第30話 レンタルフット始めます(4)

 俺の怪我は、主に下半身がひどかったので、俺とレタリーは、歩行サポート用のプログラミングを組むことにした。


 既に世の中には歩行サポート器具は存在していたが、そのほとんどが、介護、介助のために作られているようで、歩行サポート機能としては十分だったのだが、俺はさらに、軽量化と、手軽さを求めた。


 人の体は、極微弱な電気信号を受け取ることによって動かすことができる。ならば、仰々しい器具などなくとも、そのプログラミング及び、電気信号の発信をレタリーに任せれば良いのではないか。


 俺の意を組んだレタリーは、歩行サポートシステムが付与されるよう、自身でプログラミングを組みなおし、超小型電極シートと皮膚が左右1カ所ずつ脚部に接触していれば、サポートが可能な形を作り出した。


 そして俺は、両太ももに電極シートを貼り、何度となく試し歩行を行った。初めのうちは、電気信号の流れが悪く、ガクンガクンと不自然な動きになっていたが、レタリーが学習し、プログラミングの再編を行うことで、スムーズな歩行ができるようになった。


 そんな俺の発明を、主治医は最初、奇異な目で見ていたが、徐々に形になってくると、手のひらを返したように、馴れ馴れしく話しかけてくるようになった。どうやら、発明の進捗を確認したがっていたようだ。俺の歩行がスムーズになると、主治医は、医療開発メーカーを連れてきた。


 メーカーによれば、歩行サポートシステムは、今はまだ、技術的に困難な部分が多く、是非とも俺のサポートシステムを使わせてほしいとのことだった。俺の発明が世に出れば、医療の分野が飛躍的に進歩するらしい。


 正直、俺は面食らった。だって俺は、いつだって、周りの人から奇異の目でみられていたのだから。この俺が、世の中の役に立てるなど考えもしなかった。


 人に認められる。人に求められる。それが嬉しくて、俺は、一も二もなく了承の返事をしようとした。しかし、そこで、レタリーに止められた。


 俺の歩行サポートシステムは、なのだ。レタリーの制御なしには、動かないし、当時のレタリーには、歩行サポート1つが限界とのことだった。


 それに今のままでは、技術を丸ごとメーカーに持っていかれ兼ねない。まずは、俺自身が特許を取得すべきだろう。必要な技術であれば、特許ライセンスという形であっても、メーカー側は技術提供を願い出るはずだ。大金持ちになるチャンスをみすみす逃すのか、と。

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