第24話

「凌夜! 小明ちゃん、来たで?」


夕食後、部屋で宿題をやっていると、母が呼びに来た。さも、これから楽しいイベントが起きるのを期待している様な、含みのある笑顔を浮かべながら、


「今日はバレンタイン、やもんな?」


と宣った。


「だから……? 何やねん?」


僕は、気にしてない感じで答えた。


「凌夜は、ムッツリやからな……? ホンマは、小明ちゃんから貰えるか否か気にしとるんやろ? 二人共、素直やないんやから、こっちがやきもきするわ!」


「何言うとんねん? 俺はいつも素直や!」


僕は、母の言葉を否定するが、


「そういう事にしといたる。小明ちゃんが待っとるで、さっさと行きや!」




「凌君……、迷惑やなかった?」


小明が、下から見上げる様な感じで、僕の顔を覗き込んで来た。


「ああ……、大丈夫やで?」


僕はしどろもどろになって答えた。


「良かったわぁ……。今日はバレンタインやろ?」


「ほやったな……」


僕は、何でも無い様に答えた。


「凌君は誰かから貰った?」


「貰ってへんで?」


僕の答えに小明は笑顔を浮かべた。


「凌君、今回は手作りチョコ作ったんや。凌君が良かったら受け取って欲しいねん!」


小明は、僕を見つめながら言った。


「それは嬉しいな!」


僕は笑顔で返した。


「初めてやから、うまく出来とるかわからへんけど……」


小明は、ハートに型どられた、ラッピングされたチョコを差し出した。


「ありがとな……」


僕は、大事に受け取った。


「今、食べて貰ってもええかな……?」


小明は上目遣いで言った。


「ええで? じゃあ、早速……」


僕は、ラッピングを丁寧に外し、一口囓った。


「(固めるのが悪いと、ざらざら感が残る言うけど、気になる程やあらへん)うまく出来とるで」


「良かったわぁ……」


僕の答えに、小明は安心して笑顔を浮かべた。


「ホワイトデー、楽しみにしとれや? 倍返しやからな!」


「うん! 楽しみにしとるで?」




「いやぁ、凌夜くん! 面白うて、笑い堪えるの大変やったで? 将来は俳優でも目指しとるんか?」


小明が帰った後、母が絡んで来た。


「うるさいわ……。俺は、俳優なんか向いとらん!」


「わかっとるならええわ」


「俺は、小明だけ居ってもあかん。おじさん、おばさん、師範、優くん、文音ちゃん、他の友達……、が居る、日本が在る、それが大事なんや」


「訳分からんけど、やりたい様にやればええ。後悔の無い様に、ね……」


僕自身でも訳分からん事言ってもたわ。


「ああ! わかっとる」


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