第10話 ワルいひとたち
「実は、領都とシャンウルの街を繋ぐ街道の整備を検討しておりまして、皆様にご意見を伺いたいと思いました。」
私がその提案を述べると、執行官長であるダガンが興味深げに反応する。
「ほう、街道の整備をお考えですか。それは我々としても願ってもないことですが、何ぶん予算の問題がございますゆえ」
ダガンの声には重みが感じられる。
私は頷きながら、ダガンの言葉に応じ
「確かに、街道整備には予算の面での課題があることは理解しております。ただ、この計画にはエディンガー家からの支援があり、その予算の面での課題に関しては心配いたしません」
ダガンがうなずくと、スレイン副執行官も口を開く。
「街道の整備は、シャンウルの発展において非常に重要な要素です。これによって交通が円滑になり、市場の活性化や外部からの来訪者増加が期待されます」
その後、ダガン執行官長が続ける。
「予算の確保は重要ですが、他にも整備に伴う様々な課題が存在します。例えば、土地の利用や盗賊などの課題もありますな」
私はダガンの指摘に頷きながら、計画の詳細と課題を説明していく。
ここシャンウルの街にはまだ問題がある。
「ただし、私たちの計画には他にも課題があります。実は、シャンウルの街には裏社会と繋がる者たちが存在しており、それは私たちエディンガー家だけでなく、他の組織も関与している可能性があります。治安の確保と共に、この問題にも取り組んでいく必要があると考えております」
私は問題の重要性を三人の顔を見ながらあえて指摘する。
「裏社会の存在は重要な問題ですな。街道整備を進める上で、治安を確保することは不可欠です。シャンウルの街の発展に影響を及ぼす可能性がある以上、真摯に取り組んでいかなければなりませんな」
ダガン執行官長が顔を引き締めながら言う。
「確かに、治安の維持は我々の役割です。裏社会との関わりを断ち切り、市民たちが安心して生活できる環境を作り上げることが大切です。」
ジエン衛兵隊長が口を開く。
私は頷きながら、衛兵隊長の言葉に賛同し
「その通りです。私たちの協力によって、街道整備と治安の向上、そして裏社会の排除に取り組むことで、シャンウルの街が一層の発展を遂げることを願っております」
とほほ笑んだ。
裏社会と繋がっているのが自分たちだけだと思ったら大間違いだよ、執政官長。
私の笑顔に何かを感じたのか、ダガンさんとスレインさんの表情が変わった。
そんな二人の様子に気づいていないフリをして私は続ける。
「もう一度確認しますわね。街道整備の資金についてはエディンガー家からの援助があると思ってください。それと、街道整備の際にどうしても盗賊などの被害に遭う危険性が出てきますので対応を行っていく。あ、そうですわ、もう一つ大事なことが。街道の整備事業には孤児院の子どもたちも働いてもらいましょう。いろいろな仕事がありますから」
そこまで言うとダガンさんは目を見開き、口元を押さえた。隣に座っているスレインさんは青ざめた顔で私を見ている。
領主から孤児院に寄付されている金額と実際に孤児院が受け取っている金額があっていない。ここまでならよくある横領事件なんだけど、シャンウルの街はこれだけでは終わらないのよね。
私たちの調べではこれまで街から納められている税の額も合っていない。その上、この町から領への物資を運ぶ際の盗賊被害が多い。
トルクァ様もおかしいと思ってたようだけど証拠がない。
それも含めて私たちが乗り込んだってわけ。
「あ、貴女は何者なんです?」
絞り出したような声でスレインさんが問いかける。
「なんのことでしょう? さあ、私のことはどうぞお気になさらず。それでいかがいたしますか? 街道整備」
私がそう言って微笑みかけると、二人は苦虫を噛み潰したかのような顔をしてお互いの顔を見たあと、諦めたようにため息をついた。
その後、ダガンさんとスレインさんを交えて街道整備について話し合いが行われた。
さあ、ここからが勝負よ。
執政長官のダガンがどう動くか、そして、それに加担しているであろう人たちがどう動くのか楽しみね。
公爵家七女の嫁入り後 ~夢の中の出会いから~ UD @UdAsato
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
フォローしてこの作品の続きを読もう
ユーザー登録すれば作品や作者をフォローして、更新や新作情報を受け取れます。公爵家七女の嫁入り後 ~夢の中の出会いから~の最新話を見逃さないよう今すぐカクヨムにユーザー登録しましょう。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます