第6話 そして時は経ち

 潤子は高校の入学式。高校三年生になった弥生と同じ高校に入っていた。

 元気と唯と太一も同じ高校に入学した。中学の時一悶着あったがそれは置いておこう。

 日衣と出会ったあの日から五年、あの日のことを忘れたことはない。

 いつかまた会えると信じて日々過ごしていた。

 潤子は毎日日美神社に御参りに行っていた。

 ご縁の五円玉を放り投げて、また日衣と会えることを願い続けた。

 入学式を終えて校門を出ると、一人の女の子が立っていた。

 その女の子を一目見てわかった。

「ひーちゃん!」

 そこには、成長もしていない日衣が立っていた。日衣は潤子に桜の花の髪飾りを手渡し言った。

「こうこうにゅうがくおめでとう! じゅんちゃん」

 そして、走り去っていく。

「ま、待って! ひーちゃん!」

「またあしたね、じゅんちゃん」

 また明日ね。そう言った日衣は消えた。

「また明日ね……か、ふふふ、あはは!」

 潤子はこんなにも明日が待ち遠しいと思ったことはないと思った。

 きっと楽しい毎日が待っているのだろう。

 受け取った桜の花の髪飾りを髪につけた潤子は、帰路に着く。

 途中で神社に寄った。すると不思議なことが起きていた。

 神社には、日美様の像が立っている。だが今までと違うのは、日衣の子供の頃の像が新しく追加されていたこと。

 潤子は懐かしくなって、目を潤せた。

「ひーちゃん、変わってなかったな」

 先程会った日衣に思いを馳せて、お賽銭を入れ、祈る。

「また明日」

 家に着いて夕食時、日衣に会ったことを話す。

「そっか、ひーちゃんまた来てくれたんだね」

 弥生は話を聞いて嬉しそうにご飯を口に運ぶ。

「勉強教えてもらいたいなぁ」

 日衣が簡単に勉強できたことを思い出し、弥生はそう呟く。受験生になる彼女は、勉強で去年から勉強に必死である。

「勉強かぁ……」

 潤子は少し浮かない顔。お父さんとお母さんは優しく接してくれる。

「大丈夫、頑張ればきっと身につくから」

 そういうお母さんに、潤子は少し不貞腐れながら、頬を膨らます。

「だって、勉強やって何になるかわからないんだもん!」

 お父さんはそれを聞いて笑った。

「明日、日衣様に会えるなら聞いてごらん」

 確かにそうだと思った潤子はますます明日が楽しみになった。色々聞いてみたいと思う潤子は、日衣に何を聞こうか考えを巡らせていた。

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