第8話 南の森探索

「お嬢、そろそろいいか?」

「ええ、大丈夫よ」

「それではネーテア様、行きましょうか」

「ええ、よろしくお願いします」

 仲間たちとともに森の中を歩き出す。


 しばらく森を歩いていると、 ガサガサと草むらが揺れ、私たちは咄嵯に武器を構える。

 すると、 バサッっと大きな音を立てて、何かが姿を現した。


 その正体は、一頭の熊の魔獣。


 しかもかなり大きい。

 どうしようと思った瞬間、ロイとアロンが前に躍り出た。


 ロイは巨大な戦斧を軽々と振り回し、アロンは手に持つ槍を巧みに操って魔獣を翻弄する。二人の攻撃で傷つき、動きが鈍くなったところをロイがとどめを刺した。


「やるじゃねえか」

 と褒め、ロイは照れくさそうに頭を掻く。

 二人の息のあった連携であっさりと決着がついた。


 けれど、これはほんの序の口に過ぎない。

 なぜなら、目の前にはまだまだたくさんの生き物たちがいるのだから。


「さあ、どんどん行くわよ」

 こうして、私たちはこの広大な森を隅々まで見て回るのだった。

 それから数日、私たちは森の中を探索し、様々なものを見つけた。

 珍しい薬草や、果物、キノコ類など。

 さらに、狩りをすれば新鮮な肉を手に入れられる。


 それが分かっただけでも、今回の南の森の探索の成果はあったと言える。私たちは実り豊かな資源を見つけ、新たなる生態系に触れることができた。そして、いよいよ森から出る時が来た。


 仲間のみんなも、それぞれが得意な分野で成果を上げたようだった。アンディの知識が新しい発見をもたらし、ユナの狩猟技術が私たちの食糧を確保し、ロイとアロンの力強い戦闘スキルが私たちを守ってくれた。



 領主館に戻り義父様に報告を行う。一通りトルクァ様の報告を聞き終えた後、

「ネーテア、南の森はどうだった?」

 義父様が問いかけてきた。


「義父様。とても楽しかったですよ。貴重な体験ができました」

「ほう、それはなによりじゃな」

 とうなずく。


「それでトルクァ様とも相談したのですが、森を開拓するにあたって一つ提案があるのですけど?」

「ん? なんだ?」

「南の森を出た先に、エディンガー領で二番目に大きな街があるのですけど」

「ああ、シャンウルの街か、それが?」

「ええ。そのシャンウルの街と南の森を繋ぐ街道の整備をお願いしたいのです」

「ほう、それはまた」

 義父様は顎髭を摩りながら何か思案しているようだ。



「まず街道の整備は交易のためには必須です。そして街道の整備事業自体が経済を回し、雇用を生み出します。次に街道が整備されれば、より多くの商人が訪れるようになり、結果的に街の収益が増えます。最後に、街道を整備することで魔物の襲撃を防ぐことができます。そしてなによりもシャンウルの街の問題を解決できます」

 私の説明を聞き終えた義父様は大きく目を見開く。

 そしてすぐに笑顔になった。

 きっと私が何を考えているのか理解してくれたのだろう。


「ネーテアの提案は確かに考えるべきものだな。交易や経済の面でも大いにメリットがありそうだ。そして、街道の整備が魔物の襲撃を防ぐ手段としても機能することは重要だ」

 と義父様は納得した様子で話し、私の提案に共感を示し、それに、シャンウルの街の問題も解決できるというのは、この地域にとっても大きな意味を持つ。街道の整備を進めるため、私の支援を惜しまない。トルクァも協力して計画を進めていくのは賢明だろう、と義父様はトルクァ様に対しても意思を示しました。


 私は安堵の表情で頷きました。

「ありがとうございます、義父様。この街道の整備が、エディンガー領の未来に良い影響をもたらすことを確信しています。仲間たちと力を合わせて素晴らしい成果を上げたいと思っています。」


「しかし、トルクァはもうすぐ王都へ就かねばならんはずだが」

 と義父様が指摘しました。


 トルクァ様は頷きながら答えました。

「ええ、ですのでこの件はネーテアに任せることになります。私が王都での仕事に専念する間、ネーテアがこの計画を進めていきます。父様のサポートもありますし、仲間たちと力を合わせて領内の発展に貢献してくれると考えています。」


「ありがとうございます、義父様、トルクァ様。私たちはお二人の期待に応えるため、全力で取り組んでまいります。どうぞ王都での仕事にもお気をつけてください」


「皆疲れたろう。今日はゆっくりするといい。また晩の食事の時に」

 義父様はそういうと、私たちを解放してくれた。


 私たちは自室に戻ると疲れていたせいかすぐに眠気が襲ってきて、そのまま静かな夢の世界へと沈んでいった。


 今日の出来事や未来への展望が、ゆっくりと意識の中に溶け込んでいく中で、私は心地よい眠りに包まれた。

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