第13話
麗羽から色々とディスられたり褒められたりしたものの、今日は彼女の家に立ち寄らずに帰宅した。
そもそも、ここ最近が連日立ち寄ることになったのが珍しかっただけ。
それなりに麗羽から、こちらを誘うようなアプローチはもちろんよくされること。
しかし、彼女が言っていたように自分から本当に引き寄せて行き着くところまで……というのはそこまで頻繁なわけではない。
ただ、その行き着いた時は悟もお盛んな男子高校生なので、自我が完全崩壊するわけなのだが。
「ただいま」
「おっかぁ。今日は早いんだねー」
帰宅すると、何とも緩い妹の返事が飛んできた。
妹は家庭科クラブという、非常に平和な放課後ライフを送っている。
優しい家庭科の先生の元で、週の二日ほど料理をしたり裁縫をしたりとかなりのんびりと過ごしている。
そのため、クラブ活動がない日は帰宅部の悟よりも早く帰ってきている。
「まぁそんな毎日遅くはならないな」
「つっまんな、遅い時は色々してんだろうなって考えてて楽しいのに」
「……兄が彼女とイチャついてるところ想像して楽しくなる妹とか居るんだ」
「は? そんなわけないじゃん。麗羽姉ちゃんのことだけを想像して、楽しくなるに決まってんじゃん。どんな色っぽい誘いとか可愛い反応をするんだろうなって……!間違っても兄さんのこと何か想像もしたくないんですけど、女の子の前でイキったり興奮してる兄とかムリムリ」
「至極真っ当な意見が聞けて、苛立ちよりもホッとしたのが勝つのがなんとも言えんところだが…。って、やっぱり麗羽なのか」
「クールで色っぽいところと優しいところが合わさってるって、最強じゃない?」
「まぁ言わんとすることは分かるぞ」
当然だが、麗羽のような女子は普通は居ない。
「はぁ、いいなぁ……。そんな麗羽姉ちゃんに思いっきりキスマーク付けたんでしょ?」
「そうそう、あいつに付けろって言われて……。って、何でその事知ってるんだ!?」
あまりにも自然な流れすぎて、そのまま話を進めそうになった。
なぜ、妹に情報流出しているのか。
慌てて話を戻して妹に尋ねてみたのもも、正直答えは出ている。
「何でって……。麗羽姉ちゃんから教えてもらったからだよ」
「あいつなぁ……。中学生の女子に何を教えているんだ……!」
やはり、麗羽ー妹ホットラインから情報が流出したから把握されているようだ。
「ほんとやってることが少女マンガの世界なんだよねぇ……。出会い方、付き合うきっかけ、今の二人のイチャイチャ具合といい……」
「え、今の少女マンガってそんなにいかがわしいシーンあんの?」
「今とかどうとか、昔からがっつりあるよ」
「まじかよ、女の子ってませてるなぁ……。って関心してる場合じゃねぇんだわ」
普通に、過程はどうあれ彼女にした恥ずかしさ極まりない行為を、妹に知られているという事実。
「きっついわ、妹にこんな事把握されんの」
「今更でしょ、どうせやるとこまでやってるわけでしょ?」
「こっっっら!」
「な~んでそれだけのことしといて、まだはずかしがってんのやら……。まぁこういう純粋さ、麗羽姉ちゃんいつも褒めるもんなぁ」
「お前らって、どこまで話してんの?」
「どこまでって言われても、それなりにだね。今回みたいなことはサラッと教えてくれるし、もっと危ない内容なら秘密にされちゃうし」
「こいつに対するあいつの『どこまでなら話で良いライン』の基準がよく分からんわ……」
少なくとも、こんなことをすぐに言う時点で妹に対して恥じらいとかは一切無いらしい。
何となくだが、問い詰めたら「世の中のR-18指定になりそうなところだけは言わないでおいたけど?」とか言いそうだ。
いや、多分間違いないだろう。
「で、みんなにバレたわけ?」
「バレるに決まってるだろ。それで、あいつが『彼氏に付けられた』的なニュアンスのこと言って周りは大騒ぎよ」
「当然だけど、相手が誰かって探り入るわけでしょ?」
「そりゃあな。だけどあいつ、『私に見合う男がここにいると思う?』って言って、うまく躱してた」
「な、なるほど……!そう言うとあたかも居ないみたいに聞こえるもんね!」
「でも、居ないとは一言も言ってないみたいなやつだな」
「すごい、流石麗羽姉ちゃんだ! ちゃんと臆病な兄さんのことを気を遣ってそんな言い回ししたんだろうしね!」
やり取りしているからなのだろうが、何故かこの妹も悟と同じような解釈をしている。
この解釈に至るまでに、色んな表向きのやり取りと裏で妹にはとても言えないような事をしてきたからこそ、分かり合っていると思うのだが……。
(やばい、実はもっとこんな事も知ってます的なのありそうだな……)
「生涯大切にする」などと、言っても男側が言いそうな発言を言い切っていた以上、もはや「今後ずっと関わる人なのだから、隠す必要もない」とか思ってそうでもある。
ちょっと麗羽の言動に惹かれたり、はたまた引かされたり。
どちらに転がしたいのか、悟には分からない。
これだけのことをしても、「自分の事は愛しいままだろう?」と思わせたいのか。
これまでの彼女を見てきているので、何かしらの意図があるのだろうと考えてしまうが、今の悟には到底答えが出せそうにもなかった。
ただ、彼女に振り回される。
そんな毎日の当たり前の日常が、ちょっとばかしいつもより過激だった日のことである。
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