第11話
「俺が確かにとどめを刺したよな?」
「えぇ、間違いなくあの時私はあなたに心臓を貫かれて死にました。」
ライラが言うには、転生したそうだ。
「あの後、私の魂は空に昇っていきました。あぁ楽しい人生だったと思っていると、声が聞こえたのです。まだ生きたいかと。それからその声から沢山の話を聞きました。ジン、あなたと私が違う世界に生きていること、私はあなたとは生物としてすら異なること、あなたは死んでも向こうの世界のあなたがいなくなる訳ではないこと、私は『データ』だったこと。」
そこまで一息に話すと彼女は少しの間口を閉ざす。俺たちはベンチに座ってと心地良い風に身を委ねていた。
「私は願ったのです、またあなたに会いたいと。その声には忠告されました。あなたがまたこの世界に来るかはわからないと。それでも私は……。」
俺はどんな顔をしているだろうか。こんなに近くでライラを見たのは初めてだった。いつもは敵としてその一挙手一投足を見ていたが、今はその綺麗な顔に見惚れていた。長いまつ毛、さらさらとした銀色の髪、自分の手に祈るように重ねられた彼女の手。VRのはずが、頬が熱い気がする。
「こうして会えたのでもうなんでもいいですけどね!よかったらこれからは私とパーティを組みませんか?」
「パーティを組むのはOKだ。願ったり叶ったりだよ。ただ全然頭が追いついてなくてな、ライラは今はどういう立ち位置なんだ?」
「私の立ち位置ですか?田舎に生まれて冒険者になった20歳のただの魔族ですよ。」
「いや、そうなんだがそうじゃないというか……。ひどい言い方を許してくれ、お前はNPCなのか?」
「うーん、NPCでもありプレイヤーでもあります。私はまだこの世界からでることができませんが、あなたがたと同じシステムウィンドウを使えますし、スキルツリーだって見えます。プログラムされて行動が決まったNPCではなく、考えて動いています。私たちのことはAiPCとお呼びください。」
「他にもいるのか……?」
「えぇ、実は結構いますよ。普通のAIからどうすればAiPCに至るかは教えてもらえませんでしたが。」
「まぁ細かいことはいいか、大事なのはこれから俺とお前でこの世界を楽しむことだからな!」
(その笑顔、久しぶりに見るとぐっとくるものがありますね……。)
「なんか言ったか?」
「いえ、何も。そういえば今クエスト出てるんでしたっけ。というか冥龍と語り合ったとか言われていたジンってもしかしなくてもあなたですよね。」
「なんの確信があるのかはわからんが、俺だな。」
「やっぱり。何か冥龍からヒントらしきものを聞けませんでしたか?」
ライラは顎に手を当てるとうーんとうなっている。顔がいいと一つ一つの動作が様になるなぁ。
「あいつ、左腕噛みちぎってまた会おうしか言わなかったからな。」
「ならまずは人族の街を解放していきますか。」
「よし、それでいこう。俺は騎士団絡みで何かありそうでウノスには入ってないんだよな。ライラはもう行ったか?」
「えぇ、やはり旅人からすれば魔族は珍しいようでたくさん話しかけられました。みなさん優しいですよ。あ、あと騎士団に昔戦った人がいるかなと顔を出しましたが、だめでした。」
「そうか、あいつらは騎士団にとどまらなかったのか。どこに行ったのやら。副隊長とか最近連絡もないしな。」
「えっ?副隊長さんってあの背の低い…?」
ふと彼女の雰囲気が変わる。あれ、こいつと副隊長ってそんなに仲悪かったか?数回切り結んだくらいだったはずだが。
「そうそう、身長の2倍くらいある大槍を振り回していたあの。」
(彼女が来ているならちょっと気をつけなければいけませんね…。絶対ジンのこと好きですし、あれ。)
「ま、また会えるといいですね。」
「おう、まぁ目立ちたくなくてこっそりプレイしてるからな、今回は。」
「じゃあこれからもそれでいきましょう!!」
「突然元気だな、どうした。」
「い、いえ、なんでもありません。そういえばジンはどんなスキルを取ったんですか。またレヴァテインですか?」
「いや、今回はレヴァテインなしでいこうと思う。槍は使うつもりだが。騎士団系統のスキルも使えないからなぁ、ウノスでそういうイベントありそうだけど。」
「そうですね。私もウノスでは人探ししかしていないので、クエスト系は触れてないんですよね。」
「だよなぁ。」
前世とはいえ、お互い殺しあっていたとは思えないほどゆったりとした時間が流れていた。時刻は気がつけば昼前で、公園に遊びに来る人も増えてきた。
俺としてはライラに聞きたいことが山ほどあるが、話題に出してこの時間を終わらせたくないしな。向こうもあんまり踏み入った話はしてこないし、これからそういう機会もあるだろう。
攻略や街へ向かうのは明日にして、今日は再会を祝して2人ともゆっくりと過ごすのだった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます