第30話

ほんのつかの間の春休みも終わり、気が付けば今日は入学式……。


「(今日から、凌君と一緒に登下校出来るで!)」


「小明、顔がにやけとるで?」


凌君と登下校出来ると喜んでいたのが表情に出てしまってたみたいで、母さんに突っ込まれた。


「どうせ、凌ちゃんと登下校出来るとかで、あれやこれやと妄想でもしてたんやろ? 分かりやすいわ!」


「何言うとん? 凌君と手繋ぎ登下校したり、雨の日に相合い傘したり……とか考えてへんで?」


「そうか、そうか、小明が色々妄想しとる事、よう分かったわ。何も悪いとは言うとらん、仲ええのは! 私が小明の頃は……」


自分からボロを出してしまって、便乗して、母さんが自分の青春の話をしようという感じになって来た。長くなるんだよね……。


「母さん、そろそろ、家出んと!」


私は、出発を促して、話を止めた。




「小明ちゃん、かわええな! 元がええと何でも映えるな……」


学校に着き、入学式の会場である講堂に入ると文音ちゃんが既に来ていて、声を掛けて来た。


「何言うとん? それは文音ちゃんの方やで?」


「自分の容姿を自覚してないって、罪やな……」


私の否定に、文音ちゃんがぼそぼそと呟いたがよく聞き取れなかった。


「小明ちゃん、凌先輩には制服姿見せたんか?」


文音ちゃんは、話題をずらした。


「昨日、見せたったで?」


「そうなん? どんな反応しとった?」


文音ちゃんは、私の返答に食いついてきた。何か食い付く要素あるんか?


「凌君……、私の制服姿見て、顔赤くして、これこそ萌えや~! って呟いて、トイレに駆け込んでったで……」


「ああ……、そうなんや……。凌先輩も重症でご愁傷様やな……」


文音ちゃんは、私の返答に溜息つきながら呟いた。


「凌君……、何か病気なんか……?」


「いやぁ……、多分一生治らんし、健康には害あらへんから心配は要らんで。小明ちゃんがずっと傍に居ったら安定しとる筈や!」


「そっか。それなら安心やな……。私も凌君から離れとうないって思っとるから」


「そうしたって?(また、小明が離れる事になると、今度は発狂するで? 小明ちゃんが何も知らん、というのがある意味救いや!)」


「うん!」

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