第26話

「優君、あれからどやった?」


翌日、僕は優君に早速尋ねた。


「ああ……、夜、トレーニングしてたら、文音が来て、今日は何人から貰った?って訊かれたから、誤魔化しても無駄だと思って正直に答えたら、いきなり絞められて、訳解らへんかったわ! 」


優君は怒り収まらんといった感じで答えた。


「(他人事やけど、文音ちゃんに同情するわ……、金はやらへんけどな)そりゃあ、大変やったね……」


僕は無難に相槌を打った。


「訳解らへんけど、俺が謝らなあかん感じやったで、まあ、他の女子からバレンタインチョコを貰った事やろう、と至ったさかい、謝ったんやわ」


「へぇー、謝ったんや……」


優君の予想外の行動に驚きを隠しながら相槌を打った。


「まあ、何で悪いんか?は解らへんかったで、俺としては不満なんや」


そこが肝心でしょ?って心の中で突っ込んだ。




「俺の事より、凌の方はどないやねん? 小明ちゃんから貰ったんやろ?」


間をおいて優君が尋ねて来た。


「貰ったで。まあ、状況は優君と似たり寄ったりやけどな……。特に語る事もあらへんで?」


僕は淡々と答えた。


「はあ……。なかなか進展しそうでせえへんよな、お前達……。小明ちゃんは、記憶の関係も然ることながら、奥手やし、凌も凌で、付かず離れずの半端な立ち位置から踏み込めんみたいやからな……、こちらとしては、やきもきしとるねん!」


優君が溜息つきながら言った。


「まあ……、優君の言うとる事、否定出来へんな……。俺は、臆病になっとる所があるわ、自分が傷つかへん様に、予防線を張っとると思う」


僕は頬に手を当てながら答えた。


「まあ……、俺達未だ小、中学生やからな……、それほど焦る事ではあらへんと思うんやけど、何時、何が起こるか……、なんて誰も分からへん事やからな……。地球が滅ぶ、人類が滅ぶ、とか言うとる予言者騙る奴等もほとんど当たった例あらへん位やからな。経済学者なんて、何年も予測外しとる奴も居るみたいやからな」


「ほやな……。確かに、何時、何が起こるか……なんて分からへんよな。後悔先に立たず、って言うもんな」


僕達は、この時には、想像だにしてへんかった。


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