【プライド・フロム・マシン】 #4 前編
九龍はコードレス掃除機を片付けると、革張りのソファに身を投げ出した。星空探偵社のオフィスは清掃が行き届いている。九龍の手によるものだ。それは彼にとって自慢であると共に、歯痒くもある。多く探偵に重要な戦斗スキルは伸び悩み、生活スキルだけがひたすらに練磨されるのだ。 1
「なあ、ウェイランド…俺、このままで本当にいいのかな」「ン?うーん…」星空探偵社社長、ウェイランド サーストンは、机にペンを置いて顎を擦った。「このまま?」「俺がウェイランドに拾われて、もう半年だろ。だのに全然強くなれないで、家事ばっか上手くなりやがる」頬を膨らませる九龍。 2
「家事は嫌いか?」「いや…好きだよ。部屋が綺麗になったら気分がいいし、うまい料理を作るのは最高だ」「それだよ、九龍」ウェイランドは九龍の隣に腰掛けた。「このニッポンには、色々な道がある。いつか君が星空探偵社を発つ時、胸を張って好きだと、そう言える道を行ってほしいんだ」 3
「ウェイランド、俺は…」「九龍、僕らは家族だ。家族として、君には幸せになってほしいと、Ia僕はずっとそう思ってるんだよIa。なあ、君は、自分の過去をどう思う?」Cth「今更、過去を知りたいとも思わないよ」「そuう、僕もね、君には過去に囚われてほしくない。lhuもちろん、この探偵社にもだ」 4
「俺の周り?」「今言った、過去さ」ウェイランドは言った。「君が何故、あんな路地裏にいたのかfhtagn。その切欠が、いつIaまた襲って来るかもわかIaらない。その時、Cthulhu君自身を守れるように」「俺自身をfhtagn!?」「ああ。Ia!九龍Ia!Cthulhuはfhtagn!僕Ia!朝Ia!子Cthulhu!fhtagn! 5
Ia!Ia!Cthulhu!fhtagn!Ia!Ia!Cthulhu!fhtagn!Ia!Ia!Cthulhu!fhtagn!Ia!Ia!Cthulhu!fhtagn!Ia!Ia!Cthulhu!fhtagn!Ia!Ia!Cthulhu!fhtagn!Ia!Ia!Cthulhu!fhtagn!Ia!Ia!Cthulhu!fhtagn!Ia!Ia!Cthulhu!fhtagn!Ia!Ia!Cthulhu!fhtagn!Ia!Ia!Cthulhu!fhtagn!
探偵粛清アスカ
【プライド・フロム・マシン】 #4
びくりと体を痙攣させ、九龍は固いものに頭を打ち付けた。「ぎェッ!?」頭を押さえようとし、そこで己が椅子に拘束されていることに気付く。異常事態を察知した九龍は呻き声を上げながら目を走らせた。鋼鉄製の部屋には自分が縛られる椅子と、自分に繋がる何かの小さな機械があるのみ。「何だアレ」 7
「エゴ・コンバーター。見るのは初めてか?」重々しい音と共に鉄扉が開き、その隙間より投げ掛けられる声が、九龍の問に答えた。扉の先より現れ出るは、鋼の躯体持つモノアイのロボット。「ルミナスバグ…!」「ああ、俺だぜ」湯気を立てる椀を持つ彼の後ろで、鉄扉が再び鈍い音を立て、閉まる。 8
「ここはどこだ。お前は俺に何をした。それは何だ!」「質問が多いな」ルミナスバグは椀を揺らし、呆れた。「ここはツクバ。俺はお前にちょっとした改造を施した。そしてこれは鮭雑炊だ」「えっ…雑炊…?」「お前、かれこれ3日弱飲まず食わずだぞ」ルミナスバグは匙で雑炊をすくった。「あーん」 9
「はあ!?ちょっと待あッッつ!」口にねじ込まれた雑炊を飛ばしながら叫ぶ九龍。ルミナスバグは、それを見ながら笑った。「フッハッハ…!小籠包でも作ってくりゃ良かったか!?…舌先に触れないようにしろ。そうすりゃ少しだけマシだ」「そうじゃねえよ!何でお前が俺に雑炊なんて作るんだよ」 10
「まだお前に死なれちゃ困る」ルミナスバグは椀を置き、身を乗り出す。「何の為に生まれ、何の為に生きるか。考えたことがないとは言わせんぞ」「何の話だ」「俺はお前を知っている。だが、お前は俺を知らん」ルミナスバグは九龍を、その瞳の奥を覗き込む。九龍は、彼の冷たいカメラに震えた。 11
「俺とお前はある意味で似た者同士だよ、九龍。何処かの誰かが勝手な理由で生み出して、訳もわからず世界に取り残された、時代の漂流者だ。その中で俺はオロチと出会い、お前はウェイランド サーストンと出会った」「オロチ…?」ルミナスバグは、嘲るようにカメラアイを瞬かせる。 12
「お前がウェイランドに生きる術と道を教わったように、俺はオロチに生の役割を教わった。荒覇吐。ク・リトル・リトル。そしてお前という『可能性』だ」「可能性…だと?」「本題に入ろうか」ルミナスバグは身を乗り出すと、再び雑炊を手に取った。 13
「篠田 明日香が行う粛清は、荒覇吐派とク・リトル・リトル派の探偵社を対象としている。これらの社は覇権を巡って戦争状態にあり、どちらが勝ってもニッポンに未来はない。故に粛清が必要とされる」「何でお前がそれを知っている」「錆探偵社はク・リトル・リトル派の中核だ。推測は容易いよ」 14
九龍は差し出された雑炊を食べる。ルミナスバグは続ける。「ク・リトル・リトル派の目的は、ク・リトル・リトルとその居城、絶対終末要塞ラリエーを以て、ニッポンという枠組みを壊すことだ。それで企業に飼い慣らされたニッポンが良くなると本気で信じているらしい。俺にはどうでもいいことだが」 15
「じゃあ何故従う」「ク・リトル・リトル派は、その悲願の為に陰謀を紡いできた。恐らく、荒覇吐派も同様だ。俺たちは…いや、お前は、最初からその陰謀の鎖の中にいる。「…」「月次だが、陰謀のいちファクターに過ぎない存在に全てが壊されるサマは…最高のショーだと思わないか?… 16
…九龍、お前は弱い。侮られている。だからこそ、ジャイアントキリングができるんだよ」ルミナスバグは空になった器を置くと、九龍の拘束を破壊した。同時、背後で別の扉が開き、病んだ光が差し込む。「俺がお前に授けたのは陰謀の根幹であると同時に、力だ。このツクバの地で存分に試すがいい」 17
「おい、ちょっと待…」九龍が光からルミナスバグに目を戻した時、彼は既に消えていた。「何だアイツ。人のこと弱いだ何だクソミソに言い腐ってからに」ぶうたれながら立ち上がり、数度拳を握る。己の中に巡るものを確かめるように。((力…可能性、か)) 18
『ニッポンを襲うあらゆる禍物から民草を守る力。アンタはそうなるべく生まれたんだよ。尤もウェイランドには、それがわからなかったみたいだがね』石動 朝子の言葉が蘇る。((アイツ、その後で荒覇吐がどうとかも言ってたな))つまり風切羽探偵社は荒覇吐派であり、その中心にも自分がいる。 19
九龍は目を伏せた。((朝子はク・リトル・リトルより自分たちを選んで欲しかったんだな。…本当に、なんで俺にも相談してくれなかったんだ))その時に浮かび上がった疑問が、思考を意識の奥へと追いやった。何故いがみ合う双方の中核が同じ…自分になる?二派の争いは、単純なものではないのだろう。 20
知らねばならぬこと、考えねばならぬことが山積みであった。その為に、まずは生き延びねばならない。九龍は外へと踏み出した。崩壊した街並みから顔を覗かせる煙が立ち込める死臭を天に送り出し、空に走るノイズを歪ませていた。病んだ光はあまねくツクバを照らし、散る黒を抱擁する。 21
遠く南方では、邪悪なる滅裂殺巨大戮タカアシガニロボットめいた威容が、黒をパーティクルじみて散らしながら、地に拳を打ち付けている。そこには明らかな目的意識があり、つまり何かが襲われているのだ。「とりあえず、あそこだな…!」九龍は真っ直ぐに巨体を見つめ、病んだ光の中に跳躍した。 22
────────────────
デッドラインカットは身を屈め、走り出した。放たれる銃弾をジグザグに躱しながら手近な機械に肉薄。血刀を振り上げる!「しッ!」「ピガガーッ!」正中線で断たれたそれを蹴り飛ばし、他の機械を巻き込む!「「ピガガーッ!」」その時デッドラインカットは既に他の機械を切断殺!「ピガガーッ!」 23
「ピガーッ!」被殺害機械ごと、六臂魔人機械がデッドラインカットを殴り殺さんとす!散弾めいて残骸が弾け飛んだ時、処刑者代理の姿は無し!…魔人機械の背後。彼は他の機械に向け、既に走り出していた。「ピガガーッ!」彼の後ろで、魔人機械は八つ裂きになって死んだ。「二度、遅れは取らん」 24
「ピガーッ!」高みより振り下ろされるアックス!「しッ!」横に捌きながらの蹴り…転身蹴りで迎撃!「ピガガーッ!」くの時に折れ曲がり吹き飛ぶ機械の向こうから弾幕…同時に、身を低く突っ込んで来た機械!「しッ!」デッドラインカットはバク転で横薙ぎのアックスを躱し、血刀で弾丸を弾く。 25
その時、デッドラインカットは近接機械と銃撃機械の二段構えで包囲されていた。「悪くない布陣だ。だがいいのか…?」刀から血が滴った。刀を振り上げる戦鬼。血の刃がずれ…セグメント分割された鞭となり、渦を巻いた!「そこは俺の最も得意とする間合いだ。俺のブーブス…『天網恢恢』のな!」 26
「「「「「ピガガーッ!」」」」」吹き荒れる刃嵐に、機械たちは成す術もなく惰弱スクラップと化した!瞬殺!瞬殺である!「脆い脆い脆いッ!」「「「ピガガーッ!」」」蛇腹の刃を揮いながら疾走するデッドラインカット。その暴威はもはや人間のそれではなく、災害じみていた…! 27
Variable Blood Weapon System!VBWS、ブーブスと呼ばれるこの武器はトモシビグループ火守がひとつ、AAA≪エースリー≫よりテストの為に貸与された品である!武器を使用者と接続、その血液を武器とするのみならず、血流加速により身体機能をクロックアップ。Wi-Fi戦士に匹敵する身体能力を与える! 28
それだけでなく、出力自体は数段落ちるものの、明日香の使うネオギア同様『アクセルトリガー』と呼称される異能の行使を可ならしめる。しかし宏樹はそれを必要とせず、身体機能の増幅力を極限まで高めることと、蛇腹剣を所望した。それこそが己の実力を最も発揮できることを、彼は知っていたのだ。 29
「PIGAGAGAGAAAAGH!」タカアシガニロボットが巨腕を揮い、滅殺パンチを放った!「しッ!」デッドラインカットは刀を横向け、それを堂々と受ける。地にバーンナウト痕を刻みながらノックバック。しかし彼には、些かの痛痒もあらず!何たる非凡なる爆発的耐久力!屋上縁で、遂にパンチは止まった! 30
再び刃がセグメント分割。タカアシガニロボットの拳に巻き付いた。「しッ!」その腕を思い切り引き…!「PIGAGAGAGAAAAGH!」南無阿弥陀仏!ノコギリめいてコンクリート製躯体を削り、その拳を切断した!ロボットは思わず腕を振り上げ逃れる。だがそこにはデッドラインカットが取り付いている…! 31
「しィィィやァァァッ!」蛇が巻き付くようにデッドラインカットは疾走した!それを追うようにタカアシガニロボットの腕に真紅の筋が奔る!そして…!「PIGAGAGAGAAAAGH!」KRAAAASH!巨大なる右腕が完全に破壊された!威容がよろめく。崩れ落ちる残骸を跳び、デッドラインカットは直上を取った。 32
デッドラインカットはいまだ蔓延り、滞留する力の流れを流し見ると、血刀を振り上げた。「奥義…!」天を衝かんと刃が伸びる。それは正しく、神話を弑さんとする処刑剣そのもの…!「…ラース・テンペスト!」怒号じみたシャウトと共に真紅が落ちた!真紅は巨体を、滞留する力ごと破壊する…! 33
「PIGAGAGAGAAAAGH!」最早、叫びとも言えぬ音が轟く。暴れ狂う力が巨体を100と8つに腑分けする。叫びは、激痛への抵抗のようであった。デッドラインカットは着地し、残心した。訝るように目を細める。手応えが弱い。まだ仕留め切れていない…! 34
見るがいい。巨体の断面より黒が沸き立ち、伸び行くその光景。黒は互いに絡まり、引き合い、千々に断たれた体を…繋ぎ合わせているではないか…!「PIGAGAGAGAAAAGH!」腕を振り上げ叫ぶ。それは、憤怒の叫びであった。デッドラインカットは刀を構えた。「篠田、何をしている…もう90秒だぞ…!」 35
……ズウン、ズズウン…ピガーッ、ピガガーッ…。遠く機械たちの叫びを聞きながら、明日香は基盤にハンダを押し付けていた。独特の臭いが立ち込める。この工場で働いていた大滝らにとっては慣れ親しんだものであり、しかしそれが逆に、日常とのミスマッチを際立たせていた。 36
「ねえ、ガロ」膝を抱えていた少年が、壁にもたれるようにしていたガロを見上げた。「大丈夫だよね?きっと、どうにかなるよね?」「なりゃしねえよ」答えたのはガロではなく、横になったままの大滝だった。「言っただろ?そいつにゃ何もできねえんだよ。自分を維持する電力すら生めねえんだぜ」 37
「…まあね」ガロは自嘲気味に頷いた。「だから彼女らがいるんだ。何とかする為に」「肝心な時に結局人頼みか。管理AIが笑わせるよ、全く」「父さん、それでもガロは来てくれたじゃん」「それでもだと?」大滝は大儀そうに身を起こした。彼の目には、怒りと疑念が滾っている。 38
「結局、コイツも機械だ。中央制御システムがバグった今、それとダイレクトに繋がってたコイツには何一つ信用できる要素がねえ」「そうなる直前に切り離したさ。どれだけの苦労をしたと思ってるんだよ」「怪しいモンだ。現にあのクソクソ機械野郎共が現れたのは、お前らが来た後じゃねえか」 39
「少なくとも、あなた方の置かれている状況は理解しているつもりです」ハンダの煙を浴びながら、明日香が口を挟んだ。「ツクバが地獄のような状況であることも。我々ハイドアンドシークは、ガロ殿とそれを終わらせる約定を交わしています」「ような、ねえ」大滝は背を向けた。「地獄そのものだよ」 40
…その時である!突如として壁が爆発した!開いた穴より黒が溢れ出す!「ぶぶぶぶぶぶぶぶ」だがそれは明らかに異音を放ち、何より指向性を持っていた。さながら屍肉を喰らわんと集る…蝿のような。「わああああッ!?」少年が叫ぶ。「健治!」大滝が子供を抱え、走り出した!「待て、そっちは…!」 41
ガロが制止する。「ふッ!」その脇をすり抜け明日香が跳躍。大滝らを突き飛ばした。「何しやがる…」KRAAAASH!明日香の横で壁が爆発した。「ぶぶぶぶぶぶぶぶ」溢れ出す黒。「え、な、あんた…」「ああくそッ!」ガロが頭を掻き毟った。「こっちだ!」ガロに続き走り出す。その後ろで黒が溢れる! 42
ぶぶぶぶぶぶぶぶぶぶぶぶ「うわッ!」「早く立って!」ぶぶぶぶぶぶぶぶぶ「右だ!」ぶぶぶぶぶぶぶぶぶぶぶぶぶぶぶぶぶぶ「段差に気を付」ぶぶぶぶぶぶぶぶぶぶぶぶぶ「早く、急いで!」ぶぶぶぶぶぶぶぶぶ 43
ぶぶぶぶぶぶ「おいガロ!何だコレは!」ぶぶぶぶぶぶぶぶぶぶぶぶぶぶ「触れたらヤバイ!いいから逃げ」ぶぶぶぶぶぶぶぶぶぶぶぶ「そこ右!」ぶぶぶぶぶぶぶぶぶぶぶぶぶぶぶぶぶぶぶぶ「やばい、前からも」ぶぶぶぶぶ「…!」ぶぶ「…」ぶぶぶぶぶぶぶぶぶぶぶぶぶぶぶぶぶぶぶぶぶぶぶぶぶぶぶ 44
ぶぶぶぶぶぶぶぶぶぶぶぶぶぶぶぶぶぶぶぶぶぶぶぶぶぶぶぶぶぶぶぶぶぶぶぶぶぶぶぶぶぶぶぶぶぶぶぶぶぶぶぶぶぶぶぶぶぶぶぶぶぶぶぶぶぶぶぶぶぶぶぶぶぶぶぶぶぶぶぶぶぶぶぶぶぶぶぶぶぶぶぶぶぶぶぶぶぶぶぶぶぶぶぶぶぶぶぶぶぶぶぶぶぶぶぶぶぶぶぶぶぶぶぶぶぶぶぶぶぶぶぶぶぶぶぶぶぶ 45
ぶぶぶぶぶぶぶぶぶぶぶぶぶぶぶぶぶぶぶぶぶぶぶぶぶぶぶぶぶぶぶぶぶぶぶぶぶぶぶぶぶぶぶぶぶぶぶぶぶぶぶぶぶぶぶぶぶぶぶぶぶぶぶぶぶぶぶぶぶぶぶぶぶぶぶぶぶぶぶぶぶぶぶぶぶぶぶぶぶぶぶぶぶぶぶぶぶぶぶぶぶぶぶぶぶぶぶぶぶぶぶぶぶぶぶぶぶぶ…………………………………………………… 46
…………………… 47
……明日香は、黒の中に佇んでいた。自分の外には何もなく、広大無辺な黒が広がっている。光もなく、しかしそれでも、己の姿を認識することはできた。憎悪に満ちた眼差しでこちらを見据える己の姿を。明日香は目を細めた。自分の目の前に、もう一人。自分が、いる。 48
「弱い者は奪われるしかない」眼前の自分は言った。「そう学んで強くなろうとしてきた筈なのに。私は一体、何をしてきたの?」「……」「パパやママ、お兄ちゃんを殺して私から全てを奪った下層の探偵。それよりも強くなるなんて掲げておいて、なんて体たらくなの」「……」 49
「ねえ、私。何を迷っているの?せっかく鍛え上げた憎しみを捨て、代わりに何を握るつもりなの?」闇の中に一組の兄妹が浮かぶ。滲み探偵社の兄妹の姿は、しかしすぐに消えて行った。「下層の探偵は奪うしかない。彼らだってそうに決まっている。…だから、私も奪う。そうでしょう?」「違う…」 50
「いいえ。私たちと彼らの関係は、あの日、班長に拾われた日に決定された。憎み、いがみ、その枠組みが」「違う…」「じゃああなたはどうしたいの?」「私は…」「復讐を果たしたい」「復讐…」「そう、復讐」「ああ、復讐…」「パパやママ、お兄ちゃんを殺した、その罪を」「贖いを…」 51
…「!」デッドラインカットの第六感が悲鳴を上げた!「しッ!」跳躍し、タカアシガニロボットの体を駆け上がり、さらに跳躍!高みから地を見下ろす。「…!」工場跡が凍り付く。立ち上る黒が呑まれ、氷の柱となって屹立する。「PIGAGAGAGAAAAGH!」タカアシガニロボットが氷から逃れた。 52
氷の獄を突き破り、何かが飛び出した。それは氷の鴉めいた面を被り、円い瞳を爛々と輝かせている。氷の鉤爪は鋭く空を裂き、揺らめく氷の尾は、獲物を求める龍の舌めいていた。長く艶やかな髪を振り乱し、それは……篠田 明日香は、戦場を睥睨した。 53
𝙰𝚂𝚄𝙺𝙰:𝙿𝚞𝚛𝚐𝚎 𝚝𝚑𝚎 𝙳𝚎𝚝𝚎𝚌𝚝𝚒𝚟𝚎
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます