付箋 雀交 @e-coli

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