【プレイヤー・トゥ・アスク・フォー・ア・スター】 #4 後編
「ボアッとしてないで手伝ってくれねえかなあ!?」「あ、お、おう…」「…いやさ。お前さんが牙に、俺に不信感抱いてんのはわかったけどさ。だったらよ、あっちの康生氏を信じてやったらどうだ!?」「え…」九龍はたじろいだ。しかし次の瞬間、彼の言葉が、彼が自分に述べた言葉が脳裏に蘇る。 0
『ありがとう』と。彼はそう言った。何故、彼は礼など…。「オイ康生氏!」カツが叫び、九龍の思考を中断させた。「コイツ手空きだぞ!」「あっちょ…!?」「ム!?そうか」康生はニヤリと笑った。「九龍君!君が道を切り開き、我々を先導してくれ!」「先導!?いや、ここ初めてで」「地図を見ろッ!」 0
「お、おう…!」九龍は携帯端末を取り出し、地図アプリを立ち上げる。「どこに行けばいい!?」「ライブハウスは近くにあるか!?」「おう。ライブハウス…ん?」「ライブハウス!放送設備付きのヤツだッ!」「…」九龍は首を傾げながら入力した。「えぇ~…?ライブハウスなんでぇ…?」 0
探偵粛清アスカ
【プレイヤー・トゥ・アスク・フォー・ア・スター】 #4 後編
冷たい火花を残し、明日香と水琴は跳び離れた。それと同時に、周囲をサテライトめいて旋回していた白無垢探偵社の探偵たちが、一斉にナイフの投擲を始める!「ふッ!」明日香は連続側転でこれを回避。最中、氷刃が飛び白無垢探偵らを狙う。「ジャッ!」水琴が放ちし稲妻が、氷を叩き落とす。 1
「ふッ!」即座に肉薄した水琴より、明日香は連続側転で距離を取る。「チッ」水琴は舌打ち、それに追従。稲妻の残光が氷の粒と絡み合い、光を散らして異界めいたスペクトルを展開する。モニタールームを駆け回る氷の獣と雷の龍。さながら雷雲をそのまま開いたかの如し! 2
氷と雷がぶつかり、弾け飛ぶ。その勢いを速度に変えて部屋を駆け、再び交錯する!超高速の龍虎撃衝!殆どの探偵は、再び介入不可能となる!部屋をアトランダムに循環する蒼は、ぶつかり、火花を散らし、その果てに部屋の中央で激突した! 3
雷霆纏いし白刃と憎悪に満ちた氷刃!それを挟み、睨み合う両者!逆手に持った刃と逆の拳、そして蹴りが互いを食い漁らんと繰り出される!それらを弾き、捌き、受け止める。そして返礼し、突き、薙ぐ!最高速の応酬は更に加速し、致命的なクライマックスへの道を辿り始めていた! 4
「ふッ!」明日香は肘から先を振るような突きを打つ!水琴は首を傾げるようにこれを躱す。「ジャッ!」そして腕を絡ませるかのようにしながら、逆手の刀による斬撃で首を狙う!クロスカウンター!「ふッ!」明日香は腕に絡む力に従い、水琴を引き倒すようにしながら身を沈める! 5
そしてそのままにメイアルーアジコンパッソを放つ!水琴は刀を盾に、辛うじてこれを防ぐ。しかし明日香の攻撃は二段構えであった!回転の勢いを乗せ、逆手の刀による刺突!「ジャッ!」水琴は態勢を立て直す。そして明日香の刀を迎え撃つ!KRAAAACK! 6
甲高い音と共に、水琴の刀が宙を舞った!しかし度重なる雷撃と極限の格闘によって、それは空気をも焼き融かす程の熱を孕んでいた。明日香の氷刀は、蕩け、千々に砕け散った!互いに丸腰。否。最後に残った彼女らの最も強い武器…研ぎ澄まされ、己が望む未来を掴まんとするエゴを拳に握り込む! 7
「ジャッ!」「ふッ!」SMAAAASH!フックが激突し、致命的な衝撃が走る!部屋を覆う氷にヒビが走り、欠片が宙に舞った。その凄まじきに、白無垢の探偵たちは成す術もなく耐えるしかなかった。その時、彼らは理解した。既に全ての斗いは、弱き者には直視することすら許されぬ領域にある…! 8
明日香と水琴の拳の応酬の中で吹き出した血が舞い上がり、たちまち霧となって周囲に漂い始める。そして冷気に凝結し、雷に灼かれ揮発する。両者の実力は完全に互角。しかしそれは膠着を意味しない。水琴はこの一戦に全てを擲って惜しくないと考えていた。その覚悟故、膠着など決してありはしない! 9
「ふッ!」明日香のストレートが水琴の顔面にクリーンヒットした!頬骨が軋み、しかし彼女は決して怯むことなく!更にごく短く、一歩踏み込む!「ジャッ!」同時に拳を強く叩き込んだ!「ボ…ッ!」くの字に折れ曲がり、血と吐瀉物をマスクの隙間から吐き出しながら吹き飛ぶ明日香! 10
壁に叩き付けられずるりと落ちた明日香は、地に膝を突いた。ガクガクと痙攣しながら、水琴を睨む。「トドメだ」水琴は血濡れた拳を構え、駆け出した。歩みの度、電磁力で加速する。一歩目で推進力を得、二歩目で音を、三歩目で光を超える。極大速度を備えた雷は、穿てぬものなき無双の槍となる! 11
血に灼けて真紅となった雷は水琴の拳に諂い、爆発の時を待つ。絶対処刑の瞬間を!「必殺……ガン、グニィィィィールッ!」水琴の咆哮と同時に明日香は立ち上がった。その瞬間、爆轟が巻き起こった!真紅の光が溢れ、部屋を犯す!都市を揺るがす!全てを破壊し……衝撃が螺旋を描き、収束する。 12
起きた破壊は、全てが錯覚であった。インパクトの瞬間、水琴の腕は大渦に飲まれ、捩じられ、引き千切られていた。彼女は、そのように感じていた。実際の所、彼女の腕は軽く脇に逸らされていただけであった。「エボル陰陽道格闘術奥義、廻天」明日香は水琴を睨んだ。 13
明日香の右腕には、水琴が放つ筈であった全てのエネルギーが収束していた。彼女はその腕を貫手に変えた!「ジャッ!」だがそれより早く、水琴がさらに踏み込んだ!逆腕の突きが明日香の心臓を狙う!明日香のそれよりも早く。明日香の胸に触れ……貫く! 14
だがそれは、またしても錯覚であった。再びの廻天が、水琴の突きを捩じり逸らしていた。「……えっ」水琴の困惑と共に、明日香の腕に込もっていた全てのエネルギーが霧散した。水琴の防御は完全に開いていた。明日香の瞳孔が開く。そして全霊の、頭突きを放った!「ふぅアァァァッ!」KRAAAASH! 15
水琴は吹き飛び、モニターコンソールに叩き付けられた。「ごふ…」血を吐き、よろよろと立ち上がる。体の限界が近い。だがそれは、監査官代理とて同じだ。連続で二度の奥義を繰り出したことによってか。彼女もまた、足元が定かならぬらしい。近くに転がっていた刀を拾い上げると、構える。 16
周囲の探偵は、手出しを躊躇っているようだ。それでいい。自分が死のうと、監査官代理を討ち果たすことができれば。そして、この中の誰かが避難警報を鳴らせば。それで自分たちの勝利だ。だが水琴の胸には、一抹の寂寞があった。肩を並べる者の無きが、こうも心細いものだとは。 17
文宏は死んだ。目の前の女に殺された。康生はいない。自分が追放した。孤独の信念。それだけが、今の水琴であった。果たさねばならない。貫徹しなければならない。このナゴヤに荒覇吐の社を打ち立てる。そうしなければ死していった者たちに、捨ててきたものたちに申し訳が立たぬ! 18
二人が動き出した、その瞬間であった。モニタールームに設置されたモニターが一斉に点灯。炎に包まれる街を映し出した。『……琴…水琴!聞……るか……』ザリザリというノイズと共に声が流れる。二人は、この声に覚えがあった。映像送信のあるじは元白無垢探偵社、川上 康生! 19
「え…康生ッ!?」『よかった、繋がったか』ノイズの除去を完了し、康生は安堵の吐息を漏らした。「何用だ。ここはお前の如き臆病者が…」『そんなことを言っている場合ではないッ!』康生は叫び、映像をズームさせた。そこには、群成して街を闊歩し殺戮する肉人形…人嚙劇≪にんぎょうげき≫の姿! 20
「な…に、人嚙劇だとッ」「おのれ…!」憎悪に満ちた呟きが部屋の中にあった。水琴は振り返ると、そこには拳握りしめ、目から血を流さんほどに睨む明日香の姿があった。『これの口火を切ったのは浜口 侑斗だ。わかっているだろう!』「う…」たじろぐ水琴。 21
実際、白無垢探偵社の仕事は2つあった。その一つが、浜口 侑斗ナゴヤ入りの手引き。畢竟、自分たちがこれを招いたに相違ないのだ。そして、それに危機感を抱いていたのは、白無垢には川上 康生だけであった。水琴は呻き、頭を抱えた。『おい、水琴。悔やむのは後でいいだろう!』 22
「だが、私は」『やかましいッ!』カメラが、康生の顔を大きく映し出した。『何だ?一度間違ったからそれ以降も全て間違いだってか?ふざけんなッ!そんな袋小路みたいな世界にしない為に俺たちは斗ってきたんだろうがッ!』「…」康生は移動を始めた。音楽が聞こえる。弱者の奮起の音楽が。 23
そして、ライブハウスの中でそれを奏でる者らが映った。魂ごと、意志を吐き出すギタリスト。跳び回り、襲い来る人嚙≪にんぎょう≫を迎撃する象牙≪アイボリー≫と九龍。そして、彼らが討ち漏らした人嚙を銃声と鈍器のドラムでグルーブへと還元する人々が。「…!」明日香が目を細めた。 24
『一般市民たちも立ち上がってくれている。この期に及んで、力を持つお前たちが手をこまねいていいのか?それがお前の理想の未来なのかッ!』「…」水琴は目を閉じ、息を吐いた。「敵わないな。お前には」『……』そして彼女は、明日香に向き直った。氷の鉤爪を纏った獣に。 25
「やはり、貴様らは」絞り出す明日香。「生かしておいてはいけない」怒りと憎悪が彼女の中に満ち、発散される冷たい怒りへと注がれていた。水琴は真っすぐに見、刀を構えた。「ふッ!」明日香が跳躍した。その鉤爪を水琴の首に向けて揮い…届こうとした瞬間、水琴は刀を床に突き刺し、手放した。 26
明日香の爪が止まった。水琴の首に食い込み、骨を貫き、脊髄へと届くその直前で、止まった。水琴は瞬きすらせず、ただ明日香を真正面から見据えるだけであった。「……何故」明日香が絞り出すように言った。「何故、斗うのをやめた」「お前の中に、我々と同じ正義が垣間見えたからだ」「正義…?」 27
「ああ」水琴は頷いた。「我々は弱き者を守る為、弱き者が守られて当然な世界を作るべく斗ってきた。それがこのザマだ」「…」「不思議なものだな。正義がなくば、人は真っすぐ立てない。だがそれを強く思えば思うほど、行いは正義から乖離していく。遥か昔から、それは続いてきたというのにな」 28
水琴は大きく息を吐いた。「思えば、MoISの時点でその兆しはあったのだろう。なればこそ、この戦に正当性など微塵もなかった。そして監査官代理。貴殿もひょっとして、そう思っているのではないか。迷っているのではないか」「迷い……だと」「だから私への攻撃を止めた。違うか?」 29
「違う」明日香はよろめいた。水琴の首から、爪が抜けた。「私は……監査官、代理だ。粛清すべき探偵を、粛清する」「…貴殿が探偵、それも下層出身の探偵に恨みを抱いているのはわかる。だが、悪を働くのは探偵ではない。人間だ。人間が悪を働くのだ。ならば、人間を守るのも人間ではないのか」 30
「私、は」「そして貴殿は、人々を守りたいと願っている筈だ。だから人嚙劇を見、たじろいだ。憤った。違うか」「私…は…」「監査官代理…いや、明日香よ」水琴は明日香の、氷に包まれたままの手を掴んだ。「今、虐げられているのは弱き者だ。そして過去の私たちであり、過去の貴殿だ」「……」 31
「そこから目を逸らすのは容易い。そうなれば、望むものは遠ざかっていくしかないんだ。心の光から離れ、闇の中を往くしかないから。だから見つめなければならないんだ。そんな哀れな女に……私のようには、ならないでくれ」「……」「故に、頼む。浜口 侑斗を討つ。手を貸してくれ」「……私は」 32
明日香は、真っすぐに見てくる水琴から目を逸らすことができなかった。彼女の瞳に映る己の姿は弱々しく、運命に翻弄されるしかなかったあの頃に似ていた。父に連れられて逃げ、弄ばれたあの時に似ていた。強き者の都合に操られ踏み躙られる、弱い己の姿がそこにはあった。 33
自分は何の為に強くなったのか。何を目指し強くなろうと思ったのか。師、ディーサイドクロウ。彼のように笑うには、どうすればよかったのか。過去の自分。弱き自分から目を逸らすのは容易い。ただ強くなるだけは、あまりにも容易いのだ。 34
「…ああ」明日香は、倉庫と思しき部屋の中に佇む自分自身を見出した。そこには、一人の兄妹がいた。腹を裂かれ、流れ出た血がぶよぶよと体に纏わりつく妹と、それに縋り付き、必死に励ます兄。かつて明日香が切り捨てた兄妹であった。それは強き者に翻弄され、踏み躙られた果ての姿だった。 35
明日香はかつて、苦しむ妹に引導を渡した。だが違う。本当にやりたかったのは、彼女を救うことだったのだ。強き者に弄ばれた弱者を救うことだったのだ。例え自己満足であろうと。かつて弄ばれるだけの自分を救った師のように、弱き誰かを救いたかったのだ。 36
「ごめんなさい」明日香は屈み込み、兄妹を抱き留めた。かつての痛みを零さないように。「…あの時の私には、勇気がなかったんだ。苦しみに立ち向かう勇気が。誰かを救う勇気が」妹を襲っていたであろう痛みが、明日香を苛んだ。しかし明日香はそれを受け止め、胸に深く刻み込む。 37
「貴方たちは、かつての私だった。それなのに……最低だね、私」明日香の頬を涙が伝う。しかし彼女は、すぐに兄妹を抱えたまま、強く立ち上がった。「…私はもう、二度と背中を見せない。この痛みにも。自分にもッ!今度は……絶対に助けるッ!」そして真っすぐに歩き、倉庫の扉を開いた。 38
…明日香は、凍てついたモニタールームに己を見出した。体を鎧う氷は既に融け、あったのは純粋な己の姿であった。彼女は未だ映像途切れぬモニターにつかつかと歩み寄り、コンソールを叩いた。「九龍ッ!」『おわッ!?え、ちょ…篠田、そこにいんのッ!?』人嚙を迎撃しながら、映像の九龍が狼狽えた。 39
「まず、この間は殴ってごめん!」『今ンなこと言ってる場合かよッ!それよりどうす…』「そっちはそっちでどうにかして」明日香は言った。「私は白無垢探偵社と協同して天秤探偵社・浜口 侑斗を討つ」「明日香…!」水琴に向き直り、明日香は強く頷いた。 40
『…はァ、わかったよ』九龍は大きく息を吐いた。『けどさっさと頼むぜ!』「応!…ああ、それと」『ん?』「そのギタリストにケガさせんなよ。それ私の彼氏だから」『はァ!?彼氏ってオマ』明日香は通信を切った。「行きましょう」「ああ」水琴は頷き、そして部下たちを剥いた。「白無垢探偵社よ」 41
探偵たちは、一斉に姿勢を正した。彼らの顔もまた、晴れ晴れとしていた。「…ひょっとして、お前たちも私に反対だったのか?」「「「はッ!」」」「…そう全力で肯定されるとな」ばつが悪そうに頭を搔く水琴。「…今まで苦労を掛けたな。これが最後の命令だ。貴様らは、康生の支援に回れ」 42
「「「了解ッ!」」」「撤退は認めん。このナゴヤを死に場所と定めろッ!」「「「了解ッ!」」」「いい返事だ」水琴が頷いた瞬間、モニタールームの壁が開いた。「脱出用エレベーター、準備できましたよ!」「ありがとう、明日香」そして、全員は一斉にエレベーターに乗り込んだ。 43
ガゴン。扉が閉まり、ある程度の広さを持つ箱は闇に包まれる。「どうにも調子が悪いみたいで、下層にしか出られません」「そうか。ならば、走って地表に行くことになるな」「地表ですか?」「ナゴヤ電波塔。そこを拠点にすると浜口は言っていた。そして、ヤツは傲慢故に嘘は吐かん」「成程」 44
それきり、誰も何も言わなかった。沈黙と、エレベーターの稼働音が箱を支配する。それは、激戦の前奏曲じみていた。…だが、その隅に何者かが立っていることに、明日香だけが気付いた。否、明日香だけが知りえた。それは憎悪と怒りに満ち満ちた、もう一人の明日香であった。 45
「弱きを守る為に、ね」もう一人の明日香は吐き捨てた。「くだらない。弱い者は、この世界では生きていられない。そんなものを守るなんて無意味だわ」「…そうかもしれないわね。けど、私がそうしたいの」「…」「そしてそれには、私だけの力じゃ届かない」 46
「そうでしょうね。だからこんなに仲間なんて募ったんでしょ」「それでも足りない」明日香は、自分の下へと歩み寄った。「貴方の力が必要なの」「…え」もう一人の明日香は、面食らったように目を瞬かせた。 47
明日香は以前ツクバでも見たこのもう一人の自分の正体を推測し、『自分の意識が機械へと移植される時に生まれたキャッシュのようなものが《セト・アン》の力を受けたことで表出したもの』と推測していた。それは正しく、そしてそれは彼女の中にある憎悪や怒りを強く受け継いだ、『鬼』であった。 48
「そして、それも含めて私だから」明日香はもう一人の自分を…鬼を、そっと抱きしめた。「貴方の居場所は、私が作ってあげる。だから…一緒に斗おう」鬼は暫しぽかんとしていたが、やがてそっと涙を流し、明日香の背に腕を回した。鬼の姿が01に分解されて消え、後に一つのファイルが残った。 49
『ogre.exe』。明日香は脳内にアーカイブされたそれを確かめると、天を仰ぎ見た。遥か頭上から、エレベーターやあらゆる施設、階層を貫いてさえ届く重圧が落ちる。だが、彼女の中に恐れは湧いて来なかった。真っ直ぐ立てる強き意志が、彼女の背を、足を支えている。 50
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壊れきった街の中で、於炉血はピクリと肩眉を吊り上げた。人嚙≪にんぎょう≫より伸びる糸。そこを通り、指先から伝わる感覚。下層の某所で、一つの扉が開いた。都市管理者の脱出口。そこより現れ出ずる集団あり!「ああ、ようやくか…待っていたよ、監査官代理。僕の愛しい障害…ッ!」 51
「ふぅアァァァッ!」冷気が吹き荒れ、人嚙の群れを蹴散らす!「じィやァァァッ!」稲妻が迸り、人嚙を焼き払う!並び立つ両雄。監査官代理、篠田 明日香。白無垢探偵社、土師 水琴。女たちは、未だ包囲し尽くす悪意の群れを見据え、真っ直ぐに切り込んだ! 52
(つづく)
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