前章
Ep001 それは突然に
普段はガヤガヤと騒音が生まれる教室でさえ、この日ばかりはピリピリと張り詰めた空気に変貌する。
なにせ今は定期試験の真っ只中。しかも最終科目の数学で、残り14分だ。
カリカリという音がより激しくなる中、一人の男子生徒が机に突っ伏していた。
(あとは時間がすぎるのを待つだけ、この時間が一番無駄なんじゃないかな...)
そう念じながら小宮
キーンコーンカーンコーン
試験終了のチャイムが鳴った。監督役の担任に自分たちで答案を回収して渡しに行った。そして号令が終わり、先生が扉を締めた直後____
「「終わったぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」」
「「よっしゃぁぁぁぁぁぁぁ!!!」
という声が響いた。
みんな相変わらずだなぁ...
「いつも通りだな...」と言いながら、友人・米島 健一が近寄ってきた。
「でもちょっとうるさすぎるかなあ...」と呟くと
「違ぇよ。お前のことだよ。余裕ありすぎるんだよな。いつも」
などと言われてしまった。
「?どういうこと?」
そう聞き返すと、呆れるように彼は肩をすくめる。
「ま、お疲れ様。」
「お疲れ様」
軽く挨拶だけ交わし、帰りの用意を進める。
その数分後、帰りのHR《ホームルーム》が始まり、担任の良くも悪くもいつも通りの言葉を適当に聞き流そうとした。
だがその中で、彼は
「そろそろ志望校を考え始めたほうがいいぞ。この夏からしっかりと高校受験に向き合って行けよ」
と言った。
(志望校かぁ...どうしよう?僕の今の実力ではどのあたりに行けるのかなぁ?...全く見当もつかないや)
「やっ!」
「うわっ!?」
一人で歩いてると思ったところで急に肩を叩かれ、つい声が出てしまった。
「そんなに驚くことないじゃん?」と肩を叩いた張本人、桜田
「で、なんか考え事してたんじゃないの?」
「あ、ホラ、帰りのHRの時に先生が『志望校を決めた方がいい』って言ってたでしょ?そのことで考えてたんだよ」そう返すと「あー」と言いながら桜田は納得する。
「超能力って結構人によって意見分かれるし、できれば私は超能力の学習ができる所がいいと思うけど。」
「...なるほど」
超能力はあのバケモノたちに対し非常に有効であったり、社会に貢献できたり、と様々な恩恵を与える。そのため超能力者は非常に大切な存在とみなされている。
また超能力者はその超能力の将来性から様々な優遇を受けることができる。それゆえに超能力に対し反感を抱くものも一定数存在している。
前者も大変だが、後者ともなると余計大変だろう。なら桜田の言う通りかもな。
...詳しいことは詳しい人に訊いてみよう。
「ありがとう、教えてくれて。」
「どーいたしまして。」
その後色々な雑談をした後、
「じゃあまた、来週!」
「じゃあね」
と挨拶し、家へと帰った。
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「うおっ!」
腹パンをモロにくらい、僕は後ろに吹き飛ばされる。
「ずっと反応は善くなってるぞ。ガードはもう少し硬い方がいいがな。」
「はい!」
そうして再び立ち上がろうとした直後、僕は何もないはずのところで前につんのめって倒れてしまった。
師匠は少し心配そうにしながら
「少し休もう。危ねえから。」と言った。
僕は近くにあった椅子に腰掛け、持っている水入りのペットボトルを飲みながら師匠に話しかけた。
「師匠」
「何度言えばわかるんだ...」
「黒沢先生、少し相談があって...」
そう切り出して先程の相談をした。
「進路か。ちょうどお前にその話をしようと思っていたところだ。」
そう言うと黒沢先生は一度地下室を出て、再び入ってきたかと思えば僕にパンフレットを渡してきた。
「これは俺が今勤めている天川学園ってとこのパンフレットだ。参考にはなるだろうし取り敢えず読んどけ」
「天川学園って...」
今の日本の最高レベルじゃ...
「おう。日本で最初に超能力者育成プログラムってのを導入したとこだ。小宮なら多分何もせずとも入学できると思うぞ。」
「......。」
多分っていう言葉は怖い。得も言えぬ不安感に駆られる。
「そろそろ再開するぞ。」
「はい!」
「言っとくが、超能力者育成プログラム導入校だと超能力者には実技が課されるかもしれんからな。そのことも考えとけよ」
「わかりました!」
そして練習を始めようとした直後、
《警報-警報-市中心部に
「...お前がどんだけ強くなってんのか試してやる。ついてこい」
そういうと黒沢先生は僕を修行場の外に連れ出した。
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