第23話
「さて……、授業は終わったで、帰ろか?」
放課後、HRも終わったので、僕は鞄を持って帰る準備をして優君に話し掛けた。
「ほやな!」
優君は了承の返事をしたので、僕は先に教室の外に出た。今日はバレンタインデーという事もあり、優君に限らず男子はそわそわしていた……。女子の中にも、本命の男子に渡そうと、落ち着かない様子の子もいた。
僕……?端から貰えると思ってないから平常運転だった。僕は、冴えない顔の不良ってカテゴリーになっているらしい。今時、不良がもてはやされる訳でもない。一方、優君は同じ不良でも顔がイケメン……、文音ちゃんっていう彼女が居るのに女子からよく声を掛けられている……。やっぱ人は見た目だよね。
「なあ、凌! 女子から20個貰ったで!」
帰り道、優君は意気揚々と、バレンタインチョコの貰った数を伝えて来た。
「モテモテやな? 因みに、それ、文音ちゃんに言うてもええか? 俺は因みに、無しやで?」
僕は、皮肉を込め、優君に返答した。
「凌、言うたらアカンで?」
優君は、慌てて、止めに入る。
「ん? 何でや? 優君、文音ちゃんという彼女が居りながら、他の女子にバレンタインチョコ貰って、喜んで居ったんやろ?」
僕は、さらに、優君に追い討ちを掛けた。
「んな訳あらへんやん! 文音から貰えへんかったら、意味あらへんわ!」
優君は、必死になって、答える。
「言わへん、言わへん。俺は、そんな告げ口するような事せえへん」
「凌、信じとるで?」
「まあ……、言わへんでもばれる事やろけどな……」
僕は、最後に、ボソッと呟いた。
「優君の事やで、他の女子からもようけ貰っとるやろうけどな……」
放課後、自宅に帰る途中、文音ちゃんが呟いた。
「まあ……、確かに。見てくれはええからね」
私は否定はしない……。
「どうせ、今日はチョコレート貰ってはしゃいどるに決まっとる」
だろうね……。
「それと比較して、凌先輩は、イケメンという訳ではあらへんし、小明ちゃん以外の女子には朴念仁やから、そういう意味では安心やな……」
なんか、褒められている気がせず、モヤモヤとした感情が浮かんで来る。遠回しに冴えない男だと言われているようなものだ。文音ちゃん以外に言われていたら、張り倒していたかもしれない。
「あっ……、ごめん。気分悪くさせてもうた?」
私の気分を察した文音ちゃんが謝って来た。
「大丈夫や。文音ちゃん以外が言うてたら、張り倒しとったわ……。一応、幼馴染やで……」
ついつい、本音が漏れてしもうた。
「相変わらず、素直やないな……。でも、ホンマ、堪忍やで?」
文音ちゃんは何度も謝って来て、私は止める、を繰り返して、家に着いた……。
「凌、今日は道場行かへんのか?」
帰宅して、寛いでいると優君が尋ねて来た。
「今日は、師範の爺さんが寄合いで居らんから休みやで? どうせ行ったところで、チョコレートの匂いで優君、集中出来へんやろ? 優君も帰ったらええんとちゃう? 文音ちゃんがチョコレート持って来るやろうで……」
僕は、答えた。
「ほやな……。他人ん家で貰うのもムードあらへんよな……。また、明日な!」
僕の答えに同意したのか、優君は帰って行った。
「報告待っとるで?」
「お前も、な?」
というやり取りがあった。
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