第8話
学校に小明が復帰したんやけど、特に何か行動する、というか、出来るという事も無く、月日は経過した。周りの人達も、以前のような小明と僕の接触が無くなった事や、数少ない小明と僕との会話で、小明の方に何かあったんや、という事は勘づいていた……。
「凌、小明ちゃんがまた呼び出し受けて告白されたらしいで?」
優君が、報告して来た。以前は、僕が障壁となっていたみたいだけど、僕と小明の関係性が薄れたと見て、積極的に告白されるようになったみたい……。
「そうみたいやな……」
「それでええんか?」
僕の受け答えに、優君が突っ込んで来た。
「小明が決める事やから、僕がどうのこうの言う事は出来へんやろ? 僕は良い気持ちせえへんけど……」
僕は答えた。
「ほやな……。まあ、今んとこ、先輩後輩合わせて50人断ったらしいで?」
「そうなん? まあ、僕は告白せえへんし、されもせえへんやろうけど……。それにしても、毎日のように屋上で告白されたら、僕の安寧の時間無くなってしまうわ……」
「凌……、屋上自体、立ち入り禁止みたいやけどな……」
「ごめんなさい……!」
私は、今日も男子から呼び出し受け、告白受け、断った。
「やっぱり、彼奴なんか……!?」
断った男子達が口々呟く、‘彼奴’って誰なんだろ?私には、ずっと傍に居るという男の子に関する記憶が無い……。思い出そうとすると激しい頭痛がして、そこから進めなくなる……、何で?私は、とても大事な記憶を無くしてしまった気がするけど、それが何なのかを思い出す事も、思い出そうとする事も出来ない。
「ああ、眞白さん、こんにちは! 告白断ってるみたいやけど、好きな人でも居るん?」
地球温暖化対策だとかで作られている、屋上庭園の陰から、お隣さんの黒谷君が出て来た。
「いえ……、居てませんけど? 黒谷君は、ここにいつも居てるの?」
「いつも居てるで? 僕の休憩スポットやで、誰にも教えてへんねん。知っとるんは、優君位やで? まあ、かれこれ、五年位の月日が経っとる……」
黒谷君は、私の質問に笑顔で答えた。五年? 黒谷君って、最近引っ越して来たんと違うん……?
「僕は、小学一年からこの学校に通っとるで? まあ……、僕は目立つ方やないから、覚えが無くてもしゃーないんとちゃう? 僕は、知っとるで? 君は、いつも、幼馴染の男の子とべったりなので有名やったんやけど……、幼馴染の男の子はどうしたんや?」
幼馴染の男の子?そんな子居たっけ?
「無理に思い出さんくてもええんちゃう? 君は、昔の事思い出そうとすると頭が痛くて堪らんのやろ? 過去より……未来やで?(何言っちゃってるんや、僕は?)」
「そうですか、お気遣いありがとう」
「そろそろ行かんと授業始まるで?」
キーン~コーン~カーン~コーン~……、予礼が鳴ったので、急いで教室に戻った。
「僕も戻るとしますかね……何やってんだかな……僕は」
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