Ep004 「「指導よろしくお願いします!!!」」

早くも週は明け、学校が再び始まった。


クラスには相変わらず心底楽しそうに会話する生徒が多かったが、どことなく不安そうな雰囲気が漂っている生徒、賭けに負けたことで騒いでいる生徒など様々だった。


テスト返却の日はいつもこうだ。

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「合計点いくつ?」

「376!」

「高ーい!」

「負けたー!」


全ての科目が返却された放課後の教室ではそんな声が響いていた。

(帰ろうかな。)

そんな風に思い荷物を纏め始めたが、何故か返却されたテストが見当たらない。

後ろを確認することもなく

「許可は取ってよ、米島。びっくりするから。」

と言い、後ろにいるであろう男子生徒に苦言を呈す。

 すると1つのみならず複数の声が帰ってきた。

「いや、相変わらず高ぇな。なんだよ五教科合計484って。」

「小宮くんって塾とか行ってた?」

「いや、行ってないよ。」

 取り敢えず師匠のことは直隠しにすべく白を切る。

「毎度のことだけどテスト期間も全然焦ってるようには見えねえよな。なあ?」

「全然焦ってるよ。家帰ったらやってるだけで」

マズイ。日頃の行いが出た。

「誰かに教えてもらってるんじゃねぇの?俺も教えてもらいたいぜ...」

「いやいないって」

「でもさぁ...」

桜田さんはそこで一度言葉を切り、他の人には聞かれないように声をひそめると、

「昨日のもさ、普段の小宮くんからは想像できないぐらい強かったでしょ?もしかして師匠みたいな人がいるんじゃないの?」

「昨日?何があったんだ?」

「実は...」

そのまま桜田さんは米島に昨日の夜の事件を話すと、

「そんなことが...確かにいそうだな」

...もう限界だ。大人しく白状しよう。別に会いたいってわけでも無さそうだし。

「...会いたいの?僕の師匠に」

「おう」

「うん」

そんな...


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「で、バラしたと。」

「抵抗不可能でした」

「まあ仕方ねぇな。会うぐらいなんだろ?別に良いぞ」

僕は二人より先回りし師匠に弁明&許可取りをしていたのだ。

そして家の前で待っている2人に話をしに行った。

「どうだったの?」

「どうだった?」

「許してもらえたよ。家に上がっていいってさ」

3人揃って家に上がり廊下を進んでいく。

「どんな人なんだ?」

「それは...説明が難しいな」

「まあ会えばわかるんじゃ...」

そう桜田さんが言った直後、3人の目に新聞を読み込んでいる師匠の姿が目に入ったのだが、その直後、桜田さんはそのまま意表を突かれたような声を出した。

「...達叔父さん?」

「...ん?」




「先生って桜田さんの叔父さんだったんだ。へぇ...」

「知って何になる?」

つい漏らした言葉をそう冷淡に切り返される。

「で、2人共急に会いたいってどういうことだ?小宮の師匠が誰か気になった、ってだけじゃないんだろ?」

師匠は新聞から目を離して彼らの方に向けながら目的を尋ねる。

直後、

「俺を弟子にしてほしいんです!」

「私に勉強を教えてください!」

...ん?

「...ん?2人共もう一回聞いていいか?」

どうやら同じ疑問を抱いたようだった。

「勉強と超能力を教えてほしい!」

「受験勉強を手伝って欲しいんです!」

...聞き違えじゃなかったらしい。

「...弟子を増やせと?小宮オマエ...」

「僕は知らなかっただけですよ!道中聞いても受け流されたし」

「なら強引に聞いとけ」

「えぇ...」

謎理論に返す言葉が見当たらない。

だが師匠の心境からしても難しいのだろう。

 最も穏便なのは2人とも断る、ということだ。しかしこれをしようものなら桜田さん経由で実家から問い詰められる。

米島だけ断ればそれは米島が不平を訴える。

意を決したのか、師匠は渋い表情をしながら

「...師匠呼びはするなよ。それと修行は明日からだ。親には事情を説明しとけ」

とだけ言って再び新聞に目を落とした。

二人はそれを聞くと、

「「指導よろしくお願いします!!」」

と言った。


その後しばらく修行の内容などに関する質問などを4人で行っていたのだが、師匠は少し考えるような素振りを見せた後、2人に質問をした。

「超能力と勉強を...ってことはあれか?超能力の特待を狙ってんのか。行きたい所によって全然方式が変わるからとりあえず現時点どこを目指している、とかはあるのか?小宮は...」

「天川学園を目指します」

「と言ってるが...」

...師匠に良いように使われた。

桜木さんはそれを聞いた後、少し間をおいて

「私も天川学園を目指しています。教育も素晴らしいので」

と答えた。一方米島は、

「えぇ?天川っていうとめっちゃ頭良いじゃねぇか...うーん俺は...」

と悩んでいたので

「行けるよ!今ならきっと間に合うし!」

と勧めたがまだ踏ん切りがつかない様子を察したのか師匠が

「そうだな。真面目に続ければ確実に行けるぞ。そうでなくとも天川を目指していれば他の学校は確実に行けるぞ」

と言い、米島もそれに影響を受けたのか他二人の同調圧力のせいかわからないけれど

「じゃ、じゃあ俺も目指します!」

と威勢よく答えた。

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