第16話 復活ラヂオアプリ(6)
それから季節が1つ分過ぎた。その間、オレは毎日のように、『復活ラヂオ』をタップしていた。
晴れている日は、キャップとスマートフォン、それからイヤホンをポケットに忍ばせて、あの土手で、くだらない『復活ラヂオ』を聴きながら、ゆったりとした時間を過ごすことが習慣になった。お陰で、酒浸りの日々からは抜け出し、頭もクリアに働くようになった。
少しは、自分自身のことも考えられるようになったが、それでもまだ、心のモヤをどう表したら良いのか分からず、見て見ぬふりを続けている。
そんな時に、『復活ラヂオ』は役に立った。相変わらずくだらない内容を垂れ流しているので、何も考えずに聴いていられた。
ただ、このアプリについては、依然詳細は分からないし、使えたり使えなかったりと謎が多いのだが、気分屋放送なのだろうと理解している。
今日も、土手にゴロリと寝ころぶ。もうずいぶんと鋭くなった日差しを遮るようにキャップで顔を隠し、イヤホンを両耳に入れる。『復活ラヂオ』をタップすれば、すぐに機械的な声が流れ始めた。どうやら今日のご機嫌はいいらしい。オレは、既に馴染みになったその声に耳を傾ける。
“次のお便りは、こちらです。
はい、こんにちは。
早速ですが、私の復活させたい事を聞いてください。私にはとても仲良しの友達がいます。しかし先日、あることがきっかけで喧嘩をしてしまいました。彼女は私のことを、嘘つきだと思っているのか、口もきいてくれません。原因は、私がこのアプリを彼女に薦めたことです。彼女は、どうしてもアプリを見つけることができず、私が嘘をついていると思ったようなのです。どんなに嘘じゃないと言っても、信じてもらえず、険悪な状態です。私は、このまま喧嘩別れになってしまうのは絶対に嫌です。なんとか、私たちの友情を復活させてください。それから、なぜ、私は『復活ラヂオ』が聴けて、彼女には聴けないのか。その理由も教えてください。
という事です。コレは、切実なお悩みですね。当方もどうやら関わっている様子。まず、お悩みの復活の件ですが、大丈夫です。もう一度お友達に話しかけてみましょう。それで、万事解決します。それから、お尋ねの件ですが、こちらは、企業秘密なので詳しくは言えないのですが、まぁ、簡単に言うと、必要な人にだけ、お届けする形をとっています。とだけ、お伝えしておきましょう。
では、次のお便りです……”
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