第4話

「凌君、神様にお願いして来る!って言うてたな……。私は凌君が傍に居れば、それだけでええんやけど……。凌君は、昔から言い出したらやってしまう質だし、私の事となると、自分を犠牲にしても厭わないから、心配やなあ……」


私は、父さん、母さんが来ているのも気付かず、呟いていた……。


「小明、凌君の事が心配か?」


父さんが話しかけて来た。


「父さん、母さん! 居ったん!?」


私はビックリしてしまった。


「凌君、朝早うから出かけて行ったで! 神様にお願いして来ます!って言うとったな……。何処まで行くんや?聞いたら、出雲迄行きます!ってな……」


「小明はわかってもうてると思うけど、凌君も私達の状態を見てわかってしまったみたいやわ……。大層な荷物背負って行ったわね……。神様へのお供え物です!って言ってたわ……。そんなに、想われている小明は、羨ましいわ……」


「何言うとん! 俺かて、海菜やったら、そんぐらいの事するで!」


脱線して、痴話喧嘩する二人……。




「とにかく、傍に居て、且つ小明に生きていて欲しい思うてるっちゅう事や! どれだけ、神様に供え物してもええっちゅう位な!」


「うん……」


「それだけ、凌夜君が小明の事想うてるっちゅう事忘れたらアカンで? 忘れてまうっちゅう事は、小明の、凌夜君に対する気持ちは、それまでやっちゅう事になるで? たとえ、何があったとしてもやで……?」


「うん!」




彼らを含めて皆、この後に起きる悲劇は予想だにしていなかった。わかっていたとしても、僕がこの選択をしないという事は無かったやろうけど……。


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