第20話
びっくりした、少年Kいたのかよ。あいつは魅せプ大好きマンたちのトップである。またガン・ダンスしてたな。昔より弾の量増えてたし、たぶん何かしらのスキル積んでるなあれは。モンスター相手だとそんなに使い道ないのに、対人戦だとぶっ刺さるんだよなぁガン・ダンス。
貴族の子供みたいな短パンとシャツで穏やかな話し方する癖に、魅せプできるとわかった瞬間テンションが上がってそれ以外どうでも良くなるんだよな。
しかもあいつの銃からブレスみたいなのでなかった?かっけぇ〜!俺も撃ってみたい!
ひとりでテンション上がってたら、横のライラに白い目で見られる。
「ジン、緊張感がないですよ。そんなにソワソワして。」
「久しぶりにあいつのガン・ダンス見たんだ。テンションの一つや二つも上がるさ。ライラはあのクソ生意気な少年のこと知らないのか?」
「私は初めて見ましたね。彼は先の戦争に参加してましたか?」
「あー、そうか。あいつ魅せプ極めすぎて前線にはいなかったんだよなぁ、そりゃ知らないか。」
「私的には、二丁の拳銃で武器を絡めとったのがグッと来ましたね。私が武器を弾くのと似たものを感じました。」
心なしかライラも楽しそうである。やはりフロンティアのやつらが戦ってる姿を見るのは楽しい。自分ならこうするってのを軽々と飛び越えていく。
「そう言えば彼も言ってましたが、私たちの前は誰がいるか知っていますか?騎士団がどうとか知り合いとか言ってましたが。」
「俺も分からないんだよなぁ。竜の里に飛ばされた時にもっと周りを見ればよかった。冥龍と話し込んでしまったんだよ。」
騎士団の誰かで少年Kと知り合いってことはフロンティアの誰かか?騎士団も結構大きな組織だからなぁ、隊長級にもNPCとプレイヤー両方いたし。
「ライラ、さっき天龍と話した時にスキル解放されたか?」
「えぇ、ということはあなたも?」
「あぁ。これ人間と魔族が使えてしまうのちょっとずるい気がする。」
「ですよね…。でも貰ったからには使いたいですし、スキルの説明が無さすぎてどうなるか分かりませんね。」
「せっかくだから向こうが本気出せた時にしようぜ。多分力の解放とやらもあれで終わりじゃないはずだしな。」
ライラと話していると、傷の癒えた2人が先へと進んでいる様子を見る。多分今頃ミラー配信とかしてる奴らは盛り上がってるんだろうな。アーカイブ見とくか、寝る前に。
これは飽くまで、飽くまで試練である。戦争じゃなければ、私怨のこもった諍いでもない。主人公はあの2人なのだ。
俺達にはそれぞれの龍から課された使命がある。竜祭とは新しい龍の誕生を祝うものである。どうか自分たちとの戦いを終えた2人が龍になれますようにと、そう願ってやまない。
俺たちプレイヤーは旅人であり、この世界に住んでいるわけではない。名前を歴史に刻んだとて、ヒストリアの一部となったとしても、俺たちはこの世界にお邪魔しているのだ。
前作からそうだが、ありとあらゆるイベントはプレイヤーを主人公としない。あくまで現地のNPCをお手伝いするのが俺たちの仕事である。
それはそうとして、俺たちだってこの世界に生きているつもりでいる。こんなに楽しいイベント、逃すわけがないんだよな。攻略組、フロンティア、各クラン、パーティやソロプレイヤーが全員そう思えているからこそ、前作の最後はあんなに綺麗だったのだろう。
竜の2人が次の相手と対峙した瞬間、俺たちは2人して声を漏らした。
「こんなところであんたが出てくるのかよ。俺たちの出る幕ないんじゃね?」
「えぇ……。この人より私たちが先でしょうに。あの2人勝てないんじゃないですか?」
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