第23話
「まぁレイ爺が膝をつくわけないよな。」
俺は深く息を吐きながらライラに水を向ける。
「あの程度じゃまだまだですね。本気ではありましたが、全力じゃなかったですし。私とやった時はもっと意味不明な攻撃がたくさんありましたよ。」
「まぁでも無刀引き出せたし十分だろ。あのその辺で買ってきた剣でぼこぼこにされた日には立ち直れんぞ。」
「確かにそうですね……。お値打ちの剣でさえ、彼にかかれば名剣ですからね。あとあの無刀、範囲が見えないのが単純に強いんですよ。何度あれに悩まされたか。」
そろそろ2人が来るというのに、俺たちの間に緊張感はない。レイモンドと2人の戦いを観察しながらあーだこーだと話している。
「聞きのがしてたけどライラってレイ爺と戦ったことあるのか?」
「ありますよ。いつも私たちが撤退してましたね。もうあの人1人で国守れるんじゃないですか?」
「本当にできそうでなんとも言えねぇんだよなぁ。うちの隊は奇襲とか遊撃がメインだったからあんまり守備はしてなかったし。」
話しているうちに《身体強化》を掛けた目が、こちらに向かってくる竜の2人を捉える。
「そろそろ行こうか。しっかり
よいしょ、と声を上げて立ち上がり、服に着いた砂を手で払う。こんなところまでリアルなんだから。
「えぇ、確かこれ生配信されてるんですよね。今の私たちがどんなもんか、見せつけてやりましょう。」
「えらくやる気だなライラ。」
「そりゃあもう。500年前とは違うことを見せるチャンスですからね。」
そう言うとライラはシュッシュとシャドーボクシングする。こういうおちゃめな所もあるよな。酒が入った時とか。
竜祭が落ち着いたらまた2人でご飯でも行くか。べべ、べつにライラと2人っきりになりたいわけじゃないんだからね!?
しょうもない考えを頭を振って散らすと、新調した槍を取り出して戦いに備える。
ライラもどこからか銀色の細剣を取り出すと、使い心地を試すかのように振っている。前あった時あんな剣持ってたっけ?
そうして俺は散々配信で見てきた2人に声をかけるのだった。目の前で驚きの表情を隠せない、真っ黒な髪に紅い瞳をした少女を見て、いたずらに成功したような笑みを浮かべて。
「久しぶりだな、フィオ。」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます