第3話 日野と高川という名のおじさん
神様は笑顔で翌日も日衣を送り出す。
その日は土曜日だった。朝から公園に行ってみると元気達がいた。
「あれ? きょうはがっこうは?」
「今日と明日は休みだよ!」
潤子が笑顔で言う。
「ひーが来ると思って待ってたんだ」
元気は胸を張って言う。日衣は一層笑って喜んだ。
「じゃあいっぱい遊べるね!」
その日は沢山遊べると、公園で遊んでいた。その様子を遠くから見守るおじさん二人は機会を伺っていた。
やがて隠れんぼをしだした五人を見たおじさん二人は、隠れる日衣の後をつけた。
そして隠れている日衣に話しかけた。
「やぁお嬢ちゃん」
「こんにちわ、おじさん。いま、ひいね、かくれんぼしてるの」
「君、魔法使いか何かなのかな?」
「ひい? ひいはね、かみさまのこどもだよ!」
「へぇ! 凄いね。ちょっとおじさんたちに魔法を見せてくれないかな?」
にじり寄ってくるおじさん二人に、ビクリとした日衣は恐怖心で逃げた。
それを慌てて追う二人のおじさん。日衣は走った。
住宅地を走っていると見覚えのある顔の女の子を見つけた日衣は助けを求めた。
「たすけてー!」
「!? どうしたの?」
先日泥棒から財布を取り戻してあげた女の子の胸に飛び込んだ。
女の子は日衣を抱きかかえると後から走ってきたおじさん二人に尋ねた。
「この子に何か用ですか?」
「いや、あのね。この子は神様の子供? でね」
「何をわけわかんないこと言ってるんですか! 日野のおじさんと高川のおじさん!」
どうやら見知った仲らしかった。日衣は女の子に言った。
「ひいがかみさまのこどもなのわ、ほんとうだよ」
「そっかそっか。偉いね。さぁ、おじさん達はどこかへ行って!」
「いや、本当に……」
「ひーちゃんだっけ? 魔法を見せてくれないかな」
迫る日野と高川に、さがる女の子。日衣は怒った。
「もーーー! こらーーーーーー!」
日衣が叫ぶと日野と高川のおじさん二人は子供の姿になった。服も体に合わせて小さくなる。
「え? あれ?! うわあああ!」
二人は驚いて叫んだ。女の子は開いた口が塞がらない。
「え? 何これ? え?」
「たすけてくれてありがとう。おじさんたちは、ひがしずんだらもとにもどるよ。じゃあね」
トンと離れた日衣を女の子は慌てて呼び止める。
「ま、待って! あなた本当に神様の子供なの?」
「そうだよー」
子供になったおじさん二人もアタフタして日衣を止める。
「ご、ごめんよ! 謝るから戻してくれ!」
「た、頼むよ!」
日衣は、うーんと困った。
「もどすのはむずかしいの。まほうがとけるのをまつしかないよ」
そうこうしてると鬼の潤子が日衣を見つけた。
「ひーちゃん、みっけ! って、お姉ちゃん? と、誰? その二人」
「潤子! この子知ってるの?」
「知ってるよ。ひーちゃんでしょ。凄いんだよ! 神様の子供なの。空飛んだりするんだから」
「驚きすぎて何が何だかわからなくなりそう。とにかく日野さんと高川さんは私といましょう」
「あなた、じゅんちゃんのおねえちゃん?」
「そうよ。私は時田弥生。潤子の姉だよ」
「よろしくね!やよいちゃん」
「ええ、よろしく。ひーちゃん」
「ねぇ、ひのおじさんと、たかがわおじさんと、やよいちゃんもあそぼう?」
「え? この子達、日野おじさんと高川おじさんなの?」
潤子は子供になった日野と高川を見て驚いた。
「ワシらだって好きでこんな風になったわけじゃない!」
「日が沈むまでどうせ暇だから遊ぶか……?」
「ひーちゃんの仕業かー。お姉ちゃんはどうする?」
「日野さんと高川さんが心配だから一緒にいるよ。ひーちゃん、一緒に遊ぼう」
「やったー!」
こうして元気達のところへ戻った。元気達は流石にびっくりしていた。
「日野おじさんと高川おじさんが子供になってるって?」
「ひーちゃんを追いかけ回したバチが当たったみたい」
弥生は元気達に事の次第を説明した。
「ひーは怒らせられないな」
元気は身震いしたが、唯は少し笑って、太一は爆笑した。
「笑い事じゃないんだよ!」
「とにかく遊ぼう!日が暮れるまで」
それを聞いた元気はコクリと頷き、まずは何をするか考える。
「何をするか決まってないなら、缶蹴りなんてどうだろう?」
高川のおじさんが提案する。それに皆顔を見合せた。
「缶蹴り?」
「ひい、しってるよ!」
空き缶を用意する。鬼をジャンケンで決めて、空き缶を置く。空き缶の周りに円を描くとわかりやすい。一人が思いっきり缶を蹴飛ばして隠れる。鬼は缶を元に戻し隠れてる人を探しに行く。見つけたら大きな声で名前を呼び缶の元へ戻り缶を踏むと捕まえた事になる。残りの人は鬼がいない間に缶を蹴ることが出来る。そうすると捕まった人も逃げることが出来て最初からやり直しになる。
「へぇ、私も知らなかったな」
弥生も知らない事を何故日衣が知ってるのかはともかく、これでルール説明は終わった。
ジャンケンで日野さんが鬼になったので高川さんが思いっきり缶を蹴っ飛ばす。その間に隠れる皆。
日野さんはあまり乗り気ではなかったが、やり始めると一気に見つけていった。
日衣は簡単に見つかってしまう。
「ひのおじさんすごいなー」
「ふふふ、若返ったせいか体が軽いよ」
やがて残りは元気と高川だけになる。弥生も蹴りに行こうとしたが見つかってしまったのだ。
「たいちょうがんばれー!」
日衣は叫んだ。どこにいるかも分からない元気にエールを送った。
「今だ!」
元気は走った。それに気づいた日野も走る。そして、
「元気君みーっけ!」
日野に缶を踏まれてしまう。
「あーっ! くそう!」
残りは高川だけ。高川は機会を伺っていた。そして日野が油断した隙に、
「おりゃああああ!」
「うわ! しまった!」
缶を蹴飛ばす高川。日野は慌てて缶を取りに行く。
「さぁ皆仕切り直しだ!」
「おおお!」
「たかがわさんかっこいー!」
「ひーちゃん、隠れるよ!」
こうして日が暮れるまで缶蹴りして遊んだ。
ようやく暗くなってくる中、汗だくになった日野と高川は礼を言った。
「久しぶりに楽しかったよ。ずっと子供でいたいくらいだ」
「ワシらとも、また遊ぼうな」
「ひいもたのしかった! やよいちゃんはたのしかった?」
ふふふ、と笑った弥生は頷いた。
すると、潤子は何かを閃いたようだった。
「ひーちゃん明日も来る?」
「うん! くる!」
「じゃあさ! 明日は家においでよ!」
弥生はその提案に賛同した。
「わー! いくいく!」
「じゃあこの公園待ち合わせね!」
「うん! またあした!」
こうして日は沈み日衣は帰って行った。
日野と高川は元に戻る。少し感傷に浸っていた。
「子供ってのはいいな。高川さん」
「そうだねー。昔を思い出したよ。日野さん」
二人のおじさんも子供達も家に帰った。
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