第3話 私の夢に近づくために。
心春のライブが終わり、私は今日もいつも通りに事務所に向かいレッスンを行っていた。
レッスン室
「はぁ……はぁ……」
(一旦、休憩。)
私は、ダンスレッスンを辞めてベンチに座った。そして、水分補給をした。
ゴクゴク
「はぁ、生き返る〜っ!」
ガチャッ
「あ、紅音。レッスンしてたのか」
「はい!」
「お疲れ様。休憩した後、エントランスに来てくれないか?」
「わかりました。でも、何かあるんですか?」
「紅音に会いたいと言っている方がいるんだ。」
「私に?」
「そういうことだからよろしくな。」
爽真さんは言って、レッスン室を出て行った。
( “私に会いたい人” ……ファンっ!?)
「え、私にも遂にファンができた!?」
私はそう考え、ワクワクな気持ちでレッスン服から私服に着替えて、爽真さんに言われた場所に向かった。
エントランス
「おまたせしました!」
「来たか、紅音。」
「はい!」
爽真さんの後方にいる方が私の前に出てきて、挨拶をした。
「初めまして、瀬戸口さん。私はドラマ監督をしている、“日比野 葵 ”と申します。」
「あ、初めまして……。」
(ドラマ監督?ファンじゃなくて……?)
「どうした、紅音。いつもの元気はどこにいったんだ?」
「レッスンで疲れちゃって元気ないかも、あはは……。」
「瀬戸口さんは、いつもレッスンをしているんですか?」
「はい!レッスンをしていると、夢に近付いてる気がして楽しいんです。」
「夢か……。瀬戸口さんの夢って何か答えてくれるかな?」
「私の夢は、いつかみんなを笑顔にしたいです!」
「 “みんなを笑顔”にか……。うん、いいね!」
「え?」
「瀬戸口さんなら、この役をやり遂げてくれる気がする。」
「 “この役”?」
「今度、僕が監督として務めるドラマがあるんだけど、それに瀬戸口さんに主人公をやって貰いたくて今回来たんだ。」
「ドラマ撮影……。えぇっ!?無理です!私なんてまだまだ芸能界に入って歴が短いのに……。」
「まあ、ゆっくり考えといて欲しい。考える時間は沢山あるから。」
「はい、分かりました。考えときます……。」
私がそう言うと、ドラマ監督さんの葵さんは、事務所を後にした。
そのあと、爽真さんが私に問いかけた。
「紅音、ドラマ撮影を経験しといた方がいいぞ。」
「え、どうしてですか?」
「心春に追いつけるよ。その経験をすることで。」
「でも、怖い。」
私は芸能界に入る前、人見知りで友達もろくに作ったことない人だった。自分に自信がなくて、毎日泣いていた。
そんな私に……演技なんて出来るのか、不安だよ。
「怖いことは、怖いでいいと思う。」
「え……?」
「誰だって、得意なこと、苦手なこと、怖いと感じることは違う。それは別に悪いことではない。」
「うん。分かってます、そのことは。」
「でも、ときには勇気を持って挑戦することが大切だと俺は思うよ。紅音がどう思ってるのかは分からないけど。」
爽真さんは、私に伝えて作業部屋に向かっていった。
(そうだよね。過去を引きずってるなんて、かっこ悪いよね。)
「決めた!私、ドラマ撮影頑張ろう!そうと決まれば、心春に連絡しよう。」
世界一のアイドル ☆ 姫野 桃菜 @saki_1213
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