第10話 曲がり尻尾のグリグリの幸せ
グリグリは淡い灰色の猫でした。上半身は筋肉質でしたが、下半身は華奢でした。トレードマークは、まさにステッキのように曲がった尻尾で、いつも自慢げに揺らしていました。
グリグリの好きな遊びは、庭の松の木に登ることでした。高いところから、世間を見渡すのは、随分気分の良いものです。グリグリをいつも踏んづけかける大きな人間達が、まるで豆粒のように小さく見えると、胸がすく思いでした。グリグリの友達のおデブのぶち猫や、やんちゃなサバトラ猫や、すました黒猫がどうしているか様子をうかがうのも愉快でした。
けれども、グリグリが一番楽しみにしていたのは、松の木を降りる時間でした。グリグリは、前足の力で松の木のてっぺんまで行くことはできても、一匹では地上に帰れないのです。ですから、この松の木のある庭を持つ小さな家の持ち主が、毎回グリグリを降ろしてくれるのでした。
「やあ、グリグリ、今日も木登りが上手だね」
なんてグリグリを誉め、そっとグリグリを抱いてくれる背の高い家主については、他の人間とは別格だと、グリグリは感じていました。家主の胸の中だと、グリグリはまるで母猫に抱かれる子猫のように安心できます。この時には、毎回グリグリの立派な尻尾は、しっかり家主の腕に巻き付きつくのでした。
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