第3話【血の中に眠る契約】

あれから数日が経過してテルもなんとか回復はしてるけど...。

「ゴホゴホ...」

これでもマシにはなったけど、それでもまだ万全ではない。

「はいこれ薬草のお茶だよ」

「ありぃがとぉお...」

テルに薬草のお茶を飲ませてるけどこんなのその場しのぎしでしかない。

「見張りの兵士にぼくの事を呼んでもらってねちょっと調べものがあるから」

ぼくは扉に近づいた。

その時テルはぼくに投げキッスしてぼくも笑って返した。


ぼくは王宮の書物で少し薬草について調べていた。

「やぁ、テルくんの調子はどうだい?」

「今は落ち着いてるけど...その場しのぎしかすぎないよ」

バンは眉間にシワを寄せた。

「待て治らないのか?」

「一旦は治ってまたこじらせる...その繰り返しなの...」

バンはなんとも言えない顔をしていた。

「あの子はもとから体が弱いけど...」

ぼくは話した。

テル本人は知らないしこの話はテルの面倒を見ていたおじいちゃんから聞いた話だ

テルの父親は錬金術だった。

錬金術と言っても学者と変わらないし大体は一緒だ色んな分野の研究をしている

テルの父親は精霊の研究をしていて神秘の力に興味を持っていた。

ある時に邪精霊の呪いの体制の遺伝子が欲しくて自分の身ごもった奥さんにその

お腹の子供、要するにテルに邪精霊の呪いを宿しただけど精霊の力が暴走して

テルは無事に産まれてきたけど、両親は助からなかった。

あの初めて出会った雨の日に服が乾いてちょうど帰ってきた時におじいちゃんとも

仲良くなったけど、何ヵ月かしないうちに事故で亡くなってしまった。

協会の郵便受けにぼく宛に手紙が入ってたけどテルのおじいちゃんからだった

内容はテルの生い立ちと後の事を頼むって書いてあった。

おじいちゃんも自分が長くないのをわかってたんだろうな。

「呪いでテルの体は病弱なの」

「おい、まさかテルくんの障害は...」

ぼくは頭を抱えた。

「ううん、テルの障害はテル本人のものなのたとえ呪いがなくても

テルは障害を持って産まれてきてたし治せるものじゃない」

「だけど...せめて呪いはどうにか出来ないのか?」

ぼくは本を前に出した。

「邪精霊の呪いからくる病気を治す薬草」

「エレメントリーフだな」

その薬草があれば調合して特効薬が作れる。

「たけど、精霊が住む森にしかない...」

精霊は気に入った相手にしか姿を出してくれない、どうすれば...。

「エレメントリーフ...それがあればテルくんは助かるんだな?」

ぼくは顔を上げた。

「待ってもしかして?精霊の住む森を知ってるの?!」

「いや、精霊が暮らす森は知らないが」

バンは扉に向かって歩いた。

「それを知ってる方を知ってる!着いてきてくれ!」

ぼくは薬学や植物と精霊についての本を持って後をついて行った。


「ねぇ、ここのお城ホントに大きいね」

なんか迷いそう。

「ああ、ここの王家のご先祖からずっとある城だからなそれにそれぞれの王族の

秩序を守る位の方々だ」

確かに大きいのは納得するけど。

「ぼくこんな大きくて広いところやだなぁ」

バンは立ち止まってぼくの顔を見て言った。

「私は無理強いはしたくないが色んな人たちの考えがあるもしかしたら君はここで

暮らすことになるかも知れないんだぞ?」

「テルは今より良くなったら出ていくそれは変わらない」

ぼくの考えは変わらない。

「まぁ、私が決めることではない行こう」

バンはあくまでもぼくの意思を考えてくれてるみたいだね。

「だが、ひとつだけ言っておく」

バンは扉の前に立った。

「この扉は王家の血縁の者しか開けることができない」

そこにはまるで風を思わせる印の扉があった。

「この扉を開くカギは君の体に流れてる」

そう言われてぼくはとりあえず、扉に触ってみた。

ファアアアアン

「うわぁ!」

触った瞬間、光だした。

「この扉は今の王の前の前の世代の王女様と

契約した大精霊様の部屋だ」

大精霊?...。

「その大精霊ってどんな精霊なの?」

「風属性の精霊ホルスだ」

ホルスって?!...。

「あのホルスなの!大鷲の様な見た目でしかも

風属性の中でも一番飛ぶスピードが速いあの!」

そんな大精霊と契約するなんて。

「その王女はどうなってるの?」

「私も会ってみたかったものだよ」

ぼくは迷わず扉を開けた。

ガチャッ

ギイイイイイイ

「おい、勝手に...」

「少し、驚いたけどそれだけすごい精霊なら

エレメントリーフのことを知ってるに違いないよ」

迷ってる暇はない。


「結構広い空間だね...」

中央に魔法陣があって何本かの大理石の柱が立ってる。

「おかしいなここにいるはずなのに?」

「どこにも居ないよ?」

ぼくはそのまま歩いたすると...。

ブァアアアアアア

ぼくが魔法陣を踏んだ瞬間、竜巻が発生した。

「なんだこれは?!」

その瞬間...。

バサァァッ

「待ちくたびれたよ」

巨大な鳥が現れた。

「やっとだよ彼女の血を受け継いだオレに相応しい魔法使いが」

白い体に緑の瞳に神々しい姿、少し茶色のラインの

模様のある大鷲の姿。

「あなたがホルス?」

「そうだ、オレがホルスだ気軽にマークとでも呼んでくれ」

「あなたが大精霊ホルスのマーク...」

バンはすっごい緊張してるそりゃ無理ないよね。

「大精霊様!実はお話が!」

「黙れ、オレは彼女に話がある」

バンが喋ろうとしたら話をさえぎった。

「それで、君はオレの前の主人の子孫だろ?

魔法は使えるのか?風属性の魔法が使えれば嬉しけど?」

「いや...ぼくはただ話にきただけだから...」

たぶん、バンが変わりに説明しようとしてくれたんだろうけど、止められたからね。

バンちょっと落ち込んでる。

「話とはなんだ?」

「エレメントリーフが必要なのそれが何処にあるか知らない?」

少し呆れた様な顔をした。

「待て、オレには分かるお前の魔力の流れは前の

主人と同じ魔力の流れ方だとオレが思うにお前は

曾孫だろ」

そう言って彼は話を続けた。

「主人とは色んな強敵と戦った時には負傷したり

死にそうになったこともあるそれでも戦って勝ち抜いた」

バァアアア

彼は翼を大きく広げた。

「ずっと待ち望んで!オレを呼んだのは薬草の生えてる場所を教えてくれ?ふざけるな!」

えっ?すごい怒ってる...。

「あのな!前にも主人の血を受け継いだ奴らが

ここにやってきた、だけど彼女程の魔力はなかった正直ガッカリだったさ!あれだけの強者だった

主人の子孫があんな軟弱者だったとは!」

少し彼は深呼吸した。

「すまない、驚かせてだが正直に言うと嬉しかったんだ」

嬉しかった?。

「やっと、主人と同じ魔力の流れた子が産まれたことがあの者たちは主人の名を汚す愚か者たちだ

考え方は良かったがそれを実現させる能力が

足りてない」

「ごめん...ぼくも期待には答えられない...」

魔力自体は持ってるけど魔法は使えない。

「あっ!でもこれを使えば...」

ぼくはポケットの中をあさった。

「あった!コレコレ!」

ぼくは緑色の宝石を取り出した。

「それは魔法石じゃないか」

バンが少し驚いた様子で話しかけてきた。

「うん、テルと森でたまたま見つけたの」

魔法石は中々見つかる物じゃ無いけど

運が良かったこれは自分が使えない魔法でも

魔力を注げばその属性の魔法が使うことができる。

たとえ魔力自体がなくてもその人の生命力がその

変わりをしてくれて魔法を使うことができる。

「綺麗だそれを使った事はあるのか?」

「ううん、魔法にはあんまり自信がないから

使ったことないんだけどね。

確か魔法を宿すには...」

ぼくは治療魔法と同じ感覚で魔力を注いだ。

シュンッ

スパンッ

「えっ?」

ゴゴゴゴゴゴ

ドォオオオオオン

その瞬間、大理石の柱のひとつが切断されて

滑るように倒れた。

「すごい切れ味だ...うちの部隊の魔法使いの

風属性でもあんなのは見た事ないぞ...」

「ああ、魔法自体の破壊力は見事だが加減がなってないな、だけど使っていくうちに上達するだろう」

彼はぼくのことを見た。

「それに、魔法を作ってみて分かったお前の

魔力は底知れないな」

「えっ?」

気づいたらぼくの体は煙の様なオーラを纏っていた。

「膨大な魔力量だこんなのは初めてだ」

そう言って彼は真剣な顔つきになった。

「契約をしようこれからのお前の成長が楽しみだしオレが力になる」

だけど、ぼくの答えは決まってる。

「いや、いい」

「何故だ?王になるのにオレがいた方が有利だぞ?」

「そんなのに興味はないよ」

彼は口を開いた。

「それなら、お互いに条件をださかないか?」

「どういうこと?」

ぼくは聞いてみた。

「別に王になりたくないなら別にそれはどうでもいい、だけど

エレメントリーフの事を教える変わりにオレと契約しないか?」

なるほど交換条件だね。

「わかった、交換条件ならしょうがない」

「おい、待ていいのか?」

バンが心配して話しかけてきた。

「大丈夫だよ」

「よし、それなら」

ブワァン

「契約は簡単だこの魔方陣に手を触れてみろ」

「ちょっと待ってよ、先にエレメントリーフのことを教えてよ確実に手に入れてから

契約するからそっちが約束を守ったらこっちも言われた通りにするから」

「おい、そんな言い方は...」

その時、魔方陣が消えた。

「いや、提案したのはオレだ契約さえしてくれればそれで問題はないさ」

ぼくは紙とペンを持った。

「それで、問題のエレメントリーフの場所は?」

「いや、オレとお前が居れば大丈夫だ」

「大精霊様、何故ですか?」

ぼくもバンも良くわからない。

「エレメントリーフが必要と言うことは呪いだろ?それなら呪われた者の所に連れててってくれ」


ガチャッ

「ここの部屋だよ、てか小さくなれるんだね」

彼はある程度小さくなってバンの腕を足場がわりにしている。

「この少年だなそれにしても移動してる道中で話は聞いてたがお前が薬を飲ませてから

なんとか保っていたがよくここまで保ったほうだ」

「大精霊様、それでどうやって彼女とあなたの力で治すのですか?」

彼はバンにまず話しかけた。

「とりあえずもう少しのこ少年に近づけてくれそして次は」

ぼくの方に目を向けた。

「さっき治療魔法を応用をしていただろ?状態異常や病を治す魔法は使えるか?」

「どっちも使える」

彼は説明し始めた。

「簡単に説明するとこの呪いを手っ取り早く消す方法は邪精霊を倒すか

エレメントリーフを薬の代わりに飲ませるかだ。

だけど、精霊のオレの魔法とお前の回復系の魔法を同時に使えば呪いを消すことができる」

「精霊は汚れを浄化する力を持ってるって習ったよ」

彼は少し難しい顔をした。

「オレ自信はそういった呪いはそう簡単に通用しないんだオレより強い呪いじゃない限り

自動的に浄化されるだけどオレはそういった補助魔法は苦手なんだ

だけど、お前がオレと同時に魔法を発動すれば可能だ」

なるほど回復系の魔法が得意で良かった。

「それじゃあ、バンって名前だったよな?手伝ってくれ」

「いいですけど、私は魔法は全然駄目ですよ?」

彼はいったんバンの腕から降りた。

「オレの風魔法を発動させるから大丈夫だと思うけど結構な力業になるかも知れない

だから、吹き飛ばないように抱き抱えてくれ」

「なるほど、そういうことなら力になれます」

バンはテルのことを抱き抱えた。

「それじゃあ、まずはオレから...」

フゥウウウウウウ

少し毛が揺れる...やさしい風がテルの体を包み込んでる...。

「今だ回復系の魔法をこいつに」

「わかった!」

ファアアアアア

ぼくは弱めに治療魔法を使った。

「だんだん、見えてきたぞ...やっぱり力業じゃないと消えそうにないな...派手にいくぞ!」

「いいよ!きて!」

ブォオオオオオオオオオ

風がさっきよりも強くなった。

「危ない!」

バンはぼくの事をつかんで突き飛ばされないようにしてくれた。

「よし!本気でやれ!」

「はぁあああ!」

ぼくは力一杯魔力を注いだ。

ファアアアアン

「もういい!大丈夫だ!」

風も弱くなっていった。

「はぁはぁ...これで大丈夫なの?」

「ああ、後はめが覚めるのを待つだけだ」

ぼくは安心して力が抜けた。

「ああ...よかった、ええと...」

「呼び捨てでいいさ」

ぼくは笑った。

「ありがとう...マーク...」

ぼくは立ち上がった。

「バンもさっきは助けてくれたね」

「そんな、私は何もしてないこの子を助けたのは

二人だ」

それでもちゃんとお礼を言いたかった。

「バンが居なかったら吹き飛ばされてたよ

ありがとね」

少し、照れくさそうにバンはそっぽを向いた。

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