第2話
その日は……、というか、その二週間程前から、風邪をひいたり、高熱が頻繁に出る様になっていた小明は、これはおかしいという事で、大学病院で精密検査を受ける事になり、学校を休んでいた……。
「小明ちゃん、大丈夫やろか? 心配やなあ……。なぁ……、凌?」
登校して話しかけて来たのは、これまた幼稚園から付き合いのある高城優磨、通称、優君だ。
「ほやなあ……。まあ、早う見つかって治るものなら、早う見つかった方がええんやけど……」
僕は、憂鬱そうに答えた。
「治らんもんやったら、どうする?」
優君が尋ねて来る。
「住吉の神様か、天神様にでも……」
「アカンやろ……。住吉の神様は女性やろ? 女性が船乗ったら、嵐起こしたと謂われる神様や。ほやから、昔は女性は船に乗せんかったらしい。で、天神様は、学問の神様やで?」
僕の答えに優君は、突っ込んで、訂正を入れた。
「そっか……。じゃあ、どの神様にお願いしたらええんやろか?」
「ほやなあ……」
僕の質問に、優君も唸っていた……。
「出雲大社に居るらしいで! キサガイヒメ、ウムギヒメっちゅうらしい! 何でも、オオクニヌシノカミを蘇生させたっちゅう記述があるみたいやし……」
僕達は、早速、図書室で調べ物をしていた。窮鼠藁にもすがる、っていう言葉があるけど……、僕はそうだった、小明がどんな病気か迄は、僕にはわかってなかったけど。でも、風邪みたいな、寝てりゃあ治るっていう、軽いものやない、という事は感じていた。
「そっか……。それで……、出雲大社ってどこにあるん?」
優君に尋ねた。
「島根県やで?」
優君は答えた。
「島根って、あれやろ? 神戸の向こうの県やろ?」
「そっちは鳥取やな……。砂丘が有名な県や……」
僕の答えは見事に外れ、優君に突っ込まれた。
「鳥取よりも向こうなん? 遠いなあ……。ほやけど、小明が治る可能性が有るんやったら、お願いしてみる価値はあるわなあ」
「ほやなあ。やらんくて後悔するより、やってみた方がええやん。治ったら、メッチャええやん! 神様、様々や!」
「ほやな、優君!」
僕達は、かなりポジティブに考え、実行に移した。代償とするものは、僕にとって、命を取られるより価値の有るものだったけれど、小明の命と比べればどうって事無い、と思っていた……、その時は。
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