(名前変更しました)超常戦記

@senryu-

Ep??? 雨が降りしきる戦火の跡地で

6月_______。

ザァァァァァァァァァァァァ

まるで人に行動されたくないのか、やる気を削ぐような雨が絶えること無く降っている。だがその男は傘すらささずに辛うじて壊れていない道路を歩いていく。まだ陽は残っているはずなのに、あたりは仄暗くなっていた。

当たりを見回せば、真っ黒に炭化した民家、会社、商店などが多数散らばっていた。

男は暫く歩き、そして目的の場所の跡地に到着すると深い溜め息をついた。

「思ったよりも酷いな。協会支部の建物まで吹っ飛んでやがる。」

彼は普通の人間ではない。

世界の人口のおよそ3割が保持している科学を遥かに超越した能力、

超能力を保持している。

彼は協会より依頼を受け、一人でも多くの生存者を見つけんとするために、滅びた街へと足を運んでいたのだ。

「まあ、探すか。とっとと帰って映画観てぇし。」

そうボヤき、再び街中を歩き始めた。



それから7時間は経った頃だろうか。

彼が瓦礫の下に潜り込んでいる時、何者かに後ろから

「!?」

彼は一瞬で臨戦態勢を整え、射線を切るためにさらに下へと潜り込む。

(未確認生物対策に銃を一般人が所持しているケースはあるが...本当に一般人か?)

彼は事前に知り得た情報を元に思考を巡らせる。

(瓦礫の下で焼死体ではない、外傷によるものの死体が複数あった。首から先が吹き飛ばされているモノ、胴体の傷が原因で失血死したと思われるモノ、両足が瓦礫に押しつぶされているモノ......あって4,5体とはいえ少し冷静になれば気づけたのではないか?未確認生物が暴れた後にしちゃあ不思議な死体だってことに......。)

彼はそれらの前提から結論づける。

殺人鬼キラーね。物騒じゃねえか」

そして僅か一瞬での元に到着し、強烈な腹パンを叩き込んだ。

「ぐぅっっ!?!」

そのまま首を身体を拘束しようとした直後、とんでもない事実に男は気づいた。

「...子供ガキだと?なぜ...?しかも超能力保持者じゃねぇか...?」

だがすでに時遅く、その子供は一声呻いたあと、鳩尾を抑えて倒れてしまった。

(やっべ。そもそも隠れる必要なかったじゃねえか。そもそも俺ダメージ受けてねえし......真正面から向かっていけば......。)

男は急に申し訳なくなってきて、その子供を抱えたまま雨の当たらない所に移動した。



数分後......


「「すみませんでした」」

辛うじて残った屋根のある建物の下で男と少年が互いに謝罪し状況を説明し合う。

聞けば、その少年は彼らを殺したわけではなく、その騒ぎに乗じて暴れていた窃盗団を追っていたようだ。その最中、怪しき人物を見つけて撃ったそうだ。

(...何も悪くなかった。俺が一方的に悪いな。コレ。どうしよう。話題を変えねば。)

男はそのことに苦悶の表情を浮かべ、少年は縮こまっている。

40秒ほどの沈黙の後、

「...話題は代わるが、盗人はどうしたんだ?」と男が訊いた。

少年は酷く沈んだ表情と声で、

「......逃した」と答えた。

「そうか...もしやなんかあったのか?」と男は訊ねた。

少年は最初話すことを躊躇っていたようだが、意を決したのか感情を荒ぶらせ、

「一昨日父さんが死んだ!あんなに優しかったのに!なのに、あんな化け物が火を吹いて全部燃やした!それだけじゃない!あの泥棒たちは僕らを襲ってきて...それで......兄ちゃんが...殺されたんだ」

最初は怒って話し切るつもりだったようだが、最後が止めになったみたいだ。何度も突っかかり、涙声になっていった。

「そいつらは...『やっぱ能力者なんて要らねえんだよ』『こんなときに何もできねえじゃねえか』って言ってた...僕は...何も...」

「それ以上自分を責めないほうがいい。辛くなるだけだ。」

男はそれだけ言って言葉を切る。

(反超能力派の人間だったのか...あの言葉はこの年頃の子供には刺さるだろうな...しかも先程の銃撃からして恐らく攻撃性の高い能力だ。彼をより辛くさせるだろうな...)

男は掛ける言葉も見つからず、再び黙り込んでしまった。

するとその少年は突拍子も無いことを言い始めた。

「なあ...どうすりゃそんなに強くなれんだ?」

「ん?そんな強かったか?」

「めっちゃ強かった!眼の前をじっと見てたはずなのに、気づいたら前にいて...しかも周りはなんともなかったし...」

「そりゃどうも...」

「そうだ!俺を弟子にしてくれ!」

「...は?」男は目を見開いた。

「そうすりゃ強くなれるんでしょう?師匠」

(なんとまあ強引なやつだな...だがまあ、嫌いじゃないな)

「...俺のやり方についてこれたらな?俺も教鞭を取ったことはあるんでな」

その言葉に少年は顔を輝かせる。

「よろしくおねがいします!師匠!」

「...師匠はやめてくれ。」

これが男と少年との出会いであった。




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