第5話【おじいちゃん】

また、これかぁ...物にも実はその人の記憶が染み付くって聞いたことがある。

特にその人が身に付けてた物とか写真は特にそれが濃い

ぼくは写真とかに触れるとたまに急に眠ってしまってその人の記憶を一部だけ覗くことができる。

「こんな地下に研究所を作るなんて用心深いな」

「いいだろ、何があるか分からないから念のためだよ」

テルのおじいちゃんの若い頃だその隣に居るのはおじいちゃんの友達なのかな?。

テルのおじいちゃんは柴犬族でテルも柴犬族だ、本来は東洋の国なんだけど仕事の都合で

この国にやってきた。

「お前とは昔からの付き合いだ困った事があったら言えよ」

「わかりましたよ、錬金術士殿」

仲良さそうだなぁ...。

「やったな!お前の錬金術の才能が国に認められたんだ!」

「ああ、これからは国のためにこの錬金術を使うさ!」

二人で喜んでる少しあれから年月が重なってるのかな?

だけど、このテルのおじいちゃんの友達の人はそんなに悪そうな人じゃ無さそうなのに。

「なぁ、知ってるか?肉体を武器に変化する一族のことを」

「ああ、実際見たことあるぞ武器になる姿を」

おじいちゃんの友達は目の色を変えて驚いていた。

「本当か!どんな武器になったんだ?!」

「ええと...確か槍だったかな...」

肉体を武器にできる一族...ぼくもある程度知ってる昔に比べると少なくなってしまったけどその一族はその人と波長が合うと信じられない強さで敵を倒す事ができるらしい。

「なぁ、その方に合わせてくれ!国のためにもっと戦力を増やしたいんだ!」

「いや、そんな俺が勝手に...」

おじいちゃんの友達はずっと頼みこんでたけど結局おじいちゃんは紹介しなかったみたい。

「おい!お前なんてことをしたんだ!」

テルのおじいちゃんがすごい怒っている。

「自分でもわかってるよ...可哀想なことをした...だけど国が強くなるためなんだ!」

「だからって...何とか命は助かったけどお前の研究で右目を失ったんだぞ!」

研究で目を失った?!。

「わかってる!本来彼らの一族は波長が合わないと力を活かすことができない...」

この人はもしかして...。

「だけど、どうだ...波長が合わなくても何倍もの力を引き出すことができれば!

そうなれば無敵だ!お前だって弓の武器があればもっと強くなれる!

昔からお前には世話になったしお前には死んで欲しくない!頼むわかってくれ!」

「俺の心配をしてくれるのはありがたい...それは感謝してるだけど彼は怖い思いもしたし苦しい思いもした、それにそんなの一心同体じゃない...ただの奴隷だ!」

そう言っておじいちゃんは出ていってしまった。

なんだろぅ...少し怖くなってきた...。

ダッダッダッダッダッ

バタンッ

「おい!お前は...なんてことを!」

テルのおじいちゃんが走って扉を乱暴に開けた。

あれからかなり年数が経過してるのかな?かなり老けてる。

「あと、もう少しだ武器に体を変化させる生命体を人工的に作り出すことに成功した!」

「お前!だからって...あの二人を毒で殺すことなかっただろ!」

えっ?どうなってるの?...。

「しょうがないだろ!あの二人が研究に協力してくれなかったからだ!

本当は殺しなくなった!だけど優秀な遺伝子が必要だったんだ!」

この人、殺してまでその遺伝子を...。

「だけど、もうすぐ完成する...ホムンクルスだ!」

そこにはビンの中に沢山の蛍の様に光った小さな精霊達が何体も居た。

「神秘の力を宿すのに成功すれば完成だ!」

「おい、待て...その中の一体は...」

ちょっと待ってあれって邪精霊?なんか様子が変だよ。

「何か、あの一体だけ不安定になってるぞ!早く止めろよ!」

「おい、待ってくれここまで来たのに!」

そう言った瞬間...。

ブァアアアアアア

黒い渦のようなものに飲み込まれた。

あれ?視界が悪くてよく見えないけどあれって...。

「うっうっ...あれ?どうなったんだ...」

なんとかおじいちゃんは助かったみたい。

「おい...今回は冗談じゃすまないぞ...」

偶然、隣に居た友達に話しかけてる。

「なぁ、返事ぐらいしろって」

そういっておじいちゃんは横たわった友達を揺すった。

ズサッ

だけど、向きを変えると心臓に木の大きな破片が突き刺さってしまっている。

「そんな...嘘だろ!」

おじいちゃんは抱き抱えて叫んだ。

「たくなんだよ...お前にはちゃんと生きて罪を償って欲しかったのに...」

カタンッ

その時...瓦礫が動いた。

「待っててくれ」

おじいちゃんは友達にそう言って寝かせた後...音が鳴った方に向かった。

ガサガサッ

おじいちゃんは瓦礫を退かしていった。

「おい...お前...」

そこには柴犬族真っ白な...テル!。

「お前...生きてたのか...」

おじいちゃんはテルを抱っこしていた。

「お前に罪は無いもんな...」

そう言っておじいちゃんはテルを連れていった。


「おい...しっかりしろ...」

誰かの声が聞こえる...。

「起きろ!」

「わぁあ!」

ぼくはびっくりして飛び起きた。

「良かった...大丈夫なのか?」

「うん、心配させてゴメン」

バンは安心した様子だった。

「いいさ、でも何もなくてよかった...でも、どうして急に倒れたんだ?」

ぼくは立ち上がった。

「説明する前にちょっとついてきて」

「ああ、別にいいが?」

記憶が確かならあそこに...。


「この墓は...」

板で作った十字架と土で埋めた形跡のある場所。

「この中に錬金術で怪しい研究してた人が眠ってるよ」

テルのおじいちゃんが運んで埋葬してあげたんだ。

「何でそんなことを...」

「自分でもよくわかんない力が色々あるの」


その日の夜...。


「しきぃ...」

「なぁに?」

ぼくはテルが作ってくれた魚料理を食べていた。

「おいぃしぃい?」

「うん、前よりうまくなってる!」

テルは細胞とか編み物や家の家事とかご飯の作り方とかをぼくがたまに教えている。

「よかぁあたぁあ...」

ぼくはテルを抱きしめた。

「作ってくれるの嬉しいけど...帰ったらぼくが作るからぼくの帰りを待ってて...」

家で倒れて欲しくない。

「ねぇえ...」

「なぁに?」

なんだかテルが少しぼくの事を細い目で見てきた。

「かぁくしてぇる...」

「えっ?何にもかくしてないよ?...」

何故かテルは鋭い時がある。

それでもテルはぼくことをずっと見てくる。

「ホントに何も無いって...」

それでも、無言。

「はぁ...テルには敵わないよ...見てもらった方が早いから」

ぼくはテルの額に手を触れた。こうするとぼくが見たことをある程度見せる事ができる。

「でも...本音を言うと見せたくないよ...」

だって...知らない方が良いこともある...。

「しきぃ...だぁけ...せぇおいこぉむ...やだ...」

「わかった...」

だから、キミに惚れたんだよ...なんでもお見通しなんだから...。

ファアアアアン

光と共に記憶を流し込んだ。

「どう?これが見たもの全てだよ」

例えテルが泣いたり絶望してもぼくが支える。

「ほ...む...んぅんうう...」

「ホムンクルスだよ、人工的に作られた生物...」

テルは自分を指差した。

「ぼぉくがぁ?...」

「気にしてないの?」

テルは別に気にしてない様子だった。

「しきぃ...きにすぅる?...」

「気にする訳ないでしょ!」

ぼくは怒鳴ってしまった。

「テルが何だろうと...ぼくは...」

「しきぃ...なんでぇ...なぁく...」

ぼくは自然と涙で瞳が溢れてた。

「アンタが泣かないからだよ...」

ぼくはテルの胸で泣いた。

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