第5話 仮病で欠勤
それよりも会社に遅刻する……一瞬頭を過ったが、今日はとても行く気になれない。退職まで一ヶ月残っている。解雇を言い渡れても退職まで務める義務がある。無断欠勤や自ら退職すれば退職金が大きく変わって来る。しかし今日だけは行く気になれない。
会社には持っている携帯電話から仮病を使って休むと報告するつもりだ。
そう言えば昨夜、携帯電話の電源を切っていた事に気づいた。電源を入れると留守電とメールがいっぱい入っていた。
殆どが家族からだ。家族にも誰にも何も言われたくないそんな気持ちで電源を切ったのだ。家族にはリストラされたなんてとても言えない。
言ったら最後、みんな先行きが心配になり、高校も大学も辞めると言い出すだろう。そうこうしている間に九時少し前になった。まずは会社に仮病の電話する事にした。会社に電話で直属の上司である総務課の課長に電話した。
「お~そうか。まぁ無理しないでゆっくり休んでくれ。こっちは心配ないから」
あっさりしたものだ。たぶん課長の耳に入っているのだろう。心配ないだって……真田には必要ならないから来なくても良いと聞こえた。
次に心配する妻に電話しないと会社に電話を入れるに違いない。
その前に留守電を聞いた。殆どが妻であとは息子と娘からだった。
真田は良い家族に恵まれたようだ。だがその優しさが今は辛い。
つづく
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます