タイムトラベル2
梅雨までもう少しの春、夜になると肌寒い。コンビニの前で待っていると奴がくる。
「俺の名前は遠藤未来男(えんどう みらお)。君の名前は今野今男。ループの回数はもう覚えていない。200回は試した。君を助けに来た。君の袋の中にはおにぎりとポテチが入っている。歯磨き粉が切れているからそろそろ買った方がいい。よし、行こう。」
同じセリフを繰り返す。このセリフを言うと3回目のお前を思い出す。3時間かけてタイムトラベルを説得した後、一緒にセリフを考えてくれた。
「袋の中身当てるのはどうかな」
「歯磨き粉のこと言ったら伝わるかも」
夜の公園でいっぱい話したあと、そいつは目の前で車にひかれて死んだ。
実際、効果はてきめんだった。すぐについてきてくれる。
5回目のお前はアパートの階段を上るとき、お前は転んで死んだ。
8回目のお前はお風呂で溺死した。
11回目の電車に殺人鬼が出てきた。
14回目のお前はエスカレーターから落ちた。
19回目は空から鉄の棒が降ってきた。
25回目のお前は電車にはねられた。
32回目のお前は川に落ちた。あとは覚えてない。4回目には悲しくなくなっていた。
勝手は分かっている。多分今夜さえ乗り越えればなんとかなるはずだ。
「駅の方に向かおう。」
男の手を引いて駅の方向に歩き出す。このとき、男が隣に来ることのないように早足で歩いていく。駅に着いたら階段を使う。エスカレーターは使わない。二人でトイレに入る。ベルトを使って男の首を絞める。このとき殺さないようにする(3敗)。気絶したらトイレに鍵をかけて上の隙間から出る。すぐに水を買いに行く。思いっきりダッシュする。戻ったら上の隙間からトイレに入って目が覚めるまで待つ。ここで11時15分。目覚めるのは30分。しばらくするとドアをガチャガチャされる。開けてはいけない。開けたことはない。扉が静かになるとお前は目を覚ます。すごく怪しまれる。首を絞めたんだから当たり前だ。がんばって説得する。あと30分。このトイレはもうすぐ爆弾魔によって爆破されるから出ていく。ここからどうしよう。ベンチに座るか家に帰るか電車に乗るか。とりあえず電車に乗ろう。不審物、ビニール袋、紙袋のある車両はダメ。不審な人がいる車両はダメ。結局中心街と逆方向の電車に乗る。一駅過ぎたら紙袋をもった女性が乗ってきた。降りよう。森しかない無人駅だけどしかたない。あと10分。改札を出る。駅で待つ。
最初は知らん奴が死んでるのを見たところから始まった。家に帰る途中でお前は死んでいた。それを見た瞬間、俺は朝、目覚めたところからリスタートした。5回目には理解した。お前を助けないと出れない。そうしてお前を助け始めた。一応ホームセンターでヘルメットは買っておいた。ヘルメットも救急箱も万能ナイフも役に立ったことはない。何度も11時59分まではいけた。そこから先は知らない。
あと少しで59分。緊張で手が震える。
突然、駅が音を立てて崩れ始めた。出口に行くには間に合わない。一か八かでお前に覆いかぶさる。お前は小さく丸まっていた。背中に柱が倒れてくる。骨が折れるのが分かった。不思議と体は痛くない。時計を見る。あと30秒。意識が飛びそうになる。お前が腕の中で息絶えるならまだましだと思わずにはいられない。時計が12をさすのを確認すると意識が飛んだ。
目を覚ますと外は大雨だった。とりあえず顔を洗おう。お前の連絡先は知らないし、気にする余裕もない。なにより会社に行く時間が迫っている。
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