第34話

side:しゅが


 今日も今日とて騎士団の修練場で槍を振る。このクエストの終わりはわからないが、こんなの前作からいつものことだ。

 だから私は好きにさせてもらう。王国騎士団と名がつく以上、私はここを守りたい。


 基礎の型を終わらせると仮想敵を見立てて空中に槍を突き立てていく。私の持つ自分の身長よりも長い真っ赤な槍はありとあらゆる魔法を弾く。

 しかしながらいつも思い浮かべる仮想敵は私の攻撃をすんなりいなしていく。はずなのに、どうしても勝てるビジョンが見えない。


 何度も本人と手合わせしたが、手を替え品を替えぼこぼこにされる。私だって弱いわけじゃないはずだが、何をしても最適解を叩きつけられる。


 そんなことを思いながら今日も仮想敵に負けてしまう。

 ふと誰かの気配を感じ、呼吸を整える。

 いつもは1人の修練場に今日は珍しくお客さんが来たようだ。


「教官は毎日ここで槍を振っているんですか?」


 若い騎士が声をかけてくる。彼は私が来る前の騎士団でも1人修練を重ねていた。私がクエストを受注して発破をかけた今でも、他の騎士と比べて頭一つ抜きん出ている。


「えぇ。みんなが帰った後に少しだけね。」


 私の大槍を見ると彼は意を決したように口を開く。


「良ければ僕に稽古をつけてもらえませんか!」


 突然のことに戸惑いを隠せない私は、魔力の流れを止める。動力源を失った赤い槍は青い光を放ちながら消えていく。


「訓練ならさっき終わったけどどうしたの?」


「教官が来る前から考えると今の第七部隊は強くなりました…僕も実感できます。でもここで頭打ちになるのが嫌で、教官がお忙しいのは承知してるんですが…」


 驚いた。さすが以前の騎士団で1人進んでいただけはある。彼の言った通り、今の第七部隊は以前に比べると天と地の差がある。

 だがしかし、飽くまで騎士団の枠に留まるのだ。


「いいわよ。訓練の時ほど優しくはしないけど。」


 そう言って微笑むと、私は《ウェポン・クリエイト》を発動させて若い騎士、フータが持つ槍と同じものを構える。


「私の師匠兼ライバルに倣うなら、」


 言葉を切って彼を見据える。


「どこからでもかかってきなさい。」

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