【プライド・フロム・マシン】 エピローグ

ツクバを吹き抜ける地獄風が、心を冷やす。列を成して歩く生存者は一様に俯き、その表情を影に隠そうとしているようだった。無理もない。誘導する自衛隊隊員は、街を覆う凄惨な破壊跡に鼻白み、そう自分に言い聞かせては、それぞれの職務を全うする。無感情な誘導と風以外、音は無いようだった。 1



人々の列の脇を、一人の女性が迷いなく歩く。隊員や人々は、彼女の存在に気付くことはない。達人の本気の隠密は、例え道の中央を堂々と歩いていようと、気付くことは極めて困難である。女性はコートのファーを撫で付け、ビル群の亡骸を見上げた。彼女はパラパクタム。ハイドアンドシーク諜報部長。 2



彼女はビルの屍山血河の頂に何かを認めると、躊躇なく跳躍した。地獄の風でさえ彼女を捉えること能わず。そう思わせる、滑らかな動きであった。パラパクタムは突き出た鉄筋の上に立つと、剣めいた残骸の上で体を丸め、都市を見下ろす女に向け、存在感を放った。その女…篠田 明日香は目を瞬かせた。 3



「部長!?お、お疲れ様です…!」「よほど疲れていると見えるな」パラパクタムは息を吐いた。「普段なら開口一番で悪ふざけに走る君が、月次なことしか言えんとは」「ああいえ、その…すみません」明日香はばつが悪そうに頭を下げる。彼女は再び、地獄都市へと視線を戻した。 4



「考えていたんです。粛清とは何なのか」「ほう」「此度のツクバ、粛清対象となっていた錆探偵社が下手人でした。しかし、粛清のリストが私に渡されたのは、ツクバの異変が表出するよりも前のことです。一体、社はどこから情報を入手したのか」明日香は目を細めた。「粛清って、何なのでしょう」 5



「知りたいかね」「え?」明日香は顔を上げ、パラパクタムを見た。「あの、いま何と?」「粛清の何たるかを知りたいかね」パラパクタムは繰り返した。明日香の抱く疑問を予期していたかのように。否、彼女は諜報部長として、過去何人もの監査官代理の粛清を見て来たのだ。「はい」明日香は頷いた。 6



「いいだろう。1時間後、外部に駐屯する自衛隊の補給班前に来たまえ。シナガワまで送って行こう」「…ありがとうございます。ところで、部長はどうしてツクバに?」「野暮用だよ。無駄だったがね」肩を竦め飛び降りるパラパクタムを見送り、明日香は呟いた。「シナガワ・シティ…か…」 7



シナガワ・シティ。TOKYO23都市がひとつであるそこには、ハイドアンドシーク本社ビルが存在する。それ以上に、明日香にとって重要な意味を持つ地であった。自分と師…ディーサイドクロウが初めて出会った地なのだ。そこに答えがあると言うか。明日香はシニカルに笑った。 8



眼下には、黒々とした都市の屍が横たわる。屍は遥か広がる氷に抱かれ、冷たく、穏やかな眠りに就こうとしていた。人類生存不能温度は、直にツクバを覆い尽くし、紛うことなき氷の地獄へと変わるだろう。明日香は、再びそこに死線を戻した。あと少しだけ。この地獄を、目に焼き付けておきたかった。 9



───────────────



この都市から、もはやWi-Fiは消えた。吹き抜ける風は乾き、未だここに生きる者を凍てさせんとする。常人は早急に去らねば命を奪われるそれに、しかし人々はゆっくりと列を成して脱出への道を歩んでいた。その緩慢は自棄ではない。流星めいた髪を靡かせ眺むる《ルシファー》は、それを知っていた。 10



彼女は、先に行動を共にした少女が出て来るのを待っていた。彼女に謝り、そして別れを告げる為に。自分は《セト・アン》へと戦士を導く為、彼女を支えたものを奪った。せめてそれだけは話さなければならない。だが、運動センターより出て来る者が少女でないことを認める度、ほっとする自分がいた。 11



「何つーか、難儀だねぇアンタ」隣で何をするでもなく、ぼんやりとしていた少年…九龍が口を開いた。「いや会ったばっかの俺が言うのもアレだけどさ」「別にいいわ。あなたのことは見てたし、あなたも私の事情は把握してるでしょ」「あー、まあね」九龍は曖昧に頷いた。 12



それから九龍は、光を血色に照り返す髪を掻きながら、何事かを唸り続けた。「…無理して何か話さなくてもいいのよ」「あー、いや。うん。わかってる。わかってるけどさ」金の瞳を当て所なく動かす彼を見、《ルシファー》は肩を竦めた。必死に言葉を選ぼうとするその気遣いは、嫌ではなかった。 13



その時、彼らの横に影が降り立った。「あ、お帰り」「駄目だな。空振りだ」影…原 宏樹は、首を鳴らしながら言った。「タイムリープ、だったか。既にここから逃げ去っているらしい。元気なことだ」「そっかぁ。一発ブン殴ってやりたかったんだけどな」「…九龍、タイムリープとは知り合いなの?」 14



「ちょっと前に怖い目に遭わされてんだよ。くそ、思い出したら腹立ってきたなあ」「加え奴は弊社の粛清対象でもある。逃がせんよ」「…そう」《ルシファー》は目を伏せた。「私には…ちょっと違うわね。彼は」「あ?ああ、そうなん」何かを得心したように頷く九龍。「違うと思うぞ」宏樹が言った。 15



「確かにそういうのではないけど…けど、彼がいなかったら私はとっくに死んでいたから。せめて一言くらいは言いたかったわね」「…それだ」「え?」頷いた九龍を、怪訝そうに見た。「それって…どれ?」「《ルシファー》、俺がアンタに言いたいことだよ。せめて一言、探してる奴に言ってあげなよ」 16



「そう、したいけれど」「アンタ、ツクバから出たことはあるか」九龍は真っ直ぐ、闇に差す光のように《ルシファー》を見た。《ルシファー》はそれに怯んだ。「避難民は外での生活を余儀なくされる。けど、この国はどこもひどい有様だ。昨日会った人と明日も会える保障なんて、どこにもないんだ」 17



「……」「会えたとしても、昨日と同じように話せるとは限らない。自分の知らないところで何かが変わり、わからないままに分かたれることだって……あるんだよ。そうなったら、昨日言いたかったことは…どこに吐き出せばいいんだ」「…」「だから、言いたいことがあるなら今、言った方がいい」 18



「九龍…」《ルシファー》は何かを言おうとした。彼女は己の中にある《セト・アン》の力を通じ、九龍のことも見ていた。だが、それだけだ。彼は…何を抱えているのだろう?それを聞くことは躊躇われた。 19



「すみません…!すこし通して…」人の列から声が聞こえたのは、その時であった。見ると列をすり抜け、《ルシファー》らの下へと向かっていた。「…!」瞬間、《ルシファー》が強張った。彼女が動き出そうとした瞬間、九龍が腕を、宏樹が肩を掴み、引き留めた。「ちょっと…」少女が、駆け寄った。 20



「…えっと」「彼女と話がしたかったんだろう」宏樹は《ルシファー》を放すと、九龍の肩を掴んだ。「少し外すぞ」「あ、うん」少女は離れ行く彼らに会釈すると、《ルシファー》を見た。「……」「……」「…ええっと」「私ね、《ルシファー》」重い空気を破り、少女が切り出した。 21



「あなたと会えて嬉しかったの。どこに行っても殺人ロボットばかりで、見かけた人はみんな死んでて…あなたに会えて安心したの。私と同じ見た目の女の子に会えて、すごくほっとしたの」「…」「だから、あなたがいなくなっちゃった時は、本当に寂しかった。悲しかった。不安だった」「…」 22



「なんで、何も言わずにいなくなっちゃったの」「…ごめんなさい」「謝られてもわかんないよ。教えてよ、理由を」少女の目は潤み、揺れしかしその中に、わずかな『信』があった。《ルシファー》を信じたい、という光が。《ルシファー》は訥々と語った。《セト・アン》の呪縛。それから逃れる策謀。 23



《ルシファー》は、この説明から己の感情の一切を省いた。少女はただ、黙したまま聞いていた。「…私の行いは全て、私が自由になる為にやった。それに許しを乞うつもりはないわ」《ルシファー》は話を締めた。それから暫く少女は俯いたままであり、重い沈黙が横たわる。 24



《ルシファー》は、小さく肩を震わせながら少女の反応を待った。責め立てられる覚悟はとうにしていたのに、いざそれが目の前になると、体が竦む。このとき初めて、彼女は己の中で身悶えする尊大なる恐怖心と孤独を知った。「《ルシファー》はさ」ややあって、少女が口を開いた。 25



「怪物がいっぱい現れた時、運動センターで斗ってたよね。あれって私に赦してほしかったからなの?」「違うわ。あなたを守りたかった」「嘘。守りたかったのは、別の何かじゃないの?」「…」少女の言葉に、《ルシファー》は答えることができなかった。それはほぼ事実であったからだ。 26



彼女が真に守ろうとしたのは、ガロの記憶の復元を試みる九龍であった。ココイやナナミを自分の中の《セト・アン》の力で侵し、彼らの想いを《セト・アン》本体にフィードバック。その想いは、生まれ来るジュデッカらに少女のいる運動センターへの攻撃を躊躇させ、チャンスを作り出した。 27



少女も当然、守るつもりではあった。だが主題ではない。紛れもない事実だった。「けど私には、それが悪いことだとは思えないよ」「え…?」少女の言葉に、《ルシファー》の瞳が揺れた。「私もいっぱい怖い目にあったから…そこから逃げる為に何かしようとするのは、悪いなんてとても思えない。… 28



…けど《ルシファー》。なんで何も言ってくれなかったの?あなたはあのラーメンで、私を助けてくれたのに。なんで私にあなたを助けさせてくれなかったの?ココイやナナミも、きっと協力してくれたのに。私が怒ってるのは、そこ」「…ごめんなさい」「赦さない」少女は断言した。「絶対赦さない」 29



涙ながらに言うと、少女は《ルシファー》の手を掴んだ。「ねえ、《ルシファー》。あなたはこれからどこに行くの?」《ルシファー》は、離れた位置にいる宏樹に目を流した。「暫くは彼に帯同するわ。それが終わったら旅をするつもり」「なら、会いに来てよ。たまにでいい。友達として、会いに来て」 30



「…わかったわ」《ルシファー》は頷いた。「絶対に会いに行く。お土産と、色んな話を持って。待ってて」少女は頷き、離れた。「梶 明日菜」「え…?」「私の名前」少女は…明日菜は瞳から雫の線を引きながら微笑むと、人々の列に戻って行った。「待ってるから!私、待ってるからね!」 31



《ルシファー》は頷き返し、明日菜の背が消えるまで見送り続けた。「終わったか」「ひッ!?」突如、背後から掛けられた声に《ルシファー》は跳び上がった。振り返ると、そこには宏樹と、冷や汗を流す九龍。「いきなり後ろ取らないでよ…心臓に悪いわ。いや、九龍の様子も中々恐ろしいけど」 32



「えー、あー、うん」九龍は目を逸らした。「さっきの子に伝言頼まれててさ。けどなんかそんな空気じゃなかったじゃん…」「用事を果たすのに空気など気にしている場合か」宏樹が呆れた。「さっさと追って伝えて来い」「いやけどアレじゃんか!こう、良くないじゃん!」「知ったことか」 33



「うう、わかんねえかな…わかったよ、何か書くモンある?」「社会人ならメモとペンくらい携帯しておけ」宏樹は呆れながら懐から筆記具を取り出す。だがそれは、戦闘の中で破損していた。「おい」「うるさい」彼は舌打ち、再びポケットを探る。やがて何かを引きずり出す。ボロボロのリボンだった。 34



「何だそりゃ?」「ココイ殿から抜いたメモリーカードを包んでいた奴だ…処分するのを忘れていたな」「ココイ?」九龍は首を傾げた。「なら、それくれよ。それがいい」「見下げ果てた奴だなお前…」「ちげーよ、それ『が』いいんだよ!」「そうか。よくわからんが…」 35



九龍はリボンを受け取ると、指先を歯で切った。その血でリボンに一筆認めると、垂れ落ちた血が蝶となり、リボンを掴んで羽ばたき去って行った。「よし!」「何がよしなのかよくわからんが…まあいい」宏樹は強引に思考を戻した。「俺は《ルシファー》と、少しやることがある。九龍はどうする」 36



「TOKYOに戻るよ。さっき篠田から連絡が来てさ。次シナガワだって」「シナガワ…そうか」宏樹は何かを得心したように頷いた。「なら、暫くは別行動になる。その間の武運を祈ろう」「サンキュ。アンタもな」九龍は笑うと、去って行った。「俺たちも行くぞ、《ルシファー》」「ええ」 37



…風に身震いする明日菜の肩に、何かが引っ掛かった。それは一つのリボン…いつか、ココイとナナミに贈呈したものであった。それには赤い文字で『我々の誇りを守ってくれてありがとう』と書かれていた。天を仰ぐ明日菜。そこには何者の姿もなく、闇ばかりが広がる。彼女の頬を、雫が伝った。 38



──────────────



コキュートス・エクス・マキナの底、凍てついた闇の中に《セト・アン》は己を見出した。ここは所謂あの世か、或いはWi-Fi揺蕩う電子の海か?自嘲気味に笑うが、胸に僅か穿たれた小さな傷が、それを否定する。明日香の刀に貫かれた痕だ。しかして氷の刀は全く溶け、彼自身も解放されていた。 39



「どういうことだ…」独り言ち、ぐるりを見回す。すぐに彼の目に留まったのは、熱を放つヒーター。これが彼を氷から解き放った。そしてその近くで胡坐を掻き眠る男……原 宏樹と言ったか……と、まな板の上で何かを切る《ルシファー》だった。「は…?」《セト・アン》は困惑した。 40



「ム…」宏樹の肩が揺れ、気だるげな瞳を上げた。「目が覚めたか」「こっちの台詞だよ」《セト・アン》は肩を落とした。「何コレ。何の儀式?」「さしずめ悪魔王復活祭と言ったところか」「マジで何してんの君ら…?」「そこまで語らねばわからんか」宏樹は立ち上がり、《セト・アン》を見下ろす。 41



「無論、贖罪の為だ。貴様にはこれから、犯した罪を償ってもらう」「なら、あのまま始末しておけば良かったんじゃないの?それに、目覚めたら君らを殺すと思わなかったのかよ」「貴様の命にツクバ滅亡を賄えるほどの価値はないし、今の貴様なら俺でも勝てる。忘れないことだ」 42



「はッ」《セト・アン》は鼻で笑った。「贖罪ッたって、僕にどうしろッてんだ?見ろよ、ツクバの地獄を。命以外で、どう償えッてのさ」「《セト・アン》」それまで、黙して何かを調理していた《ルシファー》が口を挟んだ。彼女はフライパンをバーナーに乗せた。「あなた、死にたいの?」 43



「…そうだな」《セト・アン》は膝を抱えた。「僕の意志を好き勝手に弄くられ、仕事まで蔑ろにさせられた。今ここに布団があれば、腹を切っているよ」「にも関わらず、あなたは『償い』と言うのね」「そりゃそうだろう?僕が人間を好きじゃないのは本当だし、それを肥大させられたんだから」 44



「そうやってあなたは目を背け続けるのね」《ルシファー》は悲しげに言った。「何?」「確かに私も、あなたは罪を償わなければならないと思う。けどそれはあなたの心じゃなくて、あなたの行いに対してよ」「行いだと?」「ツクバを破壊した、その行い」《ルシファー》はフライパンに食材を入れる。 45



「あなたがツクバで見たもの。感じたもの。それは全て、あなたの下に戻っているんでしょう?ならわかるでしょ。あなたもツクバの一部だったって」「…」「あなたは認められていた。あなたは受け入れられていた。その事実を蔑ろにした、それがあなたの罪。私は、そう思う」「罪…僕の…」 46



フライパンの中で食材が踊る。タケノコ。ニンジン。ピーマン。しいたけ。豚肉。《ルシファー》はそこに、バターと醤油を投入した。「ツクバは終わった。あなたが終わらせた。もしそこに少しでも後悔があるなら、罪を償ってほしい。ツクバの存在を残す為に。あなたも、ツクバの一部だから」 47



《ルシファー》は料理…野菜炒めを皿に移すと、スポークと共に《セト・アン》に渡した。「ツクバの、一部…僕も…」《セト・アン》は呟くと、野菜炒めを恐る恐る口に運んだ。「しょっぱいよ、コレ…」「あら、それはごめんなさい」咀嚼する彼の目からは、涙が零れ落ちていた。 48



…「それで、僕は何をすればいいんだ?」《セト・アン》は食べ終えた皿を置くと、宏樹に尋ねた。「わざわざ叩き起こしに来たんだ、僕にしかできないことをやらせるつもりなんだろ?」「察しがいいのは嫌いじゃない。まず一つ。篠田 明日香に武器を作れ」「ええ、アイツの?武器を?」 49



宏樹は頷いた。「これからあいつは更なる危難にぶつかる。それを乗り越える為の武器。斗った貴様なら、どんな武器がいいかイメージできるだろう」「…わかった。けどさ、やけに指示がピンポイントすぎない?どこかから命令来てるの?」「弊社…ハイドアンドシークだ」「マジぃ…?」 50



《セト・アン》は訝った。「彼女、探偵の粛清してるんだっけ?確かに危難はあるだろうけど、僕との斗い以上に過酷なことなんてある?」「残念ながら、ある」宏樹は断言した。「弊社は今年いっぱいくらいまでの未来が概ねわかる。当然、貴様が何をしでかすかもな。深層まではわからなんだったが」 51



「へえへえ、そうかい」「信じていないな」「当たり前だろ」「ならば教えてやろう。8月31日、蚩尤が斃れる」宏樹が言った瞬間、沈黙が横たわった。しかしそれは、驚愕の沈黙であった。《セト・アン》は目を見開き宏樹を見る。彼の言葉を脳内で何度も反復し、その果てに、やっとのことで動いた。 52



「……は?」「8月31日に蚩尤が死ぬ」「はァ!?」《セト・アン》は跳び上がり、頭を抑えながら辺りをぐるぐるとうろつき始めた。「おいおいおいおい…蚩尤ってあの、町田の王だろ?」「そうだ」「戦の魔王だろ?」「そうだ」「あの最強の?」「そうだ」「それが?」「死ぬ」「嘘だろ?」「マジだ」 53



「…冗談で言えることじゃないぞ」「冗談じゃないからな」「嘘だろ?」「マジだ」断言する宏樹の視線は、あくまで真っ直ぐであり、そして平静であった。「…マジか」《セト・アン》は再び座り込んだ。ニッポンと事を構える以上、いつかは蚩尤と諍い、討つ覚悟はしていた。だが、それでも急すぎる。 54



「31日って、あと半月もないぞ。そんなにニッポンでは革新が起きてるのか?」「起きていない。それは、もっと後だ」「…ニッポンのパワーバランス、完全に崩れるぞ。僕が起こそうとしてたのなんかメじゃないくらいの戦争が起きる」頭を掻く《セト・アン》。 55



トモシビグループと並びニッポンを支配する七天魔王の首領が、唐突に死ぬ。彼らの間で、蚩尤が保持していたあらゆる利権を吸い取らんとする戦が始まるだろう。「……待て」《セト・アン》は狼狽した。「何で今、その話を僕にした?まさか、まさかお前…!」「察しがいいな」宏樹は笑った。 56



「二つめの贖罪だ。貴様は蚩尤の後を継ぎ、魔王となれ」 57













粛清完了:錆


×鱗 ×風切羽 車裂き ×錆 白無垢 ×土蜘蛛 天秤 ×滲み ×包帯 ×水底 ×鑢

×鎖 歯車


残粛清対象:4




ニッポン滅亡決定まで:96時間





探偵粛清アスカ

【プライド・フロム・マシン】

おわり

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