第25話

本文

「凌夜君にチョコ、渡せた?」


家に帰ると、早速、母さんが尋ねて来た。


「うん、渡せた」


「良かったわね!」


私の返答に笑顔浮かべながら頭を撫でて来る母さん。私は、初めてのお使いから無事帰ってきた子供じゃないんだから。


「やめてよ、母さん、私はそんな小さな子供じゃないんだから」


「何言うとんの? 幾つになっても、子供は子供よ?」




「ところで……、凌夜君の反応はどやった?」


一頻り私の頭を撫でた後、母さんが尋ねて来た。


「あまり反応はあらへんかったけど、喜んでくれてたみたいやったで?」


私は答えた。


「ああ、予想通りやね! あの子は昔からムッツリやさんやからね……。嬉しくても素直に見せへんのやわ」


母さんは、予想通り、納得、という顔をしていた。


「どうせ、表情を圧し殺して、素っ気なく答えてたんやろな……。笑えるわ、クククッ……!」


母さんは、しばらく、腹を抱えて笑っていた。確かに、滑稽なんやけど、良い気分でも無い……、という微妙な感情だった。


「小明、堪忍やで? 想像したら、笑えて来てしもうたんやわ!」


母さんは、笑いが収まった後、謝って来た。


「構わへんで……」


「まあ、あの子は早々心変わりする様な子やあらへんから心配あらへんけど、しっかりと心と身体と胃袋で掴まえとかなあかんで? 料理はこれからしっかり教えたるからな? 彼奴……、父ちゃんも、胃袋でしっかり掴まえたったんや!」


「そうなん? ありがと、母さん」


まあ……、お父さんは押しに弱そうやけどな……。








「小明ちゃん! 昨日は、無事、凌先輩に渡せた?」


翌日、学校に着くと、文音ちゃんが早速尋ねて来た。


「うん! 文音ちゃんはどやった?」


文音ちゃんに笑顔で答え、文音ちゃんに尋ねた。


「優の奴! 私が居ながら、他の女子にチョコ貰ってて、しかも、自慢気に言うとるもんやで、頭来てしもうてん! 一回絞めたったんやわ!」


文音ちゃんは、思い出すと未だ怒りが込み上げて来るのか、ぷんぷん怒りながら答えた。


「そうなんや……。大変だね……。まあ、これからは無いとええよね……」


私は、苦笑いしながら相槌を打った。


「小明ちゃんも、凌先輩が他の女子にデレッとしたら許せへんやろ?」


「ほやね……。気が済む迄関節極めたるね……」


私は、半笑いで答えた。


「せやろ! せやろ!」


文音ちゃんと私始め女子は、HRで先生が来る迄、盛り上がっていた。男子は引いていたみたいやけど……。


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