第4話 潤子と弥生の両親

 翌日、日衣は公園へと降り立った。そこには潤子と弥生がいた。

「おはよう! ひーちゃん」

 潤子が日衣に抱きついた。

「おはよう! じゅんちゃん、やよいちゃん!」

「ひーちゃんのほっぺぷにぷにー」

 三人で笑いあった後、潤子と弥生の家に行く。

 家には二人の両親がいた。二人のお父さんはソファに座ってテレビを見ている。

 お母さんはキッチンで洗い物をしていた。

「あら? 朝ごはん食べて出かけたと思ったらもう帰ってきたの?」

「うん。この子が昨日話してた子。潤子と仲良くなったみたい」

 日衣は弥生の言い方に抗議した。

「やよいちゃんともなかよくなった、ひいだよ!」

 ふふふと弥生は笑いテーブルの席についた。潤子も座り日衣に席に座るよう促す。

 日衣は席につき周りを見る。

 潤子と弥生のお父さんがこちらをちらちら見ていた。

「お母さんにね、神様の子供って話をしたらさ。この島の神様の話になってね」

「ひいのおかあさんの?」

「日美様はね。昔、日衣ちゃんみたいに降りてきたことがあるの」

 潤子と弥生のお母さんが話す。

「数日間ここら辺で修行した後、天の仕事についたんだけど。ママは会ったことないのよねー。話に聞いただけ。パパはこの島出身じゃないしね」

「パパもその話初めて聞いたな。だとすると、潤子と弥生はとてもラッキーなんじゃないか?」

「ぱぱさんとままさんもラッキーだね。ひいとあえて!」

 ママは洗い物を終えると皿にクロワッサンを乗せて日衣に差し出した。

「朝ごはん食べたの? これ食べる?」

「いただきます!」

 クロワッサンを食べると皿を洗い場に持っていく日衣。

「まぁ偉いわね。何処かのパパとはえらい違い」

「ひい、あらえるよ」

「あらあら。でも届かないんじゃ……」

 ふわりと浮いた日衣を見て危うく腰を抜かしかけたママは笑った。

「凄いのねぇ」

 パパも驚いていた。皿を洗い終えた日衣を偉い偉いと撫でるママ。

 その後潤子と弥生の子供部屋で遊ぶことにした。

 潤子は床に転がり込んでお絵描きをしようと言う。

 弥生は机に座り勉強を始めた。

「お姉ちゃん真面目ー! 今は遊びの時間なのに」

「昨日遊んじゃったから今日は勉強もするの」

「ひいこれわかるよ」

「え?!」

「ひいはね、かみさまのこどもだから。むかしからのかみさまのちしきがあるんだよ」

「そうなんだ? こことかどうやって解くの?」

「これはこうしてこうして……こう!」

 日衣が解いてみせると拍手する弥生。

「ひーちゃんすごいな。でも自分でも解かないとね。ひーちゃんは潤子と遊んでていいよ。私は勉強してるから」

「ひーちゃんこのパズルやろうよ!」

 潤子がパズルで遊ぶのを提案する。日衣はむむむと悩んだ。

「これは難しそう」

 潤子は笑って日衣と共にパズルピースを埋め始めた。

 三十分程で完成したパズルの絵をノートに描き写す潤子。

 日衣もノートを借りて描き写した。

「ひーちゃん上手い!」

 まるで写真のようなその絵に感動した潤子は部屋の窓を開けてベランダに出た。

「外の風景描ける?」

「いいよー!」

 模写は完璧だった。だったらと、潤子は一つお願いをした。

「神様の……、ひーちゃんのお母さんの似顔絵描ける?」

「うん、いいよ!」

 日衣が描いた神様の絵は綺麗な女性だった。笑顔が素敵な優しいお母さんという感じ。

「パパとママにも見せていいかな? この絵」

 頷いた日衣と共に弥生とパパとママに絵を見せる。

「ほほう、これが神様か」

 パパが感心する。

「日美様、綺麗な方ね」

 ママは嬉しそうに見ていた。

「というかひーちゃん上手いな。絵」

「えへへ!」


 お昼になってご飯を食べる。ママの料理は絶品だった。

 ご馳走様をしてお昼から何をして遊ぶか考える。結局外に出かけることにした。

 パパとママも陽の光を浴びに出る。弥生も勉強をやめて遊びに出た。

外で遊ぶ三人を見ながらパパとママは微笑んでいた。

 その頃、日衣を見つめる視線があった。

「あれが神様の子供だな。観測してから探してようやく見つけた」

「ですが、我々では怪しまれるのでは?」

「昨日いた大人の男二人いただろう? あいつらに拐わせよう」

 そうして怪しいヤツのうちの一人が日野と高川に声をかけた。

「やぁ、ちょっといいかな?」

「む? なんだい?」

「あなたたち二人、昨日あの小さな子供と遊んでたね?」

「そうだけどそれがなんだい?」

「今から言う場所に、あの小さな子供を指定の時間に連れてきてくれないか? 必要なことなんだ」

「なんだいそんなことか、そういうことは直接……」

「金なら出すよ」

 ポケットから札束を出すのを見た日野は目が変わった。

「こ、こんなにいいのかい?」

「ちょっと日野さん。怪しいよこの人」

「連れてくるだけでいいんだ。ちょっと内緒話をしたくてね」

「いいだろう! 乗ったよ」

「日野さん!」

「怪しいと思うならあなたも来たらいい。ただし、この話はあなた達二人だけの話にしてほしい。あまり拡散されるのは困るんだ」

「わかったよ。ちゃんと見張るからね」

 交渉成立してお金を渡して、離れていく男に高川は怪しげな目を向けた。

「大丈夫だって、高川さん」

 日野は何やら自信ありげに言う。

「あんな奴に、ひーちゃんが負けると思うか?」

「そりゃ確かに」

 こうして日野と高川は日衣のところへ行った。

 遊び疲れた日衣達は合流した日野と高川と共に談笑していた。

 そして日野が切り出した。

「ひーちゃんちょっといいかな?」

「なーにー?」

 暑いと言わんばかりの日衣にこっそり言う。

「今からひーちゃんだけ高川のおじさんと三人で行きたい場所があるんだ」

「ん? いーよー!」

 そうして日野は高川と日衣を連れて移動した。

 潤子と弥生は怪しみながらこっそりあとをつける。

 途中で潤子を元気が見つけて太一、唯も一緒に尾ける。

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