第12話
場所はデュオルの居酒屋。人の住む町という感じのウノスと違って冒険者風のNPCやプレイヤーが多い。目の前には酒で顔を真っ赤にした美人な魔族が座っている。
「だから〜〜!今まで剣ばっかり使ってたのに突然槍なんてずるいじゃないですか!」
テーブルをバシバシと叩きながらライラはだる絡みしてくる。凛としてれば綺麗なのに、こう見ると年相応に見えるな。
「だから悪かったって。俺だって本気で勝ちたかったんだから。」
「それはわかってます!その腕だって、前は私が切ったのにいつのまにかまた無くなってるし!」
「俺だってわざと左腕なしで生きてるわけじゃないからな。」
ライラがどんっ!と置いたジョッキからビールが溢れる。つくづく、一緒に酒を飲むのはほどほどにしようと思うのだった。
聞くところによると彼女も俺と同じく〈ウェポン・クリエイト〉を取得したらしい。俺が意図的に取得したのに対し、彼女は自然にスキルが発生したと言い出した。なんでも彼女の剣の腕に武器自体がついていけず、何十本も折ってきたらしい。初めて聞いた時は思わず笑ってしまった。
「そういや俺がログアウトしてる間はどうするんだ?」
「んー、ソロでいろいろたんさくするか、私もログアウトします。」
「そうか……ん?ログアウトできるのか?」
「できますよ。いつかこの話もできたらいいな〜。まだ言っちゃだめって言われてるんです。」
えへへと笑う彼女に見とれる。やっぱり酒が入ると幼くなるな。
「ジンは大学?とかいうのに通ってるんですか?私もいつかジンの世界に行ってみたいなぁ。」
「どうなんだろな、諸々が突然過ぎて理解が追いつかん。いつか俺の世界も見て欲しいけどな。」
「今は私とこの世界を楽しめばいいんですよ。あぁ、500年前に望んだ未来がこんなにすぐに来るなんて……。」
そう言うと彼女はテーブルに突っ伏して寝てしまった。おい、よだれ垂れてんぞ。こうやって見るとかつての魔族12将、1vs1最強のボスとは思えないな。俺がAiPCと、しかも前作ボスと一緒に行動してるなんてフロンティアのやつらに知られたら一巻の終わりだ。煽りの天才のあいつらに見つからないよう目立たないようにプレイしなきゃな。
とりあえずライラを宿屋のベッドに運ぶと、俺はログアウトした。明日は朝から講義だ、めんどくせぇ。しかし単位落として再履修になるとバイトの時間も減るし、背に腹はかえられん。
ーーー
あぁ〜疲れた。もう動けない。今日のバイトは中々にハードだった。個人経営の小さなカフェになんであんなに一気に客が来るんだよ。
月曜日だというのに夕方から夜にかけて満員になったカフェで俺はあくせくと働いていた。まかないという形で晩ご飯も食べられるし、料理も教えてもらえるから大変助かる。助かるが、それと忙しくて疲れるのはまた別の話だ。
家に着くとシャワーを浴びてベッドにダイブするとメガネ型のVRグラスを着ける。明日は昼から講義だし朝まで続けて最前線まで行けるか?
『ヒストリア』にログインすると、前回ログアウトした宿屋のベッドから身を起こす。隣の部屋からは物音がしない。ライラは外だろうか。
俺はステータス画面を開いて気になってるスキルにポイントを振ると、SNSを流し見する。AiPCについては誰も話していなかった。まだ見つかっていないか、俺と同じように隠しているかだな。
最近はテイマー系のスキルが流行ってるらしい。あ、いいな。俺もでかいもふもふに囲まれて街を歩きたい。
読み進めていくと、ワールドクエストについての記事を見つける。どうやら各地に龍が現れて推定第3の街があるエリアに徐々に集まっているらしい。冥龍もいるんだろうか。あいつなんてったってレベル400超えだったからな。俺含むその辺のプレイヤーとか瞬殺だろ。
掲示板で「竜祭」という単語が目に入る。あーこれ知ってるやつが洩らしちゃったタイプか。幸いこの世界に詳しそうなやつ、というかこの世界出身のやつが近くにいるから聞いてみるか。よく考えれば今の状況、ストーリー攻略におけるチートだよな。
ネットサーフィンもそこそこに宿屋の外へ出ようとすると、なにやら声が聞こえて来た。
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