第5話 俺の推しはあの娘だけ

 ああ、神様、あんたはどうして彼女をこの世に送り出したんだ? 

 彼女は細身の長身で、透き通る程に肌の色が白く、瞳は栗色で、グループの中でもビジュアル担当と言える美貌の持ち主だった。俺はユーチューブで彼女の所属するアイドルグループの動画を何気なく見た途端、彼女の虜になった。

 彼女は歌やダンスは他のメンバーに比べ、そこそこだったが、美しさに加え独特の愛嬌があり、生まれながらにスター性とカリスマ性を持っていた。ファンミーティングやライブに行くことは引きこもりの俺には難しかったが、俺は俺一人で俺の推しの為に、心から応援した。それは、俺の人生にとって至福の時間だった。

 彼女は自由奔放な行動やきわどいファッションをすることが多かった。俺からしてみれば、それすら魅力的だったが、一部の人々はアンチとなり、彼女を誹謗中傷した。その暴言はSNSやネットの書き込み、ニュースやワイドショーなどを通じて彼女の耳にも届いたらしい。そして、とうとう、彼女は自ら命を絶ってしまった。俺は生きる道標を失った。

 ああ、神様、あんたはどうして彼女をこの世から連れ去ったんだ?

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