第15話 復活ラヂオアプリ(5)

 なかなか目当ての情報は見つからない。それなのに、鬱陶しい事に「ALISアリス」と言う単語は、求めてもいないのに、次々にオレの視界に飛び込んでくる。


 意識的にその単語から目を逸らす。けれども、一旦視界に焼き付いたその単語は、次々とオレの中から、消化し切れない、言葉では表しきれない、モヤモヤとした感情を引き摺り出した。こうなる事が分かっていたから、SNSなどには触れないようにしていたのに。


 いつだって、心の内から発生したモヤモヤとした感情は、オレ自身を縛り付け、身動きを取れなくする。頭の中を埋め尽くし、掻き乱し、オレを混乱に陥れる。だからそうなる前に、オレは心に蓋をする。今は、必死に『復活ラヂオ』についての情報だけを探した。


 ようやく見つけたのは、『復活ラヂオ』の事を書いている、どこかの誰かのブログだった。


 その人はどうやら友人から『復活ラヂオ』アプリのことを聞いたようだ。しかし、どんなに探してもそんなアプリは見つけられず、友人と口論の末、険悪な仲になってしまったらしい。友人が嘘をつくとは思えないが、どうしても、当該アプリを見つけられない。友人と仲直りするためにも、このアプリのことについて、何か知っている人がいれば、教えてほしいと結んでいた。


 ブログを読み終わったオレは、なんだかおかしな話だなと眉根を寄せた。確かにオレのスマートフォンには、当該アプリが入っている。アプリは存在している。しかも、そのラジオを先ほどまで聞いていたのだ。それなのに、この人はと言う。そんな事あるだろうか。最近は、どんな情報だって、簡単に手に入るのに。そう思いながら、ハタと気がついた。


 オレだって、やっとのことで、このブログに辿り着いたのだ。今のところ、このブログ意外に情報はない。簡単に得られる情報ばかりではないのかもしれない。


 急いで、アプリのインストール画面を開いた。検索バーに、「復活ラヂオ」と入力して検索をかける。しばらく待って表示されたのは、全く関係のないマッチングアプリ、1つだけだった。再度検索をかける。次は「復活 ラヂオ」と単語を区切って検索してみた。しかし、結果は同じであった。


 ブログ主の言うように、『復活ラヂオ』のアプリに辿り着けない。オレは、一体どうやってこのアプリを入手したんだ?


 『復活ラヂオ』アプリをタップしてみる。しかし、どれだけ待っても、そこから音は溢れてこなかった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る