第5話

「凌、やっと着いたな……!」


「ほやね、優君!」


僕達は、朝イチの新幹線、ローカル線、路線バスと乗り継いで、ようやく出雲大社に着いた。


「まあ、僕達の目的は出雲大社に参る事ではあるんやけど、神様に小明の病気を治して貰う事をお願いする事や! 見返りを要求されるなら、それを差し出す覚悟や!」


「ほやな。あまり、欲張りな神様やない事願っとるわ……」


僕達は、そんな事を話しながら、鳥居をくぐった。




二礼、二拍手、一礼……、と優君が先に行い、僕の参拝する番となった。


「優君、何が起きても驚いたらアカンで? って、そんな事無いと思うけどね……」


「凌とすれば、何か起こらんと、わざわざ来た意味があらへんやろ?」


「ほやね……。神様が聞いてくれはったらええな……」


僕は、一礼をして、パンッ!パンッ!と二回拍手を行い、お願いをした。




「(御社に祀られし神様、どうか、私、黒谷凌夜、の願いを聞き届けたまえ……)」


僕は、祈願を始めた……


「(汝の願いは何ぞや?)」


誰かわからぬが、声が聞こえた……。


「(私めの幼馴染で居ります、眞白小明の病気を治し仕りたまえ……)」


「(汝……、代償を払う覚悟はあるか?)」


「(はい! 自分の命をも捧げる覚悟にございます!)」


僕は、声に答えた。


「(承知した……。では、その者、眞白小明より、汝に対する、幼少よりの記憶を代償として封じよう……。記憶そのものが無くなるのではなく、その記憶に汝が関わったという事が封じられる……。つまりは、汝と眞白小明の関係性が幼馴染より赤の他人へとリセットされるという事である……。如何に?)」


「(……。承知仕って候う……)」


熟考の末、僕は、小明の命を選択した。小明の命が助かるならば、何だって良かった……。僕自身は、それが如何に重たいものであるか、というのを、後になって思い知らされる訳だが……。


「(汝の願い……、叶えてつかわそう……)」


「(有り難く存じ申し上げます……)」


僕は、本殿を後にした……。




「凌……、凄く顔色悪いで……? 何があったん?」


参拝を終えた僕を見て、優君が尋ねて来た。


「誰かわからへんけど、声が聞こえて、小明の病気を治してくれはる言うた……」


「それなら良かったやん?」


「続きがあんねん……。代償として、小明の僕に対する幼少からの記憶を封じる言いはった……」


「凌は……、小明の命を選んだんやろ?」


「ほや……! 僕が重荷を背負えば済む事や! ただな、おじさん、おばさん、おやじ、お袋には伝えとかなアカンわ……、混乱招くで、な……」


「ほやな……。何事も、万万歳とはいかんもんなんやな……。というか、もう起きてるんとちゃう?」


「ほやね……。とりあえず、帰ろっか……? ここで話しとっても、しゃーないし……」


「ほやな」


僕達が帰った頃には、混乱は既に起きていた……。


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