第1話【薬指】
「ねぇねぇ、もうすぐ誕生日だけど何が欲しい?」
3月31日はテルの誕生日でその翌日の4月1日はぼくの誕生日だ。
お互い誕生日が遅いし1日しか同い年になれない。
「しきぃ...」
原っぱの木陰で座りながらテルを抱きしめて座ってる。
テルは、恥ずかしがって離れようとしている。
「ぼくの方が体少し大きくて力も強いんだよ」
そう簡単にテルを離さない。
「それで?何が欲しい?」
テルは無言だった。
「言ってよ、何かプレゼントしたいの」
テルは少し考えて口を開いた。
「えをかくもぉの」
「また、クレヨンとか色鉛筆!」
テルは絵を描くのが好きでしかもうまい、冗談抜きで綺麗な絵を描いてくれる。
「絵を描くのが好きだから、いいけど...もっと他にない?」
テルは首を横に降った。
「まぁ、いいけど...」
もっと、あげたこと無いものあげたいなぁ。
「しきぃはぁ?...」
「テルのプレゼントなら何でもいいよ」
「こまるぅ」
テルからならなんでも嬉しい。
ぼくはテルさえいてくれればそれで...。
「とりあえずさぁ、しばらくテルの家に泊まるね、一緒にケーキを焼こう」
テルは少し、心配そうにしていた。
「教会のシスターのこと?大丈夫だよ他の子たちの面倒で忙しいと思うし
ぼく一人いなくなったら逆に楽でしょ」
確かにシスターもぼくの面倒はみてくれてるけど...
だけど、教会ではどうしても孤独な感情が押されられない。
こうやって、外に抜け出してテルと会ったりたまに家に泊まったりしてる
シスターには怒られるけど、周りの子達と一緒にいるのが少し辛い。
「今日は帰るよ」
そう言ってぼくとテルは立ち上がった。
「どう?ぼくが作った杖は?」
「いぃい...」
テルは目の視力が弱いし足も不自由だから
杖を使ってなんとか気をつけて歩いてる。
「それじゃあね!」
テルは手を振って見送ってくれた。
ぼくは自分の部屋の窓を開けた。
ガラララ
「よし、なんとかバレてないかな?」
ぼくは静かに部屋に入った。
「よし...バレてないね...」
その時...。
「おかしいわね...何処に行ったのかしら?」
シスターの声...誰かと話してる?...。
ぼくは集中して話し声を聞いてみた。
「たぶん、他のシスターにお使いを頼まれたの
かもしれませんね」
「自分たちはいくらでも待つので探してきて
くれませんか?」
男の人の声...誰だろう?...。
「さっきも聞きましたけど、王国騎士団の
人たちが何故あの子に?」
「それは後で説明します」
えっ?何これ...なんでぼくを探して...。
ぼくは少し怖くなって後ろに下がった。
ギィイイイ
しまった!床がきしんで音を出してしまった!。
ガチャッ
「誰かいるのです...アレ?シキじゃない!さっきはいなかったのに何処にいたの?」
シスターが入ってきた。
「君がシキか...」
その後に狼族の騎士が入ってきた。
「なっなんですか...」
そしたら、いきなり腕をつかまれた。
「大丈夫だすぐ終わる」
そう言って、何か水晶玉を出てきた。
「これを手に持って」
ぼくは少し固まって反応できなかったけど
とりあえず、ぼくは水晶玉を手に取った。
ファアアアア
「えっ?何コレ?!」
手に持った瞬間に急に光出した!。
「ああ!やっとだ!」
いきなり肩をつかまれた。
「戸惑うかもしれないけど一緒にきてくれ
話はその時に...」
ぼくは怖くなった。
ガブッ
「なっ?!」
ぼくは手に噛み付いた。
「えい!」
ボォン
いじめっ子たちから逃げるために作っておいた
煙幕爆弾を使って目くらましをした。
「はぁはぁ...なんなのいきなり!...」
ぼくはあの後煙幕で相手が怯んだ隙を見て
窓から出て外に逃げた。
その時。
「なぁ、頼むシキと名乗る子供の事を教えてくれ仲がいいんだろ?」
王国騎士団の一人がテルに話しかけていた。
ぼくは何も考えずに。
スパァッ
飛び上がり。
ドォオオン
後頭部に飛び蹴りした。
「なに!テルに気安く話しかけてるんだ!」
ぼくが後頭部に飛び蹴りしたから白目に
なって気絶している。
「ああああ」
「テル!」
ぼくはテルを抱きしめた。
「大丈夫?何もされなかった?!」
「だいじょょぶ...」
良かった...何もされなくて...。
テルにまで話しかけてきた...なんでそこまでして。
「とにかく、テルの家に行こう!」
そう言ってぼくはテルを抱き抱えた。
「えっ?...」
「じっとしてててね」
ガチャッ
ぼくはテルの家のドアを開けた。
家と言っていいのか正直すごいボロボロの小屋と
言った方があってるのかもしれない。
「ちょっと待っててね!」
ぼくは床下の板を外した。
カタンッ
大きな布の袋を取り出した。
ジャリジャリ
ぼくは袋を開けて中を確かめた。
すぅううう
中には金額から銀貨や銅貨まで
お金が大量に入ってる。
「ちっとも使ってないね」
「だぁて...しきのぉ...」
これはぼくが錬金術で作った物を売って貯めた
お金。
テルには欲しいものがあったり困った時に
使ってと言ってたけど
全く使ってない。
「自分の描いた絵を売って生活するのは
いいけど、ひもじい思いはして欲しくない」
ぼくはテルの手を握った。
「あの騎士団の人たちぼくを探してた
けど、テルにも何か酷いことするかも」
ぼくを探してたからテルと仲が良かったことも
調べたのかもしれない。
もしも...テルを弱みに握られたら...。
「でも大丈夫だよこのお金もこれからは
ぼく達二人の物だよ」
「えっ?...」
今回はすこし予定が早かっただけだ
ぼくは初めっからテルといつか二人だけで
何処か遠いところで暮らそうって話してた。
「お願い一緒にきて...必ず守るから...」
ぼくはテルを抱きしめた。
10分後...。
「荷物重くない?大丈夫?」
「うん」
テルに少し荷物を持って貰って
ぼくはテルの腰に手で抱き寄せて
二人で歩いている。
テルは目があまり見えなから杖を使ってるっていう
のもあるから使ってるけど足も少し不自由だ。
「あれ?なんだよシキじゃねえか!」
「なんだよ!テルも一緒かよあついねぇ!」
「邪魔」
バァンッ
そう言ってぼくはいじめっ子の鼻を思いっきり
殴った。
バダンッ
「いっ...痛いよぉぉぉおおおおお!」
いじめっ子はそのまま泣いて他の子たちも
完全に固まってる。
あいつらはどうでもいいや今は歩かないと。
「しきぃ...どぉこいいくの?...」
「あそこだよ」
ぼくは馬車の二台を指さした。
「急いで!」
ぼくは馬車の二台に荷物を投げ入れて
テルを中に入れさせた。
「ちょっと待ってて」
ぼくは隠れながらおじさんとおばさんの
話を盗み聞いた。
「それじゃあ、荷物はこれで全部かい?」
「問題ないよ、配達頼むね」
やっぱりこの馬車は配達用だね。
「荷物は港町までだよな」
「そうだよ、かなり遠いけどお願いね」
港町だね、ぼくは頭の中で計画をたてた。
馬車も道中の街で休みながら移動する
はずだし、その途中で降りながら
ぼくたちも街で調達したり休んだりして
港町に向かう...。
最悪バレたり行けなくなっても
この街から離れればそれだけで良い。
ぼくは急いで二台に乗った。
「よし!はっ!」
ヒィイイイイイン
おじさんは手網を引いて馬を歩かせた。
「しきぃ...どぉこいいくの?...」
「色々計画はあるけど、とにかくここを離れるの」
テルはぼくの手を握った。
「はぁい」
ぼく手の薬指に小さい花を結んで作った
指輪をつけてくれた。
「これ?いつの間に?」
「きょおぉ...はらっぱぁにいたときぃ...」
今日の原っぱ...。
「ぼぉくの...おぉくさぁん...」
奥さん...。
バッ
ぼくはテルを抱きしめた。
一生守るそう誓った。
ドンッ
「わぁあ!」
何故か馬車が止まってぼくはテルを抱きしめた。
「大丈夫?」
テルはうなずいた、良かった怪我はないみたいだ。
「そこに隠れてるのはわかってる!」
この声はシスターと話してた騎士!。
「この水晶で君の行った場所をたどる事ができる」
ちょっと待って!あの水晶玉そんなことが?!。
「手荒な事はしない...信じてもらえないかも
しれないが...」
しょうがない...この状況で逃げることは無理だし。
「しきぃ...」
テルはぼくの手を握った。
「だぁいじょおぶだぁよ...」
ぼくを勇気づけてくれてる。
何があってもテルは、離さない!。
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