冬の靴底
把手
第1話 冬の靴底
お互いが足りない僕ら思われた分にも思ってあげた分にも
ゆっくりと光が捲られていった人の顔にも月蝕がある
着替えずに倒れるベッド週末の赤いウインナ載るナポリタン
あの明日が来ることはないこの明日で靴底に地面が糸を引く
ほんとうの唄はでまかせ想い出を繰り返したら始まる終わり
冬空に伸び縮みする鳥群のアルゴリズムに混じる邪
あんまりな軽さ自由さ優しさにいまだ買えないダウンジャケット
少しでも匂いがしたら引っこ抜く二人の道に生える沈黙
バス停じゃない海岸に無理言って降りたらそこが黄昏だった
辿ったら一回りして元の角もう分からない順風逆風
もんがまえきがまえくがまえはこがまえ逃げる隙間のないくにがまえ
指先がホックに届かなくなって輪郭線がもう外せない
二人とも話が尽きたついてきた老婆がついに口を開いた
黄昏のぱっきゃらまあどぱおぱおぱ黙って拾う粉々の今日
後はもう干上がるだけの水溜まり 笑おうとしないと笑えない
生きてると確かめる時だけ触るほぼ二次元の僕のポケット
ハヤカワの小口にちょうど取り返しつかない深さで滲む茶の色
ヒーローは地面が要らない靴底を磨り減らすため僕らは生きる
爪立てて思いきり掻く輪郭で僕をひりひりはっきりさせる
咲いて落ち落ちては咲いて山茶花のありゃしない片付くものなんて
冬の靴底 把手 @knob60
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