金色の公衆電話

杉本蘭帆

第1話

とある小学校に通うこの少年、豊田江(トヨタ・ゴウ)。


彼は田舎から都内に引っ越してきて、この学校に転校してきた。


しかし色々とクラスに馴染めず、次第にイジメられるようになっていった。


唯一心の拠り所は保健室で、今のところ気になる人は保健室の先生くらいと安直である。


そんなある日、彼は偶然『金色の公衆電話』を見つけた。


「これって……最近学校の噂で聞いた、『金色の公衆電話』じゃ……」


因みに金色の公衆電話とは、受話器を取り10円玉を入れ“好きな人”の名前を言うと、両想いになるようにしてくれるという話だ。


ただし、入れる10円玉は必ず“錆び付いた色の”にすることが条件だという。


「10円玉あったかな?あ、あるけど……ま、いっか」


彼が財布から取り出した10円玉は綺麗な色ので、錆びが少ない。


だが彼は、真相を確かめるべく電話ボックスに入り受話器を取った。


そして、綺麗な色の10円玉を入れ名前を言おうとした瞬間、突然公衆電話が眩しく光りだす。


あまりの眩しさに目を閉じ、落ち着いた頃に瞼を開け彼は喫驚した。


するとそこには、上下黒いスーツに金髪を一つ結びした男性が公衆電話の前に立っていた。


「私を呼んだのは、オマエか?」


「え?はい。そうです」


「そうか。ところで、オマエが殺したい奴は誰だ?ソイツの名前を教えろ。一人だけなら、私が……」


「待て待て待て待て待てッ!!何でそうなるのッ!?」


思ってた話と違うため、困って会話を止めようとする江。


すると男性は首を傾げ、金色の公衆電話を指差す。


「知らんのか?この公衆電話に入れる10円玉によって、内容が変わることを」


「えッ!?」


「錆び付いた10円玉なら両想いや縁結びだが、綺麗な色の10円玉なら“相手を死なせる”とか“相手を殺す”とかの……」


「何それ、聞いてない」


男性の話を怖くなったのか体が震える江。


それを見た男性は、まさかと思い彼に訊ねる。


「もしかして、間違い電話か?」


「うん。ごめんなさい」


「はぁ。ま、もし消したい奴がいたらいつでも言ってくれ。一人だけなら殺ってやろう」


「ありがと。ねぇ、また遊びに来てもいい?オレ、学校に居場所あんまないから」


苦笑しながら男性に訊ねる江を見て、腕を組み少し悩む男性。


そして決めたのか、彼は江の方を見て微笑みかける。


「ああ、かまわん。ところでお前、名は?」


「オレ?豊田江(トヨタ・ゴウ)だよ」


「江か。私は金色(カナイロ)だ」


「よろしく、金色ッ!!」


こうして、金色の公衆電話の怪異・『金色』と仲良くなった江。


それからというもの、江は平日必ず金色に会いにその場所へ通っていた。


金色も彼が持ってきたチョコを初めて食べたり、談笑したりと楽しんでいた。




そんなある日、もうすぐ日暮れだというのに江が来ない。


おかしいと思いつつ待っていると、公衆電話に10円玉を入れる音がしたため電話ボックスに向かった。


するとそこには、怪我をして出血した江の姿があり金色は焦燥する。


「江ッ!!どうしたんだッ!?」


「来る途中に、怖いお兄さん達に絡まれて……でも、頑張ってきたよ」


「もういい、江ッ!!わかったからッ!!ソイツらの名前わかるかッ!?」


「確か……河合って、のはわかる。後は……ごめん」


そう言うと江はその場で倒れ、意識が朦朧とし始める。


それを見た金色は、応急処置で彼の体に憑依する。


「江、お前の体借りるぞッ!!」


そして江に憑依した金色は、彼の体を止血すると電話ボックスを出て“河合”という奴を探しに街へ繰り出した。




数分後、街を歩いていた金色は突然不良に声をかけられた。


「テメェ、さっきのガキじゃんッ!!まだいたのかよ?」


「河合ってのは……お前か?」


「あ?そうだけど?」


「そうか……手間が省けた」


そう言うと金色は、河合を直視すると深呼吸して口を開く。


「ベト」


「うわッ!?」


金色が逆さ言葉を発した瞬間、河合は突然空に放り出される。


それを周りの取り巻きも喫驚して空を見上げ心配する。


「ロチオッ!!」


「ーーッ!?」


次の瞬間、凄まじい物音とともに空から地面に叩きつけられる河合。


取り巻きが現場に到着した時には、既に悲惨な死体へと変わり果てていた。


「ひぃッ!!助けてッ!!」


「化け物ッ!!」


取り巻き達が立ち去った後、金色は病院へ行き到着するとその場で倒れ憑依を解いた。


それに気付いた看護師達に後を任せ、金色は病院を出ると自分の居るべき場所へ帰った。




数日後、江は電話ボックスに行きいつものように行動する。


唯一いつもと違うのは、10円玉が錆び付いた色ということ。


そのせいか、目の前に現れた金色は女性の姿をしていた。


「好きな奴の名前を言いな。縁を結んでやる」


「うん。好きな人の名前は……金色、君だよ」


「は?怪異に惚れるとか馬鹿か?後悔するぞ?」


「しない。金色といられるなら、きっと楽しいから」


そう言いながら真っ直ぐな目で金色を見つめる江。


彼の真面目さを気に入り折れたのか、金色は江の小指に赤い糸を括り付ける。


「なら誓え、私と来る……と」


「わかった。好きだよ、金色」


こうして江は金色と両想いになり、赤い糸で結ばれたのであった。


その後、江も金色と同じ怪異の仲間になることになるが、それはまた別の話。

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