四季混血

はりがね

序章

人混みの中の商店街で色んな種族の獣たち。

あの人たちもぼくも色んな毛の色や

爪の形からしっぽの長さも違う。

「やーい、キメラー!」

「お前本当は悪の研究所から逃げてきたのか?」

小石を投げられて、服も汚れて少し擦り傷も

できて痛い。

ぼくも詳しい事はまだ、分からないけど

例えば犬族と猫族の二組が結婚して

子供が産まれると、二分の一の確率で

どっちかが産まれる。

「やめてよ...」

ぼくのお父さんは犬族でお母さんは猫族。

そのどっちかの種族に産まれるはずなのに

ぼくは混ざって産まれた上にどうやら先祖返りした。

獅子族の顔に狐族の様なしっぽに

狼族の瞳の形に多分、竜族の角。

角は最近生えてきたけど、鬱陶しい

今はまだ短いけどこれから伸びると思うと

憂鬱だ。

「もう!やだ!!」

ぼくは走ってその場から逃げた。

「あっ!おい待てよ!」


走ってなんとか、森に入って木に登った。

「はぁはぁ...どこ行ったんだよ?...」

「あいつ、逃げ足速すぎ...」

「おい、あっち行こうぜ!」

ぼくをいじめてた奴らは別の場所に走って行った。

あまり、目立たないけど、足の骨格が兎族だから

ジャンプ力と走るスピードがすごい。

「こういう時ぐらいしか、使い道ないけど...」

さっきも、結構この木は背が高いけど、声がはっきりと聞こえたのは

猫族は耳が良いから、よく聞こえる。

そのせいで、聞きたく無いことも聞こえるけど。

「帰ろ...」

ぼくは木から下りて、家に帰ることにした。


翌朝...。


「ねぇ、お使いを頼まれてくれませんか?」

シスターが言ってきた。

「いいよ」

シスターはカバンとサイフと買い物メモを

ぼくに渡した。

「四歳になったばかりなのに偉いねホントに」

「やめてよ、褒めてもなにも出ないよ」

ぼくは外に出てお使いに行った。


「今日は何を買うのかな?」

ぼくは独り言を言いながら商店街を歩いていた。

お父さんは家で錬金術で薬から布や糸金属から

他にも色んな物を作っている。

お母さんは看護師。

だけど、これは周りの人たちの話から聞いただけ

ぼくが産まれてすぐに事故で亡くなってしまった。

色んな種類の獣の特徴のある見た目に灰色の毛皮に右目は青で左目は赤...。

考えるのをやめてそのまま歩いた。

「教会に帰ったら勉強しよ...」

ぼくの両親がそういった仕事をしてるって聞いたらぼくも少しだけ興味をもった。

帰ったら教会にいるあいつらにまた虐められるのかな。

「はぁ...」

ため息ばかり...。

トントンッ

肩を叩かれた...後ろを振り返ると...。

「あっ!テル!」

後ろにテルがいた。

「...これ...あげぇる...」

「ありがとう」

テルはぼくのたった一人の親友でぼくにお花をくれた。

「似合うかな?でも...こういうのはもっと女の子らしい見た目の子が似合うよ...」

ちゅっ

「でも、ありがとう...」

ぼくはテルの頬っぺにキスした。

「しきぃー...」

テルは顔を赤くして恥ずかしそうにした。

ぼくの名前はシキ。

四つの季節と書いてシキ、よく間違えられるし一人称もぼくだから

男の子って勘違いされるけど、ぼくは女の子だ。

ぼくがまだ、三歳だった頃にこの子と出会った。


一年前...。


「はぁはぁ...ここどこだろ?...」

いじめっ子たちから逃げるのに必死で知らない場所についた。

「まだ、近くにあいつらうろうろしてるかも...」

ぼくはとりあえず歩いてみた。

そんな時...。

「あれ?...雨の臭いだ...」

ザザザザザザザザ

突然雨が降ってきた。

「うわ!どこかで雨宿りできる場所は...」

ぼくは急いで走った。

ザザザザザサ

雨が強くなり始めた。

バシャンッ

「痛いよ...」

最悪だよ、転んでしかも水溜まりに倒れちゃった。

「だいじょ...ぶ...」

そんな時、傘を持った犬族の男の子がやってきた。

「ありがとう...」

彼は手を出してぼくはそのまま手を貸してもらって

立たせてもらった。

「こっち...」

ぼくは手を引っ張られてそのままついて行った。


ガチャッ

「ねぇ...ここは?...」

男の子は傘をたたんで喋りだした。

「ぼぉくの...いえ...」

どうやら、ここはこの子の家みたいだね。

「おかぜ...」

ん?...おかぜ...。

「からぁだ...」

もしかして、ぼくの体を心配してる?。

「ありがとう...でも、大丈夫だよ。

でも、キミもちょっとだけ濡れてるよ」

ぼくと比べるとマシだけど、この子もちょっと

濡れてる。

「こっぢ...」

そう言ってぼく手を引っ張った。

「なに?」

そしたら、いきなり暖炉に薪を入れて

マッチを使った。

シュッ

ボォオオン

暖炉から暖かい炎が燃え上がる。

「体を温めてってこと?」

彼は首を縦に降った。

「もぉーふ...とってくる...」

そう言って、よたよた歩きながら別の部屋に行ってしまった。

色々気になるところはあるけど、今は風邪を引かないように服を脱ごう。

毛もベタついて気持ち悪い。

「よいしょ...」

そのまま服を脱いでると...。

ぎぃいい

「もって...」

彼がやってきた。

「うわぁ!」

バタンッ

スボンを脱ごうとしたら、足が引っかかって

彼の目の前に倒れ込んでしまった。

その時ぼくはたまたま、瞳を覗き込んだ。

「あれ?...キミ...。いや、そんなことより!」

ぼくは慌ててどいた。

「ゴメンね!キミも濡れちゃったね!」

しまった、毛の量が多いから吸収した水の量も

多かったから、結局は彼の服と体も濡れて

しまった。

「早く脱いで!風邪ひくよ!」

「えっ?」

そう言って、ぼくは彼の服を脱がせて

タオルで拭いた。


やばい...どうしよう...。

あの時は慌ててたから、急いで服脱いで

体を乾かす為に暖炉の前にいるけど...。

お互い、裸でしかも、一枚のタオルに

二人で包まって暖炉の前に座ってる。

なんか...緊張してきた...心臓の鼓動が...。

「やぁぱり...ぃいく...」

彼は何処かに行こうとした。

「待って!」

ぼくは引き止めた。

「ちゃんと、温まらないと風邪ひくよ!」

多分、ぼくに、気を使って離れようとしたんだろう。

「気を使わないで...」

それだけ言って彼も座ってまた無言になった。

その時、彼はうつらうつらしていた。

「どうしたの?眠いの?」

彼は首を横に降った。

その後もたまに首が縦にカクンッて

何度か揺れてるように見えた。

ぼくは口には出さなかったけど多分...。

「きにぃ...なぁる...ぼく...」

「いや!...その...」

しまった...失礼なことしたかな...。

「うまぁれつぅき...こぉう...」

やっぱり...。

簡単に言うとこの子は障害者...。

なんの、障害なのかわからないけど、苦労したに違いない。

「親は?」

そう聞いたら首を横に降った。

デリケートな部分だからこれ以上は聞かないことにしよ。

「きぃみーは?」

ぼくの親のことを聞いてるんだね。

「お母さんは看護士で忙しくていつも夜遅くに帰ってきてる。

お父さんは錬金術で色んな物を作って仕事してる」

ぼくは暖炉の火を眺めながら少しため息を吐いた。

「まぁ、これは周りの人たちの話しを聞いてた、だけで実際はどんな

人たちなのか知らないけど、写真を見せてもらった訳じゃないし」

なんだろう...。

「教会でぼくみたいな孤児の子供が何人かいるんだけど、ぼくの見た目からかってくるやつがいてさ」

止まらない...。

「シスターからもスカートを着なさいとか言われたりもっと女の子らしくって

言われたりするけど、なんかぼくはそういうの苦手なの」

気持ちが軽くなる...。

「シスターも面倒見はいいんだけど、やっぱりもっと大きくなったら

教会を出て自分だけで暮らそうって思ってるんだ。

シスターには内緒で錬金術で作った薬とか布とかを旅してる人やよそからきた

商人にうちの親戚の叔父さんが作った商品を手伝いで売ってるってことにして

お金稼いで内緒で溜め込んでるんだ!」

一緒に少しか時間がたってないのに...誰にも話したこと無いのに...。

「なぁんで...」

「何でって、あそこにぼくの居場所は...」

言葉をすべて言い終わる前に勝手に涙が流れてきた。

うん...優しい人はいる...だけど、ぼくの全部は知らない...。

「冷たい人たちばかりじゃないけど...もう疲れた...独りで生きたい...」

口に出してないだけで、本当は疲れてた...。

「こんな、色んな種族の合成した見た目...キメラみたいで...」

「き...れ...い...」

「えっ?」

彼は...今なんて?...。

「き!...れ!...い!...」

ぼくのことを...きれい...。

彼は顔が赤くなっていた。

その顔をみて、ぼくは胸の奥が熱くなった。

「そういえば、名前聞いてなかったな」

今更だけど、どうしても聞きたかった。

「て...る...」

「テル?」

彼は首を縦に降った。

「テルだね、ぼくはシキよろしくね」

そして、ぼくは彼のほっぺにキスした。

ちゅっ

テルは呆気にとられた顔をして顔を赤くしている。


「あの時のテル可愛かった」

テルは恥ずかしそうにうつむいた。

「ごめんごめん...でもキミのおかげで色々吹っ切れた」

この感情は友情なのか、家族愛なのか、それとも恋なのか

四歳のぼくにはまだ、わからない。

「わぁ!」

「危ない!」

バサンッ

転びそうになったところをキャッチした。

テルは障害でうまく喋れないしまったく見えない訳じゃないけど、視力が弱い。

「ここら辺は足場が悪いからね」

そう言ってぼくは腕組みした。

「しきぃ...はずぅかぁしぃ...」

あの出会いからずっと関係は続いてた。

普段はうじうじ悩んだり小心者だけど、テルと一緒だと強くなれる気がする。

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